2023.4.21
A 自転車という乗り物の特質上、走行中に転倒してしまうことは起こり得ます。転倒した場合、後方から来る自転車と、衝突してしまう事故が起きることも想定されます。この場合、転倒した自転車の運転者は、後方から来て衝突してしまった自転車の運転者の怪我や、物損について賠償する責任があるのでしょうか。
転倒車と後続車の事故は、同一進行方向に進行している自転車同士の事故ということになります。この場合、転倒によって後続車が衝突を避けられない場合かどうかを考慮して、後続車の運転者に多くの割合の責任を認めるという考え方が基本となります。
前方を通行する自転車が特別必要もないのに急ブレーキをかけた結果、後続する自転車が追突したケースで、後続自転車の車間距離の不足や前方不注視を考慮して、後続自転車に70%、前方を通行する自転車に30%の割合で責任を認めた例が過去にあります。追突の事例ですが参考にできる例です。自動車の例でも追突の場合、先行車にも20%の過失を認めるのが基本です。自転車の転倒は、通常起こり得ないことではないことからすると、自動車同士の追突のケースも参考になります。
このように自転車の場合、後続車は前方を通行する自転車が転倒することを予想できる状況であったかどうかによって後続車の責任が上下することはありますが、通常は後続車に多くの賠償責任が生じると考えておいた方がよいでしょう。ただし、転倒車の責任が全くないわけではなく、ある程度の責任があるのは避けられません。
自転車と自動車の事故ですが、自動車が自転車を追い抜こうとした際に、自転車が単独で転倒したために自動車と接触してしまった事故で、後続の自動車は事故の発生を回避できなかったとして自転車に90%の過失を認めた例もあり、転倒を予測ができないものであったかどうかによって、責任の軽重が変わってくることもあることは理解しておいたほうが良いでしょう。
質問のケースでは、自転車仲間がロードバイクに乗って一緒にツーリングに行っている風景が想像できますが、意思疎通がとれている仲間同士の事故ということですと、後続車はより転倒を予測しやすいと言えますから、後続車の過失割合が高まる傾向になるのではないかと思います。また、車間距離を詰めてトレインのような走り方をしていると、後続車の責任がより大きくなることになりますので、その点は留意しておいたほうが良いでしょう。
2009年弁護士登録。会社関係法務、独占禁止法関係対応、税務対応を中心に取り扱う傍ら、2台のロードバイクを使い分けながら都内往復20kmの自転車通勤を日課とする。久留米大学附設高校卒・東京大学法学部卒・早稲田大学法務研究科卒。
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