- コース概要距離 : 73.5km
- 獲得標高 : 1278m
サイクリストの最大の敵、冬。走り始めの寒さや北風の冷たさを思うと、ペダルを漕ぎだす足も鈍りがちになります。しかし、その寒さがご褒美をもたらしてくれるといったらどうでしょう? 澄んだ空気の中で見る絶景、冬ならではのグルメ、そしてがんばったご褒美の温泉─。そんな冬のサイクリングを楽しく変えてしまう魅力がぎゅっと詰まっている西伊豆のコースを紹介します。

オススメポイント | 富士山を眺めながら走れる絶景コース、カニと深海魚の絶品料理、最後は温泉で〆。西伊豆の魅力を凝縮しました。 |
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レベル | ★★★(上級者向け) |
距離 | 73.5km |
獲得標高 | 1,278m |
始発・終着地 | 始発・JR沼津駅 / 終着地・伊豆箱根鉄道 伊豆長岡駅 |
立ち寄りグルメ | チェレステカフェ(カレードリア)、丸吉食堂(海鮮・定食)、柳月(ながお菓まんじゅう) |
立ち寄りスポット | 大瀬神社、 韮山反射炉 |
サイクリストウェルカムな西伊豆
伊豆半島を走ったことがある人なら、「伊豆」と聞くと激しいアップダウンが連続する海岸線を想像するだろう。それもそのはず、このエリアは海底火山が本州への衝突にともなって隆起して登場した半島。本来ならば海の底に没しているはずの海底火山群がフィールドとなっている独特な地形なのだ。とはいえ、コースを選べば難易度を下げることも可能。今回は比較的なだらかな駿河湾沿いの道から、達磨山へと向かう“ご褒美”付きの坂にアプローチし、伊豆長岡へと抜ける総距離73.5km、獲得標高1314mという中級者向けコースを設定した。 西伊豆といえば駿河湾越しに間近に見る富士山が人気のエリアだが、とくに空気が澄んでいる冬は景色がよりいっそうクリアに。それでいて内陸の山地より温暖なので、路面も凍結しにくく冬でも走りやすいといった特徴がある。

さらに最近は沼津市を中心に自転車を活用した地域振興にも取り組んでおり、サイクルフレンドリーなエリアとしても注目を集めている。 今回はその沼津駅を拠点にスタート。新幹線を使えば都心近郊からもアクセスしやすい点もうれしい。駿河湾沿いに出るまでの県道は比較的道が狭く、クルマの往来も多い。公道での走行に慣れているなら問題のないレベルだが、ビギナーがいる場合は慎重に、互いに合図を確認しながら進もう。

県道を10kmほど走ったところで現れるのが「CELESTE CAFE」(チェレステカフェ)というお店。伊豆市に競輪学校や自転車競技場「ベロドローム」を擁する同エリアは自転車競技の選手が多く訪れることでも知られ、なかでもチェレステカフェは練習中の選手たちがひっきりなしに立ち寄る店としても有名だ。自らも生粋のサイクリストという店長の小野剣人さんの歓迎ぶりが、壁いっぱいに書かれたおびただしい数のサインに現れている。


一番人気のメニューはカレードリア(900円)。土日は午前6時半から営業しているので、ランチ前の早い時間でも心配なく立ち寄れる。
富士山と伊豆七不思議の強力なエネルギー

沿岸に出てさらに漕ぎ進むと、コースはぐるりと駿河湾を回り込み、富士山を右斜め方向に望む進行方向になる。この辺から交通量が減る上に、内海特有の堤防の低さが解放感を与えてくれる。くねくねと曲がる海岸線沿いの道は、カーブを曲がるたびに富士山の姿が見え隠れし、まるで隠れん坊をしているような気分になる。 ただ、カーブが多い分、突然の対向車両の出現に驚くことも。富士山に気をとられ過ぎないよう十分注意するとともに、カーブを曲がるときも外側に膨らまないように左側通行を徹底しよう。


漕ぎ進むごとに大きさを増す富士山。見え方に変化を感じ始めたとき、実はコースも少しずつ斜度が上がり始め、緩やかなアップダウンが始まっていた。 その途中に現れるのが「富士山ビュースポット西浦江梨(にしうらえなし)」。その名の通り、駿河湾越しに富士山を望む絶景スポットだ。手前に駿河湾へ大きく突き出た大瀬崎(おせざき)が見え、独特の景観を織り成している。 大瀬崎は、過去の巨大地震によって隆起したとされる約1kmの半島。「ビャクシン」という国の天然記念物となっているヒノキ科の樹木の日本最北端の群生地として知られるほか、奥にある「神池」と呼ばれる直径100mほどの淡水池は「伊豆七不思議」の一つにも数えられている。


