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ヒルクライムから“秘境気分”まで堪能できる千葉里山ライド 素掘りトンネルは「チーバくん」の小腸?(千葉)

 温暖な気候と交通量の少なさ、そして程良いアップダウンでサイクリストのトレーニングの場としても人気の高い房総半島。中でも鹿野山がある君津エリアはしっかりヒルクライムも楽しむこともできます。でもここはそれだけではありません。“素掘りトンネル”といわれる人の手によって作られたトンネルが数多く残っており、秘境探訪の気分を味わえます。しっかり走り応えのあるライドにそんなエンターテインメント要素も加わった盛りだくさんのコースをご紹介します。
オススメポイント温暖でクルマの往来が少ない君津~亀山~養老渓谷の里山を、ヒルクライム、絶景、そしてこの土地ならではの趣ある「素掘りトンネル」を交えながら堪能します。
レベル★★★(上級者向け)
距離79.2km
獲得標高1,629m
出発・終着地君津バスターミナル
立ち寄りグルメ蕎麦屋畔蒜(ABIRU)、窯焼きパンの店「酪」
立ち寄りスポットマザー牧場、鹿野山神野寺、九十九谷展望公園、亀山湖、共栄・向山トンネル

歴史と絶景の鹿野山ヒルクライム

ライドのスタート地点は君津バスターミナル。電車だと東京から1時間半以上かかる君津ですが、東京湾アクアラインを使う高速バスに乗ると、道路の混雑状況にもよりますが、東京駅八重洲口から約1時間強でアクセスが可能です。自転車も輪行袋に入れれば追加料金なしで手荷物として預けることができます。 君津エリアは千葉県内で3番目に高い鹿野山(標高379m)を筆頭に、程よくアップダウンを繰り返す里山コースが広域に広がる地域。幹線を外れるとクルマ通りも信号も少ないので、ゆったりと里山サイクリングを楽しめるのはもちろん、しっかり踏めばトレーニングエリアとしても最適です。
君津バスターミナルからスタート
早速、コースのハイライトの1つ目、鹿野山ヒルクライムからスタートします。スタート地点から5kmほど走ったところで、じわじわと上りが始まります。鹿野山までの距離はおよそ11km。アプローチするルートはいくつかありますが、このルートは比較的斜度が緩めで、ヒルクライムが苦手という人でも上りやすいと思います。
クルマの往来が少なく、小刻みにアップダウンを繰り返すコースは練習で利用されることも多い
鹿野山に向かう道。降り注ぐ木漏れ日が気持ちいい
6kmほど上ったところで、1つめのピーク「マザー牧場」に到着。クルマで訪れたことのある人も多いと思いますが、クルマと違って自力で坂道を上ったあとに現れる広々とした雰囲気は格別。始まったばかりなのに早くも達成感を感じてしまいます。
鹿野山の1つ目のピーク、マザー牧場
もちろん、ここでのんびり過ごすのも良いのですが、今回は先が長いので牛たちを横目に通過していきます。ただ、ここで一つ注目していただきたいのが、入り口付近にあるホルスタインのオブジェ。よく見ると模様の一つに千葉県のマスコット「チーバくん」が隠れていますので、ぜひチェックしてみてください。
ゲート付近に佇む牛のオブジェには…
“隠れチーバくん”発見!
マザー牧場を通過したあとは、3kmほど先の鹿野山頂上にある神野寺(じんやじ)を目指します。神野寺は聖徳太子によって日本で4番目に開かれた、関東最古の名刹(古寺)だそう。実は鹿野山は筑波山、榛名山と並ぶ関東三大修験道の一山とされている、歴史ある山なのです。
関東最古の名刹、鹿野山神野寺
奥の院には天狗様の大下駄があるそうで、これに触れると足腰の健康、さらにはスポーツの上達にご利益があるそうです。どんな“大下駄”かは、ぜひ自分の目でご確認ください。
歴史を感じさせる見事な欄間彫刻
奥の院には足腰のご守護、スポーツの上達にご利益のある天狗の大下駄がある
そこから1kmほど走った先にある「九十九谷展望公園」からは、高宕山など上総丘陵が幾重にも連なる絶景を一望することができます。山谷の織り成す景観を総称して「九十九谷」と呼ばれており、夜明け前や日の入り前の情景は墨絵の世界にも例えられているそうです。ちなみにこの景観は君津市の「次世代に伝えたい20世紀遺産」及び、千葉県の「眺望百景」にも登録されています。
九十九谷展望公園からの眺め
九十九谷展望公園を頂上に、あとはダウンヒル。「房総スカイライン」を一気に下った先の亀山エリアで、ランチ休憩をとりましょう。里山なので、食事がとれる休憩場所が少な目なのですが、「蕎麦 畔蒜(ABIRU)」は味もボリュームも納得のおすすめグルメスポットです。
房総スカイラインを下りきったところにある蕎麦「畔蒜」(ABIRU)。丸太小屋の店構えなので、一見蕎麦屋には見えないかも?
国産そば粉を使った手打蕎麦をはじめ、可能な限り地産地消の食材を使った料理が楽しめます。中でも店主の一押しメニューは「鴨せいろ」。ほど良い甘さと風味も豊かな蕎麦と地元で捕れた鴨の旨味たっぷりの濃い目のつゆ、そして鴨肉も分厚く、脂も甘くてジューシーな逸品です。
一押しメニューの「鴨せいろ」
がっつりエネルギーをチャージしたい人には天丼とせいろのセットもおすすめ

蕎麦 畔蒜(ABIRU)

所在地:千葉県君津市笹1654-1 TEL:050-1223-7633 営業時間:11:00~お蕎麦が品切れ次第閉店 定休日:木曜日 公式Facebook:https://www.facebook.com/sobaabiru

