阪神間の臨海部は港湾・工業地帯のイメージが強いですが、実はそれだけではありません。住宅地やスポーツ、リゾートなど、さまざまなエリアがあり、変化に富んだ景色を楽しめます。阪神間の中間に位置する西宮から芦屋にかけてのルートなら、アップダウンはほぼ橋のみ。都市部ですが車道を走る割合も少なく、サイクリング初心者にもオススメのコースです。距離の割に道は複雑なので、ルートをスマホやサイクルコンピュータに入れて出発してくださいね。

オススメポイント | 西宮~芦屋の様々な顔を楽しめる。複雑なコース設計は冒険感満載! |
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レベル | ★(初心者向け) |
距離 | 23.2km |
獲得標高 | 162m |
始発・終着地 | 阪神電車 西宮駅 |
立ち寄りグルメ | CORAL KITCHEN at cove(CORALビーフバーガー) |
立ち寄りスポット | 芦屋浜シーサイドタウン、高浜虚子記念館 |
西宮の人工島へ
今回は阪神電車の西宮駅を発着します。JRの西宮駅や阪急の夙川駅も近いので、輪行ならいずれの駅からもアクセスできるでしょう。阪神西宮駅は電動アシスト付きのシェアサイクルもあるので、レンタル予約して手ぶらで来るのも有りです。 まずは駅前の東、高架を貫く大通りを海に向け南下しましょう。高速道路と並行する国道43号線を渡ると、歩道に自転車道が現れます。ここで道路右側に渡って、自転車道をさらに南下していくと、目の前に西宮大橋が見えてきます。ここから本格的な埋立地・人工島エリアに入っていきます。橋の上りは若干息が切れますが、頂上付近からはマリーナや対岸の巨大団地など眺めが良く、なかなかの写真映えスポットです。ベンチがあるので休憩も良いでしょう(まだ2kmも走っていませんが)。

橋を渡ると、人工島の西宮浜です。1980年代に埋め立てられ、東半分が工業地帯、西半分が住宅地や公園、そして南の端が新西宮ヨットハーバーになっています。南下して突き当たり、右(西側)に曲がって少し行くとヨットハーバーの入口。海側に出ると百隻以上のヨットやクルーザーが並んでいて壮観です。そのまま海沿いに島の西側をぐるりと進んでいきましょう。向こうに豪華客船風の建物が見えますが、実は隣の島に建つホテルです。


芦屋の「未来都市」
島を4分の1周ほどすると、阪神高速湾岸線の高架をくぐります。山側に一般道と歩道橋があるので、これで隣の島へと渡りましょう。ここからは芦屋市。さっき西宮大橋から見えた未来的な高層団地がすぐ近くです。橋から下ってそのまま歩道を進むと、しばらくして右に進入できる入口があるので、ぐるりと回って土手に上がりましょう。橋を渡ると例の団地が建ち並ぶ芦屋浜です。

遠くから見ると未来的だった高層団地ですが、近くで見ると、意外と歴史がありそう。そして縦横に大きなトラス構造が組まれた独特のフォルムが不思議な雰囲気をかもします。この芦屋浜シーサイドタウン(芦屋浜団地)は1970年代末頃から建てられ、未来都市の実験的な、当時の最先端技術を投入して整備されました。

いずれも階段部分を縦の柱、5階ごとの共用フロア部分を横の梁とする、鉄骨トラスのメガストラクチャー(巨大構造体)を組み上げ、その間に工場で作った鉄筋コンクリートの住居ユニットをはめ込むという、“プレハブ”の高層建築になっています。今見ても興味深い構造で色々メリットもあるそうですが、どうやら普及していないのはデメリットも少なくなかったのでしょうか。 せっかくなので団地内を突っ切って、近くから観察しましょう。道からの眺めはまさに「1970年代に夢見た未来」といった趣で、これまた写真が楽しい場所です。実は晴れた日よりも、どんより曇った日の方が、サイバー感が出てカッコいいです。

