TOP サイクリングコース 小田原~箱根を巡り、富士山の絶景と地元グルメを堪能 お腹いっぱい“ご褒美”ヒルクライム

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小田原~箱根を巡り、富士山の絶景と地元グルメを堪能 お腹いっぱい“ご褒美”ヒルクライム

 サイクリストの中でも苦手という人が多いヒルクライム。獲得標高や斜度なんて言葉はできることなら避けたいもの。しかし上らなければ見られない景色もあり、ときには上る辛さを吹き飛ばすほどの絶景が現れることもある。その1つが富士山を眺める箱根周辺ライド。山深くアップダウンの多いエリアだが、見晴しの良い峠からは天気が良ければ大迫力の富士山パノラマを間近に望むことができる。しかも自分の脚で上れば得られる感動は何倍にも増大。そんな峠が苦手な人も「トライする価値あり!」の絶景ヒルクライムコースを紹介する。
上り終えた先にある足柄峠城址公園から望む富士山
オススメポイント 峠を上って富士山の絶景を堪能。ご褒美に小田原名物のかまぼこと海鮮、スイーツが食べられる
レベル ★★★(上級者向け)
距離 74.2km
獲得標高 1,492m
始発・終着地 始発 / 終着地・JR小田原駅
立ち寄りグルメ 箱根ベーカリー(箱根山龍神あんぱん)、鈴廣 御殿場店(かまぼこのたこ焼き、おっととライスほか)、ナラヤカフェ(アイスクリーム)、めし家 やまや(アジづくし定食)
立ち寄りスポット 足柄峠城址公園小田原城

荷物は駅に預けて身軽に

ライドの発着地点はJR小田原駅。東京都心から東海道線で1時間強、新幹線を使えば30分程度で到着できるアクセスの良さだ。発着駅が同じだと、ロッカーを利用して荷物を預けられる利点がある。ヒルクライムを少しでもらくにするコツは、荷物を減らすこと。輪行袋など不要な荷物は駅のロッカーへ預け、身軽になってヒルクライムに臨もう。
JR小田原駅西口に立つ北条早雲公像と同じポーズで「富士山の絶景を見るぞー!」
出発前におすすめしたいのが、小田原駅西口付近にある「箱根ベーカリー」での補給食の調達。箱根神社で噴出する名水「龍神水」と「酒種」を使用してつくられる名物「箱根山 龍神あんぱん」は味もさることながら、バックポケットにすっぽり入るサイズで携帯にぴったり。バターの香りが口いっぱいに広がる人気のクロワッサンはバックポケットには入れられないので、それは自分のおなかに入れていこう。
JR小田原駅西口にある箱根ベーカリーで名物「箱根山龍神あんぱん」をゲット
今回のコースプロファイルは、足柄峠と長尾峠という2つのピークを経て箱根経由で小田原駅に戻ってくる走行距離74km、獲得標高1525m。ちょっぴり健脚向けのコースだが、上り慣れていないという人でも心配は無用。走るスピードは気にせず、自分のペースで走ることが大切だ。ウォームアップができていない間は少し息が上がるが、体が慣れてくれば次第に上りのリズムがつかめてくる。脚力に自信のない人はあらかじめギアを軽くし、なるべく脚を“削らない”ようにペダルをクルクル回す感じで漕ぎ進めよう。
小田原駅から10kmほど走っていよいよ上りに突入

