2024.1.8
ロードバイクなどのスポーツ用自転車はスポーツの趣味の一環として、また通勤手段としてもますます人気を集めています。スマートなデザインに加え、その走行性能の高さは風と一体になれる爽快感があり、多くの人々がスポーツ用自転車に魅了されています。一方で自転車の交通ルール無視は社会問題化しており、スポーツ用自転車に関しても厳しい目を向ける意見がしばしば見受けられます。スポーツ用自転車は一般的な自転車よりスピードが速く、道路でも目立つ存在です。自動車と同様に交通ルールをよく知り、守ることが常に求められていると考えるべきでしょう。
この記事ではスポーツ用自転車で走行する際に知っておきたい交通ルールを紹介し、安全のために遵守すべきルールを共有します。公道では安全が最優先事項であることを忘れずに、ルールを守って他の交通参加者と調和しながら、健康的で楽しいスポーツ用自転車のライドを楽しみましょう。
道路交通法などに定められる交通ルールは、道路を走るためのガイドラインです。ルールを守ることで、事故に遭う確率を下げることができます。しかしながら、法令で定められる交通ルールは多岐に渡っており、免許や試験のない自転車利用者が全てを把握することは困難な実情もまたありました。
そこで自転車利用者がまず覚えておくべき内容として、2007年に「自転車安全利用五則」が初めて定められました。2022年に内容が改定され、以下の通り、自転車が最低限守るべき交通ルールが簡潔に示されています。
細かい点はいろいろありますが、自転車では上記のルールを守れば大筋OKでしょう。逆に言うならば、上記ルールもしっかり守れていない現状が、残念ながらあるということでもあります。
一方で、自転車に関する交通違反の摘発を強化する流れもあります。自転車が交通ルールを守ることへの社会的要求は高まっているとみるべきでしょう。特にスポーツ用自転車は車道走行でクルマと道路を共用することが多いので、気にしておきたいポイントです。
そもそも、道交法とは何のためにあるのでしょうか。道路を走るためのさまざまなルールが定められていますが、色々難しい部分も少なくありません。また実際の場面では、ルール同士がコンフリクトする(かち合う)場合もあり、そういった際にどう行動すべきか迷うこともあるでしょう。
「自転車は道路のどこを走るのか?」という問題ですが、前項の自転車安全利用五則にある通り、「車道が原則」です。自転車は道交法上では「軽車両」に分類されており、原則として車道を通ることが定められています。また、自転車レーンや自転車専用道路等が設けられていれば、そこを通りましょう。
しかし日本では、昭和のモータリゼーション期以降、当時の道路環境における安全上の理由から、歩行者の通行を妨げない速度・方法で通行することとした上で自転車の歩道通行を可能とする交通規制を導入し、自動車と自転車の分離を図ってきた経緯がありました。このため「自転車は歩道を走るもの」という意識が自転車・自動車利用者を問わず、いまだ多く存在しています。ここは時間をかけて意識を変えていかなければならない部分でしょう。
現在も普通自転車(構造や大きさ等が内閣府令で定める基準内にある自転車)が一定の条件を満たす場合は、例外的に歩道を通行することが可能です。しかし実際のところスポーツ用自転車は走行速度域が高いため(ロードバイクでは平地の巡航速度が時速20〜35km程度)、歩道を走ることは路面の状況や歩行者との関係、自動車や他の自転車との関係も含めて、コントロールが難しくとても危険を伴います。車道を車両の秩序で走行することが、安全で快適なサイクリングにつながります。
車道はクルマなどと同様、左側通行がルールです。車道の右側通行は「逆走」にあたり、とても危険な行為です。
日本では「自転車=歩道を走るもの」と思っている人が多いでしょう。でも実は違います。自転車が走るのは車道。本来、歩道を走ってはいけないんです。まずは走る場所から押さえておきましょう。車道であればどこでもいいというわけではありません。
自転車で道路を走る時に、守らなければならないルールが、道路交通法(道交法)です。しかし運転免許のない自転車では、ルールの知識を持たないまま乗車している人も少なくないようです。自転車に必要な道交法の基礎知識を、簡単なクイズで学んでみましょう。
自転車は車道の左側を通行するのが原則ですが、これを言うと少なからず「車道を走るのは怖いし危ない」「車道の左端を走っていたら、トラックに脇すれすれを抜いていかれて、ガードレールと挟まれそうで怖かった!」というような話を聞きます。
