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MTBガイドツアーに参加してみた 手軽に参加できるアクティビティのリアル

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はじめよう マウンテンバイク<番外編>
MTBガイドツアーに参加してみた 手軽に参加できるアクティビティのリアル

 マウンテンバイク(MTB)は心も体もリフレッシュしてくれるアクティビティです。自然の中で体を動かし、澄んだ空気を取り込めば、体の奥底から浄化してくれるような気になります。しかし、「どこで乗ったらいいのかわからない…」「そもそもMTBを持っていない…」といった人もいるのではないでしょうか。そうした人にMTBガイドツアーは良い選択になるかもしれません。ガイドがいれば、何かとサポートしてくれそうですし、MTBやその他の装備もレンタルできるところが多そうです。気軽に特別な体験ができそうですが、実際のところはどうなのでしょう。ガイドツアーに参加し、リアルな感想をリポートします。

ガイドツアーのリアルをお伝えします

ジーンズ、スニーカーで手軽にMTBを体験

 向かったのは埼玉県長瀞町。バイクライフサポートシステムが開催する「マウンテンバイク 初級 1dayツアー」に参加するためです。ここではMTBほか、ヘルメットやグローブの貸し出しも行ってくれます。事前に当日の服装についても伺ったところ、動きやすいものであれば問題なく、ジーンズ、Tシャツ、スニーカーといった誰でも持っているものでOKとのこと(ただし、長袖がいいとのことです)。参加にあたって、水分とバックパックは各自で用意してほしいと教えていただきましたが、誰もが持っているようなもので参加できるようだったので、この手軽さはとても良いと思いました。

 ちなみに、初級1day ツアー代は7,800円(ガイド料・昼食・保険代・消費税込)、 レンタル代が1日3,000円(バイク、ヘルメット、グローブを含む)で合計1万円ちょっとでした。

バイクライフサポートシステムの岩瀬信彦代表。同氏は1997年のMTBダウンヒル全日本チャンピオン。素晴らしい経歴を持つ方が本日のガイド役
当日の格好はジーンズにスニーカー、そして長袖Tシャツで参戦

 朝9時、受付を済ませると、MTB、ヘルメットほかグローブといった装備を貸し出してくれました。その際に、きちんとしたヘルメットの装着方法について教えてもらえます。グローブは安全面を考慮して、指切り型ではなく、指まできちんと覆うタイプを貸し出してくれました。

あご紐の締め方、ヘルメットのサイズ感など、正しいヘルメットの被り方などを指導してくれました
グローブは指をすべて覆うタイプのもの。暑くてもケガをしないことの方が大切です

 準備を済ませると、最初に始まったのが、乗車講習でした。30分ほどかけて、下り局面におけるブレーキのかけ方や基本の乗車姿勢を学んでいきます。ブレーキレバーを引く際は指1本、もしくは2本で。下りでの乗車中は基本的にサドルに座らず、クランクを水平にして立ったままの姿勢を保つのだといいます。そのほうが重心が低くなり安定するのだとか。いずれも転倒しないようにするためです。学んだことは、敷地内で実際に何度か試し、動作を体になじませていきました。

下り局面で降車する際は、サドルより前に降りてしまうと前転の危険性があるとのこと
ブレーキレバーを引く際は指1本、もしくは2本で
下り局面でブレーキをかける際は、腰をサドル後方に引く。お手本を岩瀬さんが披露
岩瀬さんのお手本をもとに参加者が体に動作をなじませていきます

 講習を終えると、いよいよ実地へ。車にMTBを積み込み、山頂方面から下っていくコースを走行するといいます。午前の部と午後の部で、別々のコースを使用し、それぞれ2回ずつのダウンヒルを楽しむという流れになるとのことでした。

ガイドから伝わってきた参加者への配慮

 どんなコースを走るのだろう。ワクワクする人もいれば、少し不安に思う人もいるかもしれません。スタート地点に到着すると、そこは林道でした。林道とは言っても、もちろん舗装などされていません。かといって、荒れすぎているわけでもなく、自転車2台が並ぶだけの横幅があり、手始めにMTBになれるには、ちょうどよさそうな道でした。

オフロードが続く林道を走ることに。どんな道が続くのかとワクワクしていました

 岩瀬さんの掛け声とともに、ツアーはスタート。岩瀬さんの後ろについて行きながら、ゆっくりと下っていきます。走行中は時折、後ろを振り返り、後続の様子を伺いながら、走ってくれました。段差があれば前もって、「ここはゆっくり走りましょう」「ハンドルに荷重はかけないようにしましょう」などとアドバイスもくれます。少し走っては、水分補給などの休憩を入れ、下り道をこなしていきました。

