東京近郊でロードバイクに乗り始めると、いくつか定番のサイクリングコースの名を耳にし始める。その代表格の1つともいえるのが「南多摩尾根幹線」、通称「尾根幹」(おねかん)だ。東京都の調布市から町田市までを結んでいる15kmほどの道路で、週末ともなると東京近郊在住のサイクリストたちがどこからともなく集結。「都内の自転車練習コース」さながら、たくさんのサイクリストたちが自慢のバイクで往来している。「とりあえず尾根幹集合で」といえるようになったら一人前のサイクリスト(東京近郊)の仲間入りかも? 今回は皆さんの“尾根幹デビュー”を楽しく、美味しく誘います。(※2023年5月更新)

オススメポイント | 東京都調布市から町田市を結ぶ都内の定番コース。道中にはサイクリストウェルカムなカフェやコンビニが多い。アレンジ次第でもっと起伏に富んだレイアウトも可能。 |
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レベル | ★★(中級者向け) |
距離 | 54.1km |
獲得標高 | 704m |
始発・終着地 | 始発・ローソン稲城鶴川街道店 / 終着地・京王電鉄 高尾駅 |
立ち寄りグルメ | CROSS COFFEE -chocolate & sandwiches-(チョコレートドリンク)、肉汁うどんの南哲(肉汁うどん)、ZEBRA Coffee & Croissant 津久井本店(クロワッサン) |
立ち寄りスポット | 相模湖、TAKAO 599 MUSEUM |
尾根幹の拠点「クロスコーヒー」
尾根幹は、いってしまえば“ただの道路”。しかし、なぜそれほどまでに多くのサイクリストたちが集まるのか。その理由は、東京近郊エリアで得難い“継続したアップダウン”が手近に得られるからだ。

東京都調布市の多摩川原橋から町田市小山町の町田街道までを結んでいる道路で、練習の拠点となる矢野口から基本ルートを走るとおおよそ往復30kmほどになる。その間にアップダウンが波打つように繰り返し、最終的な獲得標高は320mとなる。練習コースとしてはなんとも“チリツモ”だが、コースを往復したり、インターバルトレーニングをしたり、基本ルートを外れて激坂コースへと向かったり…と、皆、勝手にバリエーション豊かに楽しんで(もがいて?)いる。その懐の深さは、一般サイクリストだけでなく、プロもお忍びで通うほどのポテンシャルだ。

そんな尾根幹練の集合場所といえば東京・稲城市の矢野口交差点にあるコンビニエンスストア「ローソン」。コンビニが集合場所というのもなんとも味気ないが、駐車(輪)スペースが広く、飲み物も補給食も得るのにもちょうどいい場所がスタート地点の近くにあれば、自然と集まってしまうのがサイクリストの性なのだろう。 そんなローソンの向かいにはサイクリングウェアブランドの「チャンピオンシステム・ジャパン」が手がけるコーヒーショップ「CROSS COFFEE -chocolate & sandwiches-」(以下、クロスコーヒー)がある。

サイクリストのための「コミュニティスペース」をコンセプトに、フレンチスタイルのドリンク・フードメニューを展開している。一押しのメニューは、カカオ選びからこだわって作った「チョコレート」のドリンク。本場フランスの味を再現したというバゲットサンドも、外はカリカリで中身はもちっとした絶品だ。朝7時からオープンしているので、仲間との待ち合わせやライド前の朝食にもおすすめ。



“真綿で脚を削られる”コース
軽めにエネルギーをチャージしたら、いよいよライド開始。尾根幹から派生した、より厳しい練習コースもいくつかあるが、まずは基本となるルートを押さえよう。途中、6%ほどの勾配の手強い直登が顔を出したりもするが、激坂はなく、全体的に緩やかな斜度で初心者でも頑張れるコースだ。

多くのサイクリストがトレーニング目的で走っているため、あっという間に抜かされたりするかもしれないが、周囲の雰囲気に飲まれる必要はない。惑わされずに自分のペースを保って走ろう。道がきれいに整備されている上に路肩も広めに設計されている部分も多いので、後ろから来たクルマに煽られる心配もない。 信号は比較的少ないが、アップダウンの谷間に設置されていることが多いので、赤信号に捕まってダウンヒルの勢いが強制的に停止されれば、再度ボトムから踏み直さなければならない。その繰り返しで、気づかないうちにじわじわと脚が削られていく、まさに“真綿で首を締められる”もとい、“真綿で脚を削られる”コースなのだ。


ちなみに尾根幹の一部は、2020年東京オリンピックの自転車ロードレースのコースにもなった。世界各国の代表選手が駆け抜けた当時の雄姿を思いを馳せながら走ってみるのも良いだろう。

食べ過ぎ注意?尾根幹周りのグルメスポット
信号を挟みつつ平均時速15kmほどで走ると、約1時間ほどで折返し地点に到着。ここでもと来た道を折り返し、往復30kmを走るのも良いが、今回はトレーニングではなくサイクリングということなので、方向を西へと変え、津久井湖、相模湖方面へと脚を伸ばしてみよう。その前に、ここでおすすめのランチをご紹介。町田街道につきあたった尾根幹の終点から1kmほど南西に行ったところにある、肉汁うどん専門店「南哲」だ。