ここでいったん自転車を下り、徒歩で半島に足を踏み入れる。ダイビングでも人気がある同エリアは、一見よくあるマリンレジャースポットだが、奥にある「大瀬神社」に向かうにつれて漂う雰囲気ががらりと変わる。生命力あふれるビャクシンの迫力や神池の不思議さもさることながら、神秘的ともまた違う“伊豆のエネルギー”がひしひしと伝わってくる。



カニと深海魚で絶品ランチ
ここからさらに10kmほどアップダウンを繰り返し、戸田(へだ)漁港へと向かう。少々強度のある上りも出現するが、お待ちかねのランチのためにひと踏ん張りしよう。

戸田漁港は駿河湾の深い海底谷に隣接しているため、深海魚やタカアシガニが多数水揚げされることでも有名。一般的な定食屋でありながら、メニューに深海魚の刺身や煮つけなどの文字が並び、大きなタカアシガニが入った生簀が置かれている風景は、“よそ者”として軽くカルチャーショックを受ける。

冬が旬とあってタカアシガニ目当てで訪れる観光客も多く、タカアシガニを丸ごと堪能できるコースをオーダーするグループが多く見られた。身が詰まった大きなカニの足を横目に、サイクリストとしては「おなかいっぱいになると走れない」あるいは「アルコールが欲しくなってしまうかもしれない」等々の理由で、ここは個人的に堪えることに…。 とはいえ、それ以外にも定食や単品のメニューが充実しているので、サイクリストも選択肢には困らない。もちろん豪快にタカアシガニをチョイスして仲間とシェアするのも楽しい選択だ。ちなみに寒い冬場はかにみその量も多くなるというのは店の方のお話。


一泊、日帰り、足湯…楽しみ方はあなた次第

おなかが満たされたところで、距離的にはここからが折り返し地点。だが、いよいよヒルクライム本番でもある。目指すは戸田峠。距離は約10km、獲得標高は725m。平均斜度は5%程度だが、時折り最大11%の斜度がパンチを繰り出す伊豆ならではの上りだ。しかし、ここが今回のコースの唯一の大きな上り。摂ったカロリーの消費どころと思って踏ん張ろう。

戸田峠を上りきると、その先にある達磨山の展望台から再び富士山を望むことができる。これまでとは視点の異なる俯瞰的な景色の中に、富士山以外の山の連なりも見え、伊豆半島が形成されてきた地形の歴史を感じることができる。 厳しい寒風が吹きつける冬場の峠は、体が冷え切る前に下山を急ぎたいところだが、達磨山にはレストハウスがあり、大きな窓越しに温まりながら絶景を眺めることができる。ダウンヒルは緩やかだが14kmほどあるので、休息では身体を温め、防寒対策もしっかりして臨もう。

峠を下り終え、ゴールの伊豆長岡駅へと向かう道すがら「韮山(にらやま)反射炉」へと向かう。反射炉とは金属融解炉の一種で、ここ韮山反射炉では19世紀半ばに金属を溶かし大砲を鋳造していた。稼働した反射炉が現存するのは全国でここだけで、2015年に「明治日本の産業革命遺産」の1つとして世界文化遺産に登録された。一般は500円で見学可能。無料でガイドによる説明(20分)を受けることもできる。歴史好きにはぜひ立ち寄ってほしい、“萌え”スポットだ。



ゴールの伊豆長岡は言わずと知れた温泉街。着替えを持参して日帰り温泉を楽しむもよし、点在する公共の足湯を利用するのも良いだろう。足湯でも泉質と温度に遜色はない。浸けた瞬間、思わず「熱っ!」といってしまうほどの温度だが、浸けているうちにほどよくジワジワと全身が温まり、脚の疲れがとれていく。「一泊して、翌日もう一山越えてみるのもありかもしれない…」。温泉まんじゅうを頬張りながら、そんなことを思うのだった。 <文・後藤恭子、写真・大星直輝>
■CELESTE-CAFE(チェレステ カフェ)
所在地:静岡県沼津市口野55-16 TEL:090-6350-0023 営業日:月、水?金/11:30-20:00、土/6:30-9:30、11:30-20:00、日/6:30-9:30、11:30-17:00 定休日:毎週火曜日&第2、第4月曜日 「チェレステ カフェ」ウェブサイト
■丸吉食堂
所在地:静岡県沼津市戸田566-2 TEL:0558-94-2355 営業時間:月~木 10時~17時(L.O)、土・日・祝 9時~19時(L.O) 定休日:金曜日 「丸吉食堂」ウェブサイト「NUMAZU CYCLING」ウェブサイト

アウトドアメーカーの広報担当を経て、2015年に産経デジタルに入社。5年間にわたって自転車専門webメディア『Cyclist』編集部の記者として活動。主に自転車旅やスポーツ・アクティビティとして自転車の魅力を発信する取材・企画提案に従事。私生活でもロードバイクを趣味とし、社会における自転車活用の推進拡大をライフワークとしている。
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