習ったとおり、クランクを水平にして下る、基本の乗車姿勢を続けながら走行

 一本目を終えて思ったのは、休憩が多かったことです。数百メートル行くと、いったんストップ。最初のうちはそれを何度か繰り返しました。初級者ツアーというのもありますが、後になってわかったのが、休憩の多さは意図があってのことだったということです。岩瀬さんは参加者の様子を伺い、走り方やペースを探っていたのだといいます。

休憩は楽しい談笑の時間。休憩の際にはMTBの乗り方などもいろいろと教えてくれました。岩瀬さんには参加者の様子を伺うための大事な時間ともなります

 安全面からも、小まめな休憩は必要になるといいます。体力がなくなったときに、発生しやすいのが転倒だというのです。特に団体での参加の場合、体が限界を迎えていても「まだ大丈夫」「まだいける」と気を張ってしまう人もいるのだとか。岩瀬さんは安全を第一に考え、参加者の様子を見ながら、休憩は多く入れていくのだといいます。確かに時間が経つにつれて、「疲れてないですか?」「手は痛くないですか?」などと、かけてくれる声も次第に変わっていきました。今思えば、岩瀬さんが、こちらに無理が生じていないかを状態を探ってくれていたのだと思います。

MTBならではのスリルも

 ガイドならではの絶妙な差配もありました。直線的な下りセクションに差し掛かると、岩瀬さんからは「ここはノーブレーキで!」と声がかかったのです。その声に従い、スピードがどんどん上がり、声を上げたくなる爽快感に包まれます。そして、恐怖に変わる手前の絶妙なタイミングで「ブレーキ!」とコールがかかったのです。何というか、そのタイミングは絶妙でした。

 ブレーキコールがあまりに絶妙だったので、タイミングは意図していたのかを岩瀬さんに聞いたところ、ちょっと恥ずかしそうにしながら「そうなんです」と返してきました。岩瀬さんはMTBの爽快感を参加者に最大限に味わってもらうことも、自分の持ち味にしているのだと言います。

みるみる上達?

 昼食をとってから、午後の部のコースは、MTBが1台通れるほどの狭い道、いわゆる”シングル・トラック”でした。道幅が狭くなった分、脱線できないというスリル感が高まるとともに、コーナーはよりタイトになり、段差の大きな場所も多数、現れるようになるなど、難易度が高くなりました。午前のコースよりも断然テクニックが求められるようになりましたが、MTBを操縦している感覚があって、とても面白いコースでした。

シングル・トラックはテクニックが問われてきますが、操縦している感覚は強くMTBの醍醐味といえるかもしれません

 驚いたのは、先導する岩瀬さんの走行ラインをトレースすると上達のスピードも早くなったことです。岩瀬さんのような上級者が選んだライン(自分では選ばないライン)を走ると、難しいセクションも難なくクリアできるのです。実際にそうした経験を味わえたのは新鮮でした。技量のある人の後ろについて走ると、みるみると上達していきます。走りながら学びつつ、MTBがさらに楽しいものだと感じさせてくれるのも、ガイドツアーのいいところだと思います。

見通しの良いところではスピードも高まり、爽快感に加えてシングル・トラックの操縦感もあり、MTBがとても楽しく感じられます

ガイドがいる安心感

 

 MTBガイドツアーに参加してみて思ったのは、ガイドの役割の大きさでした。参加者の技量や疲労などを観察し、トラブルがなるべく生じないように導いてくれます。純粋にMTBを楽しめるようにしてくれるようなサポートしてくれるのです。もちろん、ガイドによりけりなのは言うまでもありませんが、どのガイドツアーにおいても、コースを熟知し、参加者に配慮できる人がいるのといないのとでは、安全への配慮は大きく変わるような気がします。

 岩瀬さんによれば、運動に自信がない人など、一度、みっちりとMTBスクール等の乗車講習を受けてからのほうが、ガイドツアーをより一層楽しめるとも言いますが、今回感じたのは、個々の参加者の技量や時々の状況を察してくれるのがガイドであるということです。(あまりに乗れない人を除いて)難しそうな場所を無理をしなければ、ガイドツアーを楽しめるのではないかと感じました。一にも二にも、手ぶらで現地に行き、参加者をサポートしてくれるガイドツアーは、MTBを楽しむの入り口として、良い選択肢になるのではないでしょうか。

ダウンヒルをやっている感がある写真を最後に掲載

取材協力:バイクライフサポートシステム