「素掘りトンネル」で秘境気分

エネルギーをチャージしたところで、ライド再開。久留里街道を走って亀山湖方面へと向かいます。複雑な形状をした亀山湖には湖の上を飛び交うように25もの橋がかかっており、橋を巡って湖の景観を楽しむサイクリングもできます。
千葉県最大のダム湖である亀山湖
サイクリングルートは一部林道になっており、グラベルライドも楽しむことができます。春や秋等四季折々の美しい景観が楽しめることでも知られています。
色鮮やかな「岩の上橋」。亀山湖には、このような橋が25もある
亀山湖から次は養老渓谷へと向かいます。約7km走ったところで、幹線を逸れて山道へと入ります。クルマで通るには少し難しい、喧騒から離れた人気のない細い一本道。自転車だからこそ堪能していただきたい“あるモノ”がここにあります。
ちょっと幹線を外れると古い林道が現れる
千葉県・房総半島の南部には、人力で掘られた「素掘りトンネル」がいまなお数多く残っています。ゴツゴツとした岩場を掘り抜いて貫通させた歪な形のトンネル。人工的な造りのトンネルとは異なる仕事ぶりに、どこか人の気配を感じてしまいます。
いよいよ“隧道”エリアに突入。一つ目は牛尻戸上トンネル
名称不明な素掘りトンネル。地層が模様になっていて味わい深いような、少し怖いような…
トンネルを抜けるとまたトンネルが現れる
そして素掘りトンネルの中で最も人気が高いのが、「二重トンネル」の名で知られる「共栄・向山トンネル」です。
養老渓谷付近にある、何やら怪しげなトンネル…
全長約115m。歩けばたった数分の短いトンネルですが、その美しさとひんやりとした冷たい空気は、まさに異空間。少し中へ進んで後ろを振り返ると、上下に2つの穴が現れます。その様子が“2階建て”に見えることから「二重トンネル」と呼ばれるようになったといわれています。
通称「二重トンネル」と呼ばれている「共栄・向山トンネル」。養老渓谷側から亀山方面を見ると、このように上下2つの穴が見える構造になっている
もともと上部の出口が使われていたところに「もう少し便利にしよう」ということで1970年に新たなトンネルを掘ることに。下部の出口が完成したものの、上部を埋め戻さなかったため、このような二重出口のトンネルとなったそうです。照明の効果で内部が緑色に仄明るく写るので、写真映えスポットとしても人気です。 それにしてもこの場所が「チーバくん」のおなかあたりに位置するだけに、この入り組んだトンネル郡が「チーバくんの小腸」のように思えてしまうのは私だけでしょうか?
養老山立國寺の入口にある「出世観音橋」
小湊鐵道のかわいらしい車両

週末限定営業の隠れ家パン屋

養老渓谷観音橋を超えて「清澄養老ライン」を1.5kmほど走ると、うっかり見落としてしまいそうな、白地にパンの絵だけが描かれたシンプルな看板が見えてきます。その看板が指し示す脇道に入っていくと、本当にパン屋があるの?と思わせるような場所に「窯焼きパンと洋菓子の店 酪」が現れます。
週末のみオープンする“隠れ家”パン屋「酪」
パン屋およびカフェの営業は週末のみ。手作りのレンガ窯で焼き上げるパンが美味しく、開店間もなく売り切れてしまうほどの人気なのだとか。パン以外にもチーズケーキやタルト等の焼き菓子の種類も豊富で、店内のイートインスペース、または庭のベンチでコーヒーと共に味わうことができます。
パンの他に、タルトやチーズケーキ等、焼き菓子の種類も豊富
駐輪用のバイクラックも完備
種類豊富なスイーツから今回選んだのは、「南瓜のマーブルチーズケーキ」と「さつま芋のアーモンドタルト」。とくにチーズケーキは甘味と酸味が程よく、コーヒーとともに疲れた身体に染みていきます。ちなみにチーズケーキだけでも複数種類あるので、仲間と別々の種類を頼んでシェアすれば味わいも倍増ですね。
店内だけでなく庭の席でもくつろげる

窯焼きパンの店 酪

所在地:千葉県市原市朝生原220-1 TEL:0436-96-1299 営業時間:11:00~16:00(完売の時点で終了、要電話確認) 定休日:月・火・水・木・金 公式HP:https://htetsu0604.wixsite.com/website
 しっかりエネルギーチャージを完了したあとは、ここからゴールの君津バスターミナルまで残り30kmほどを走り抜けます。途中、獲得標高200mほどの山越えもありますが、それも最後の‟デザート”と思って心行くまでライドを堪能しましょう。 なお、君津バスターミナルから東京駅八重洲口行きのバスは夕方以降は1時間に1本程度の運行になりますので、東京方面から訪れる場合は、あらかじめ輪行時間も含めた到着時間を決めて、そこから逆算したライドスケジュールで行動するようにしましょう。 スタートからゴールまで、休憩を入れて通算7時間ほどの千葉総里山ライド。暖かくなる3月頃、逸早く訪れる春とヒルクライム、そして秘境気分が味わえる素掘りトンネルを堪能しに出かけてみませんか?
文: 後藤恭子(ごとう・きょうこ)

アウトドアメーカーの広報担当を経て、2015年に産経デジタルに入社。5年間にわたって自転車専門webメディア『Cyclist』編集部の記者として活動。主に自転車旅やスポーツ・アクティビティとして自転車の魅力を発信する取材・企画提案に従事。私生活でもロードバイクを趣味とし、社会における自転車活用の推進拡大をライフワークとしている。

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