スポーツ用自転車を含む自転車(普通自転車)は「例外的に」歩道も通行できますが、その場合も自由自在に勝手に走って良いわけではありません。自転車が歩道を通行する際に適用される交通ルールはいくつかあり、なかでも「歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければならない」というのが一番大きなものでしょう。徐行というのは、必要があればすぐ停止できる速度であり、ほぼ歩く程度の速さともいわれています。
歩道は歩行者優先であり、歩行者がいるときは歩行者の通行を妨げてはいけません。ベルを鳴らして歩行者を避けさせたり、あるいは徐行せずに歩行者の脇をすり抜けるような走り方もダメです。また歩道内で自転車と歩行者が事故になった場合、自転車側の過失割合が大きくなってしまいます。
ちょっと面倒に思えてきたかもしれません。要するにスポーツ用自転車が歩道を走るということは、なかなかに面倒で、あまりおすすめできないということです。ただ都市部の場合、全く歩道を通行しないということもまた難しいでしょう。歩道を通行する際のルールを知った上で、十分に注意して通行するようにしましょう。
普通自転車は歩道に「自転車通行可」の標識がある場合など、一定の条件を満たした時に例外的に歩道を通行することができますが、その際にもいくつかルールがあります。なかでも「歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければならない」というのが一番大きなものでしょう。
ここはどう走ればればいいの? 正しい走り方ってどうなんだろう? 自転車に乗っていて、ふと疑問を抱いた経験はないでしょうか。この連載は都心部の自転車通勤を想定して、走行時に困惑しそうなシーンを挙げ、正しい交通ルールを学んでいきます。
自転車は、軽車両ですので、原則として車道を走行しなければなりません(道交法17条1項)。しかし、普通自転車は ①自転車通行可の標識や道路標示などが出ている歩道を通行する場合、②児童、幼児、高齢者などで車道通行が危険であると指定されている者が通行する場合、③道路工事や駐車車両などの障害物があって車道を走行することが危険な場合、には歩道を通行することができます
スポーツ用自転車で車道を走る場合、車道全体のどの位置を走るべきか迷うという人がいるかもしれません。近年は自転車レーンだけでなく、道路上に青矢印の「自転車ナビライン」と呼ばれる、自転車の通行すべき部分および進行する方向を明示する標示が施された道路が増えてきました。
では自転車レーンやナビラインの無い道路ではどこを走るのか?となったときに、左端の白線(車道外側線)より外側を通るという人は多いのではないでしょうか。ルール上、この白線の外側がどのような扱いなのかは知っておいた方がよいでしょう。歩道の有無などによって、路側帯、路肩などと呼び名と扱いが変わり、自転車が通れる条件も変わってきます。
この「車道の左側にペイントされている線」は、車道外側線と呼ばれているものですが、この左側の部分は、歩道が設置されていない場合には、路側帯として扱われます。
まず、「そもそも路側帯とは?」という話から始めましょう。路側帯とは、歩道の無い道路端に歩行者等の通行スペースを確保するために、道路にペイントされた線で区切られた部分のことを指します。
スポーツ用自転車などの軽車両は、車道の左端に沿って走るか、複数車線の場合は一番左側の車線を走るというルールになっています。しかし都市部を走っていると、バスなどの停車車両や、路上駐車のクルマに引っかかるケースがたびたびあるのではないでしょうか。これらを抜いてもいいのか?どのように走ればいいのか?といったところも、ルールをしっかり押さえておきたいところです。
複数の車線がある場合、自転車は一番左側の車線を走らなければならないわけですが(道交法20条1項)、例外もあります。
ちなみに自転車は、いわゆる右折レーンを使うことができません。現在の日本の交通ルールにおいては、自転車が交差点を右折する際には、常に二段階右折することが定められています。「二段階右折」という言葉は知っていても、実際にどのように行うか知らない人も少なくないでしょう。正しい二段階右折の行い方を知っておくようにしましょう。
交差点を右折したいが対向車がいたので、右折レーンで対向車が途切れるまで待ってから右折した 〇か×か