足柄峠は上る価値あり

「金太郎のふるさと」としても知られる、ここ南足柄には金太郎伝説が数多く残っている。とくにコース上にある足柄山中の地蔵堂地区には数多くの名所があり、こうした名所で足を止め、休憩を挟みつつ進むのも疲れを軽減する方法だ。
きんたろう橋を渡り、地蔵堂トンネルへと向かう
金太郎伝説が数多く残る南足柄市
上るにつれて深さを増す緑が気持ち良い
頂上に近づくほど斜度がきつく…
上りはじめから11km、足柄峠のピークまで標高700mを上る。緩急を繰り返してきた坂も、ピークに近づくにつれうねうねと九十九折れが始まり、斜度も増していく。最後にはついに14%と書かれた標識が登場。いわゆる“激坂”と呼ばれるきつい斜面だが、その数字に恐れる必要はない。無理をせず自転車を降りて歩くもよし、どこまで上り続けられるか挑戦してみるもよし。人によってその攻略法はさまざまだ。
最後のひとふんばり!あと少しで富士山が見える!
上り切ったところで足柄峠に到着。近くに足柄万葉公園があるが、絶景ポイントはもう少し先にある足柄峠城址公園。峠を制覇した“達成感”を爆発させたいところだが、もう少し我慢して漕ぎ進もう。
上り切った先にある足柄山聖天堂の金太郎像。かわいいというか、妙にリアル
足柄峠城址公園の入り口。近くにはバイクラックが設置されている
展望台のように高台に作られた公園に足を踏み入れると、ついに富士山とご対面。想像以上の近さに、初めて訪れた人は歓声をあげずにはいられない絶景だ。達成感もようやくここで解禁。バックポケットに入れてきたあんぱんとボトルをもって、しばし疲れを癒そう。標高が上がると風は予想以上に冷たく、汗で体が冷えるので、景色をゆっくり堪能するためにもウインドブレーカーは忘れずに持参しよう。
足柄峠城址公園で富士山の絶景と美味しいあんぱんのご褒美を
景色を楽しんだら今度は御殿場に向かってダウンヒル。下山する道は、ショートカットできる林道と少し遠回りになる「金太郎ふじみライン」を通る2パターンがある。林道といっても路面が整備されており、車の通行も少ないのでビギナーでも安心して走れる道だが、“富士山を望むライド”と銘打つからにはぜひ、視界いっぱいに富士山の大パノラマが広がる「金太郎ふじみライン」を下ってみてほしい。
下りの足柄街道からも絶景。これぞ“富士山を見るライド”

“楽しく絶景”な長尾峠

御殿場に下ったところで小休憩。「小田原といえばかまぼこ」の代名詞ともいえる老舗の「鈴廣」で、ご当地の味を堪能しながら一服しよう。店内には飲食スペースもあり、「かまぼこのたこ焼き」など、なかなか侮れないかまぼこ料理がある。食べる量を調整できるので「一度にたくさん食べるのではなく、軽く小腹を満たしたい」というヒルクライム時のおなか事情にもうれしい。
小田原といえば、かまぼこ店の老舗「鈴廣」。長尾峠の麓にある御殿場店で一服
もちろん、店内で販売しているバラエティーに富んだかまぼこもチョイスできる。かまぼこはしっかりとタンパク質を補給できるので、ここまで酷使した筋肉にとってもありがたい栄養素だ。
富士山をかたどった御殿場店限定のかまぼこ「四季の富士」は和菓子のような甘い味付け。季節によって味が異なる
鈴廣特製「かまぼこのたこ焼き」。食べごたえがあってクセになりそうな味
お米とお魚のすり身を一緒に揚げた「おっととライス」。「とと」は魚の意味
軽い休憩と補給をとったところで次なる峠、長尾峠に向かう。神奈川県足柄下郡箱根町と静岡県御殿場市の県境に位置する峠で、コースプロファイルは19kmで600mアップ。距離は少し長めだが傾斜は一貫して緩く、足柄峠を上ってきた脚にはとても穏やかに感じる峠道だ。天気が良い日は木漏れ日がキラキラとまぶしく、森林浴を楽しみながら走ることができる。
元気をチャージしたら長尾峠に向かってヒルクライム
そして上り切った先には、本日2つめとなる富士山の絶景が広がる。
長尾峠から望む富士山。見事に広がる裾野と御殿場の町を見下ろす大パノラマ(資料写真)
2つの峠を踏破した達成感とそれを祝福するような絶景とで、ここまでの疲労が一気に吹き飛ぶ瞬間。しかも峠はここまで。最高頂の気分のまま、ここからあとは箱根へと下るのみだ。長尾隧道をくぐった先に広がる芦ノ湖と箱根外輪山を一望したら、ギアをアウターにチェンジ。ペダルを一漕ぎし、箱根裏街道を下山する。
趣のある長尾トンネルをくぐると…
箱根外輪山と芦ノ湖を一望

