2023.11.2
A:道路は公共の空間であるため、不特定多数の使用を制限するような行為は許可の対象となります。道路に継続反復して物件や施設を設置する場合には「道路占有許可」(道路法32条)が、また道路を公共の通行以外の目的で使用する場合には「道路使用許可」(道路交通法77条1項)が、それぞれ必要となります。
では、自転車のロードレースなどのイベントを道路で開催する場合にはどうすればよいでしょうか。自転車のロードレースを開催するにあたって、道路上にステージや救護所を設置するような場所については「道路占有許可」が、自転車レースを路上で行う部分については「道路使用許可」が、それぞれ必要ということになります。
自転車ロードレースやマラソンなどのイベントは、長距離・長時間にわたって道路を使用し、道路の機能を損なう影響が大きいため、道路使用許可・道路占有許可の運用にあたっては警察庁から通達が出ており、(1)土休日であること、(2)幹線道路やバス路線道路でないこと、(3)対向車線を通行止めにしないこと、(4)う回路を確保するものであること─などを原則として遵守するものでなければならないことが定められています。
しかし、自転車ロードレースの場合、上記のような通達をすべて遵守するとなると、路面状況や形状がよくないルートを選択せざるを得なかったり、対向車線を通行止めにしないことを求められることから、不意の事故時などの安全確保がおざなりになったり、スポーツとしても、安全性の点からしても無理なコース設定を余儀なくされる場合が考えられます。
特に自転車のロードレースは接触や落車による対向車線へのはみだしが起こりうる競技であることから、(原則として)対向車線を通行止めにしないまま競技を行うのは無理があると考えられます。
しかし、実際のところは地元住民の反対や、それに配慮しようとする警察の対応が考えられ、それらをあらかじめ見越して協議開催側も対向車線の通行止めを求めないように配慮することがあります。その結果、対向車線は法令に基づく規制がかかっていないまま、一般車両が通行可能な状態であるが、主催者が一般車に「お願い」をして通行を避けてもらうというような奇妙な状態が発生してしまうのです。この、いわゆる“自主規制・自主的通行止め”は、あくまで通行しないことを「お願い」するだけなので、一般車両の通行を制限する法的な裏付けはありません。
質問に対するに答えとしては「法的な拘束力はない」ということになるのでしょうが、あいまいな状態で競技イベントを開催することによって責任の所在も運用も不明確になりますし、競技イベントの安全な開催ができなくなる事態が実際に生じていることからしても、自主規制・自主的通行止めというあいまいな状態が生じないよう見直す必要があるものと言えます。
2009年弁護士登録。会社関係法務、独占禁止法関係対応、税務対応を中心に取り扱う傍ら、2台のロードバイクを使い分けながら都内往復20kmの自転車通勤を日課とする。久留米大学附設高校卒・東京大学法学部卒・早稲田大学法務研究科卒。
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