その名の通り「肉汁」に特化し、コシの強いうどんを特徴とするラインナップ。 国産小麦にこだわった自家製麺は、歯を押し返すほどの弾力だ。看板メニューは、豚肉とネギの入った濃厚な肉汁につけて食べるつけ麺タイプの「肉汁うどん」。並盛りといってもかなり量が多く、女性なら並盛りでも完食できるかどうかという見た目だ。 さらに名物の巨大なかき揚げをトッピング。普段はカロリーを気にしてしまう組み合わせも、しっかり運動する自転車では必要なエネルギー源。お楽しみの1つとして遠慮なくがっつり堪能しよう。



エネルギーを補給したら次の目的地、津久井湖へ。道中に出てくる標識の「津久井湖」という表示をたどって、約8kmの道のりを西へと走る。津久井湖は「城山ダム」の人造湖。湖畔にある「津久井湖城山公園」は、春には桜の名所、秋には紅葉、冬にはわかさぎ釣りなど四季折々の表情を見せる。 津久井湖沿いを走った少し先に、この辺を走るサイクリストたちが必ず立ち寄るホットスポットがある。「ゼブラ コーヒーアンドクロワッサン 津久井本店」だ。旧工場を改築したという店内は天井が高く開放的で、無造作に置かれたコーヒーマシーンや、コーヒーやペイストリーの香ばしい香りが、無機質な空間をスタイリッシュに演出している。




居心地の良い空間、自家焙煎コーヒーの魅力はもちろん、このカフェは店内にバイクラックがあり、自分の目の届くところに愛車を置いてゆっくりコーヒーを堪能できる。ただでさえコーヒー好きが多いサイクリストが皆、ゼブラに引き寄せられてしまう理由はここにある。


神奈川・東京の県境ヒルクライムでフィニッシュ
ゼブラをあとにし、さらに西へと向かう。ここから少し山深くなり、斜度強めのアップダウンがスタートする。7kmほど走ったところで、到着したのは相模湖公園。尾根幹から外れ、20kmほど走ってきただけで、山に囲まれた静かな湖畔が広がる景色にたどり着く。

相模湖を出たところでライドのクライマックス。ゴールの高尾に向かう甲州街道(国道20号線)を走り、大垂水(おおだるみ)峠を越えなければならない。ヒルクライムというと身構える人もいるかもしないが、大垂水峠はヒルクライム初心者におすすめのレベル感。とくに相模湖側からのアプローチは距離4km程度、獲得標高200mほどで、勾配も比較的一定なので高尾側から上るよりもアクセスがしやすい。


峠を越えて高尾側へ下ると、旅行客や登山客を迎える賑やかな観光地ムードに一変。高尾山入り口付近に完成した「TAKAO 599 MUSEUM」など新しいスポットも誕生し、さらに賑わいを見せている。休日はたくさんの人で溢れかえるので、車道を走る場合でも人の往来(突然の道路横断等)に注意して走ろう。



京王電鉄高尾線「高尾山口」駅をゴールにするのも良いが、登山客で混み合う休日には輪行しづらい場合も。人混みを避けたいなら、さらに2kmほど走った先にあるJR高尾駅がおすすめ。中央特快に乗れば新宿まで46分、東京へも1時間ほどで到着する。 初めての尾根幹デビュー、あるいは尾根幹を走ってみたいという友人をエスコートする際のバリエーションルートの1つとして、ぜひ参考にしてほしい。
■「CROSS COFFEE -chocolate & sandwiches-」
所在地:東京都稲城市矢野口227-1 TEL:042-401-6126 営業時間:7:00~17:00 定休日:なし HP:CROSS COFFEE -chocolate & sandwiches-
■ZEBRA Coffee & Croissant 稲城中央公園店
所在地:東京都稲城市長峰1丁目1−1 TEL:050-3749-3202 営業時間:8:30~19:00 定休日:なし HP:https://zebra-coffee.com/visit/shop-inagi-central-park/
■肉汁うどんの南哲
所在地:神奈川県相模原市中央区宮下2-9-15 TEL:042-703-7585 営業時間:月火木金 11:00~20:00/土日祝 11:00~21:00 定休日:水曜日(祝日の場合は営業) HP:https://www.nantetsu.com/
■ZEBRA 津久井本店
所在地:相模原市緑区中野1890-1 TEL:042-780-8600 営業時間:平日 9:00~17:00/土日祝 9:00~18:00 定休日:なし HP:https://zebra-coffee.com/visit/shop-tsukui/

アウトドアメーカーの広報担当を経て、2015年に産経デジタルに入社。5年間にわたって自転車専門webメディア『Cyclist』編集部の記者として活動。主に自転車旅やスポーツ・アクティビティとして自転車の魅力を発信する取材・企画提案に従事。私生活でもロードバイクを趣味とし、社会における自転車活用の推進拡大をライフワークとしている。
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