足湯と海の幸でフィニッシュ

週末は交通量が増える箱根。渋滞が発生し、動きが鈍くなるクルマに対して自転車は自由に動けるが、スピードに注意しながら慎重に下山しよう。
富士屋ホテルの先、箱根登山鉄道宮ノ下駅の方へ向かう激坂を上ると…
握力が弱い女性の場合はブレーキを握り続けることで手が疲れ、集中力が途切れがちになるため、途中で小休止を挟むことをおすすめする。今回立ち寄ったのは、箱根登山鉄道の宮ノ下駅付近にある「ナラヤカフェ」。下ってきた箱根裏街道を一本脇に入った、短い激坂の途中にある。
激坂に沿って現れた「ナラヤカフェ」。300年続いた「奈良屋旅館」の名を引き継いだ
足湯は奈良屋旅館時代からの温泉を利用
きなこがかかったソフトクリームの下に抹茶アイスと白玉だんごが隠れている和スイーツ
2つの峠を上った脚にうれしいごほうび♪
スイーツやお茶を楽しみながら温泉の足湯にも浸かれる、サイクリストにとってはありがたいお店。実はサイクリング途中の足湯は少し浸かっただけでも血行が良くなり足が軽くなる感覚を覚えるので、ぜひ試してみてほしい。
カフェのすぐそばには箱根登山鉄道が走る
そしてライドの仕上げにおすすめしたいのが小田原漁港で堪能する海の幸だ。小規模な港ながら周辺には新鮮な海鮮料理が食べられる飲食店やみやげ物店が軒を連ね、その日の朝に獲れた新鮮な海産物をリーズナブルに堪能できる。
下山し、小田原駅に向かう道すがら、ごはんを求めて小田原漁港へ
その日の朝に水揚げされた新鮮な魚が堪能できる食堂が軒を連ねる
立ち寄ったのは「めし家 やまや」さん。仲卸業者の方が営んでいるだけあって、メニューもその日の仕入れ具合によって変わる。この日の一押しはアジづくしの定食。ライド中少量ずつ補給を繰り返してきた胃に、しっかりと美味しく納まる感覚がうれしい。ここでビール!と行きたいところだけど、ライド途中なのでまだガマン。
小田原に来たらアジ!ということでアジフライもついたアジづくし定食をチョイス
その日水揚げされた魚で彩られる刺身盛り合わせ
おなかも心も満たしたところで、小田原駅へ。そのまま駅へと向かうのも味気ないので、観光気分で小田原城に立ち寄る。楽しかったライドの最後を締めくくるのにうってつけの場所だ。
フィニッシュは小田原城で
絶景やおいしいごはん、がんばった分だけご褒美感が増すのもヒルクライムの魅力。ヒルクライムが苦手という人も、このライドなら克服できるかも?

■箱根ベーカリー 小田原店

所在地:神奈川県小田原市城山1-1-1(小田原駅西口構内) TEL:0465-20-1126 営業時間:7:00~21:00(定休日無し) 「箱根ベーカリー 小田原店」ウェブサイト

■鈴廣 御殿場店

所在地:静岡県御殿場市東山1074-12 TEL:0550-81-4147 営業時間:9:00~18:00(土・日・祭:9:00~19:00、定休日無休し) ※1~3月の営業時間/9:00~18:00 「小田原 鈴廣かまぼこ」ウェブサイト

■NARAYA CAF?

所在地:神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下 404-13 TEL:0460-82-1259 営業時間:10:30?18:00(12月?2月は17:00まで) 定休日:水曜日・第4木曜日 「NARAYA CAF?」ウェブサイト

■めし家 やまや

所在地:神奈川県小田原市早川1-6-10 小田原水産会館1F TEL:0465-46-9551 営業時間:7:00?10:00/11:00?15:00(日曜:11:00?15:00) 定休日:水曜日
文: 後藤恭子(ごとう・きょうこ)

アウトドアメーカーの広報担当を経て、2015年に産経デジタルに入社。5年間にわたって自転車専門webメディア『Cyclist』編集部の記者として活動。主に自転車旅やスポーツ・アクティビティとして自転車の魅力を発信する取材・企画提案に従事。私生活でもロードバイクを趣味とし、社会における自転車活用の推進拡大をライフワークとしている。

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