重要な交通ルールのひとつに、「信号を守る」というものがあります。もちろん自転車利用者も、信号を守って走行する必要があります。しかし交差点には歩行者用と車両用と別々に信号機が設置されていることがあり、自転車で走っているときに、どちらの信号機に従うべきか迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。
ときどき見かける行為として、歩行者用と車両用のどちらか都合の良い方(青になっている方)に従い進行する、さしずめ“コウモリ自転車”とでもいう走り方があります。しかし自転車がどの信号に従うべきかは、交通ルールで決まっています。自転車は軽車両なので、車両用の信号に従うのが原則です。ただしルール上、例外となる場合や、通行している場所によって解釈が変わる場合があります。改めて信号に関するルールをチェックしておきましょう。
写真の手前側より黄色の矢印方向に進んでいる場合、信号のある十字交差点で、自転車は写真の①〜③どの信号に従うか
自転車は車両であるにも拘わらず、一定の場合に歩道を通行することができますが、歩道通行中の自転車は、歩行者用信号に従うべきなのか、車両用の信号に従うべきなのかどちらなのでしょうか。また、信号には歩行者専用、自転車専用など、対象となる者が指定されている信号もありますが、この場合にはどうなるのでしょうか。
信号を守っているつもりの自転車利用者でも、意外と間違えているのが「停止位置」です。赤信号などで停止する際の停止位置は、信号手前の停止線より前というのがルール。この停止線を越えてから止まっている自転車をしばしば見かけますが、赤信号に対面した状態で停止線を越えるのは「信号無視」に当たるので、必ず停止線より手前で止まるようにしましょう。
また、信号の無い交差点においても、一時停止(止まれ)の標識がある場合、自転車も一時停止をしなくてはいけません。この場合も停止線の手前でしっかり一度停止するようにしましょう。一時停止の標識は、安全上の懸念がある場所に設けられているので、これを無視した場合、単純に事故のリスクが高まるということを理解しておきましょう。
内閣府がまとめた令和2年の自転車事故の傾向を見ると、自転車が関わる交通事故のうち、実に55%が出合い頭衝突となっています。一時停止を行いしっかり左右を確認することで、自転車事故の多くを防げる可能性が高まります。
車道をイラストの下から上方向に進んでいて、十字交差点で信号が赤だった場合、自転車は①〜⑤どの位置で停止するか
交差点に「止まれ」の標識があったので、停止線の手前で一時停止してから通過した 〇か×か
近年、自転車利用時の損害賠償保険加入を、条例で義務化する自治体が増えています。背景として自転車事故による数千万円〜1億円近くという高額賠償事例の増加があり、保険によって被害者・加害者双方を守るねらいがあります。この保険加入義務は在住者だけでなく、旅行などで該当自治体で自転車を利用する場合も適用となります。
2015年に兵庫県が全国で初めて、自転車損害賠償保険等の加入を義務化しました。その後ほかの自治体にも徐々に広がり、2023年4月時点では全国47都道府県のうち、32都道府県で加入が義務化、10都道府県で努力義務化されています。義務化の条例が無いのは岡山県、島根県、山口県、長崎県、沖縄県の5県のみですが、このうち岡山県は岡山市で加入が義務化されています。大都市圏で自転車を利用する際には、保険加入がほぼ必須になったといえるでしょう。
国交省の提案する標準条例案では、自転車保険の加入義務は、「自転車利用者」に課されることとなっています。この自転車利用者とは、その名のとおり自転車を利用する者であり、自転車をその本来の効用に従って使用している者ということになります。
義務化といえば2023年4月から、すべての自転車利用者が、ヘルメットを着用することが努力義務化されました。努力義務ということで罰則はありませんが、ヘルメットを着用せずに事故に遭った場合に、何らかの不利を被る可能性が指摘されています。スポーツ用自転車は走行速度域が高いので、万が一の事故時のリスクも高いです。走行時は必ずヘルメットを被りましょう。
ちなみに着用するヘルメットは「自転車用のヘルメット」である必要があります。工事現場用や、クライミング用などのヘルメットでは、転倒時に頭部が路面に衝突する際の衝撃を緩和する構造ではありませんので注意しましょう。ヘルメットの安全規格はさまざまな種類があり、SGなどの自転車用の安全規格に準拠した製品を必ず着用するようにしましょう。
