2020.1.14
これってあり? なし? こんなときはどうする? 自転車に乗っていて、ふとした疑問を抱いた経験はないでしょうか。ここでは自転車にまつわる交通ルールを中心に、Q&A方式で弁護士が素朴な疑問に答えていきます。
A 自転車で事故を起こした場合、まず、事故により負傷した人がいれば救急車を呼ぶなどの救護を行い、そして、警察に事故の発生を通報しなければなりません(道交法72条)。警察官は、事故により人が死傷した場合には、犯罪捜査【重・過失致死傷罪(刑法209条、211条)】としての現場検証を行いますが、単なる物損の場合でも事故の当事者の連絡先を相互に知らせるように、当事者に指示することが多いです。
そこからは、当事者間で話し合いを行い、事故の処理をしなければならないことになります。事故により、相手方を負傷させたり、所持品・車両を損傷させた場合には、過失割合に応じてその損害を賠償しなければなりません。特に相手が歩行者の場合には、過失割合は自転車側が大きくなることが通常です。被害者が死傷した場合には、治療費や慰謝料などを賠償しなければなりません。この賠償額は巨額になることがあることに注意が必要です。話し合いがまとまらなければ、調停や裁判などの紛争解決手続で解決しなければならないことも多いです。
事故により人を死傷させた場合には、重・過失致死傷罪の被疑者として警察や検察の取調べを受けることがあり、起訴されなければ不起訴ということで刑事処罰はありませんが、起訴されれば裁判を受けることになり、有罪になれば、「30万円以下の罰金又は科料」(過失致傷罪の場合)、「50万円以下の罰金」(過失致死罪の場合)、又は「5年以下の懲役もしくは禁こ又は100万円以下の罰金」(重過失致死傷罪の場合)の刑事処罰を受けることがあります。起訴するかしないかは、検察官の専権事項です。
自動車の場合と異なり、自転車は免許制ではないので、事故を起こしたことを理由とする行政処分はありません。
気を付けたいのは、未成年が事故を起こした場合です。おおむね12歳程度以下の子供が事故を起こした場合、被害者が死傷しても子供も親権者も刑事責任を問われることは原則としてありませんが、親権者は被害者に対する賠償責任を負うことになります。12歳程度以上の年齢の子供が事故を起こした場合には、親権者は当然に賠償責任を負うわけではありませんが、自転車の安全な運行のために必要な指示を行っていなかったなど監督責任を適切に果たしていない場合には賠償責任を負います。
2009年弁護士登録。会社関係法務、独占禁止法関係対応、税務対応を中心に取り扱う傍ら、2台のロードバイクを使い分けながら都内往復20kmの自転車通勤を日課とする。久留米大学附設高校卒・東京大学法学部卒・早稲田大学法務研究科卒。
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