この付近は団地の名前の通り、芦屋の浜辺を埋め立てて拡張した土地。今は沖にさらに人工島ができて、あまり「浜」といった感じではありません。水辺に沿って走ると、湾岸線の大きな橋なども見えます(実は後で通ります)。川が流れ込んでいるのは「芦屋川」の河口。もう少し川沿いに遡って、反対側に渡ってみましょう。


邸宅文化はここから
「芦屋」という地名から連想するのは、やはり「高級住宅地」ではないでしょうか。渡った先の平田町は、実は芦屋の邸宅文化が生まれた場所。大正期に関西の企業人・財界人がこぞって邸宅を構え、阪神間モダニズムの礎になったそう。品のある大邸宅が静かに建ち並び、アパートや建て売り分譲と思しき住宅すらも、どことなく香り高い雰囲気を漂わせています。俳人・小説家の高浜虚子の記念館もあり、それと隣接する稲畑邸は、貴重な戦前・昭和初期建築の洋館だそうです。



入り組んだ住宅地の裏路地をくねくね抜けていくと、いつの間にか住所は神戸市に。突き当たった大通りを曲がって橋を渡ると、人工島の深江浜町です。ここには神戸市の中央卸売市場東部市場があります。南下して湾岸線に突き当たったら左に曲がり、歩道から橋に上がっていきましょう。さっき芦屋浜から見たこの橋、けっこう高さがあるので、勾配はプチ峠越えの趣です。それでも高いところからの眺めは、上った甲斐が十分あるもの。神戸市と芦屋市の市境あたりで止まって展望を楽しみましょう。ただ、高所恐怖症の人は若干怖いかも…。


橋を下りると、人工島の南芦屋浜です。阪神間の人工島には珍しく工場や貨物施設の類いが無く、住宅を中心にスポーツ、ホテル、リゾートといった施設で占められています。橋を渡ってすぐ左に回り込み、西側の水辺に沿って4分の1周ほど走るとビーチが開けます。夏場はさぞや賑わうと思われますが、撮影日は冬真っ盛りの平日。人もまばらな公園を抜けていきます。 島の南側では、まだ新しく住宅が造成中です。出来上がっているエリアでは、平地にほぼ新築の一戸建てがずらりと並び、どことなく非現実的な風景を味わえます。少し前に通った平田町が芦屋邸宅の発祥の地とするなら、ここはその「最前線」とでも言うべきでしょうか。

セレブ的リゾートに思いをはせ
いったん島内を北上して、今度は東側の水辺に沿って走りましょう。ヨットハーバーから見えたホテルの真横を抜けて、さらにぐるりと水辺を回り込むと、芦屋マリーナが出現します。「芦屋」のイメージそのままに、大きなクルーザーが何隻も並ぶ光景は、本物のセレブの迫力を堪能できるでしょう。

さて旅も終盤。湾岸線沿いの橋を渡って、西宮浜に戻ります。島の北側の水辺はスポーツエリア。入り江はマリンスポーツの船が行き交い、陸側にはグラウンドやスケートパーク、さらにはBMXコースもあります。休日などはBMXライダーが華麗にジャンプを決めている姿を見られますよ。島の北側の出口に架かる御前浜橋は珍しい可動橋。土曜・休日には実際に開閉する姿を見ることができます。



御前浜橋を渡ってすぐ、駐車場横の路地を右に入ると、行きに見下ろした西宮マリーナと西宮ビーチリゾートの中を通ることができます。リゾートレストランの「CORAL KITCHEN at cove」は季節と日常を忘れられる空間で、目と胃袋に美味しいメニューを楽しめます。スイーツを頬張るもよし、がっつりお肉を頂くもよし。プチセレブ気分を味わいつつ、ゴールの阪神西宮駅はもうすぐ。都会のオアシス巡りの旅、いかがだったでしょうか。


■CORAL KITCHEN at cove
所在地:兵庫県西宮市西波止町1−2 西宮ビーチリゾート TEL:0798-39-8035 営業時間:11:00~23:00(L.O.22:00) 定休日:火曜日 HP:https://coral-kitchen.jp/cove/