2023年4月からすべての自転車利用者がヘルメットを着用することが努力義務となりました。道交法では、「自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。」(道交法63条の11第1項)と定めており、「努めなければならない」という書きぶりになっています。
ヘルメット着用によって事故時の頭部への悪影響を減少させる効果があることは知られており、着用は有用なものです。そこで、実際にヘルメットを購入するにあたって気を付けておきたいことをまとめてみました。
保険やヘルメットは自転車利用者に対しての義務化ですが、自転車本体についても法令で定められた必須装備というものがあります。ベルなどの警音器、夜間走行時の前後ライトなどがこれにあたります。
これらは生活に密着したママチャリ(軽快車)では最初から装備されていますが、もともと競技向けであったり趣味性の高い高級スポーツ用自転車では、標準装備されていない場合が少なくありません。このためスポーツ用自転車で公道を走る際には、使用スタイルや好みに合わせて、各種装備を自分で選んで取り付ける必要があります。
どのような装備が必要で、どういった性能基準があるのかチェックしておきましょう。
道路を走る場合の自転車に必須な法定装備としては、ベルなどの警音器と、前後車輪のブレーキ、さらに夜間走行時のライトと尾灯が、それぞれ定められています。
自転車の灯火に関するルールは道交法だけでなく複数の法令にまたがっていますが、都道府県によって異なる部分も含めて、必要な装備とその性能基準をまとめました。
自転車の二人乗りは、スポーツ用自転車ではほぼ無いかと思いますが、子供を乗せたトレーラーをスポーツ用自転車につないで走るといった光景は、どこかで目にしたことがあるかもしれません。二人乗りやペットを乗せての走行も、交通ルール上の決まりがあるので、気になる人はしっかりチェックするようにしましょう。
自転車が2人乗りができるかという点ですが、タンデム用の自転車であれば、都道府県によっては指定場所で2人乗りができます。これとは別に、よく見かける親子の2人乗り、3人乗りですが、その制限は都道府県ごとに異なります。
自転車で交通違反を犯すと、一体どうなるのでしょうか? 例えばクルマの場合、警察に交通違反を取り締まられると、違反点数の加算のほか、軽微な違反であれば通称「青切符」といわれる交通反則告知書が渡され、反則金の支払いを求められます。
自転車の交通違反の取り締まりは、以前は口頭の注意で済まされてきました。しかし2015年6月の道路交通法改正により、ルールを守らない自転車利用者に対して正式に警告を行い、悪質な違反者には講習が義務付けられました。
さらに2022年10月、警視庁が自転車の交通違反に対する取り締まりを強化することを発表しました。これまで、警告で済ませていた違反行為であっても、いわゆる「赤切符」を交付するというものです。「赤切符」は「青切符」よりも重いもので、刑事処罰の対象となる道路交通法違反の行為を行った被疑者に対して交付されます。期日までに反則金を納めれば裁判や前科とはならない青切符に対し、赤切符の交付は、裁判を経て懲役刑や罰金刑などの刑罰を受ける手続きに進むということを示しています。
2023年に入り、警察庁が自転車の違反に対しても青切符を交付できるよう、道交法改正の検討を始めたというニュースが報じられました。自転車の交通違反に関しては、今後も取り締まり方法が大きく見直される流れになっています。「ちょっとなら大丈夫」とは考えず、自転車でも交通ルールをしっかり守って走行するようにしましょう。
2022年10月、自転車の交通違反に対する取り締まりを強化するという警視庁の発表がありました。これまで、警告で済ませていた違反行為であっても、いわゆる赤切符を交付するというものです。
話題の「赤切符」とは何か、クルマで交通違反をした際によく登場する「青切符」との違いと、自転車に「青切符」が今後導入される可能性について、サイクリスト弁護士が解説します。
スポーツサイクル歴約30年の自転車乗りで元ロードレーサー。その昔はTOJやジャパンカップなどを走っていたことも。幅広いレベルに触れたクラブチームでの経験を生かし、自転車スポーツの楽しみ方やテクニックをメディアで紹介しています。ローラーより実走、ヒルクライムより平坦、山中より都市部を走るのが好きです。
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