2024.2.6
A:警察庁は1月29日、5回にわたって開催された有識者会議を踏まえた中間報告として、自転車運転者に「交通違反反則通告制度」を導入することをまとめました。これをもとに法改正が今後行われ、いわゆる「青切符」制度が導入されることが確実な状況となりました。
そもそも、この「青切符」制度は、1968年に自動車運転者に対して導入された反則通告制度のことで、それを、自転車にも適用拡大するというものです。反則通告制度では、反則行為として列挙された違反事由があるときは、原則は刑事手続に進みますが、例外的に、違反者が反則金を納付すると、検察官がこれを刑事事件として起訴することができなくなるという制度です。反則金を払わなければ刑事手続が続行するだけですので、反則金を納付することは違反者の任意です。
〈参考記事〉 Q, なぜ自転車の違反はいきなり「赤切符」が切られるの?
この制度本来の導入経緯からしますと、「厳罰化」という意味合いはなく、むしろ刑事罰という重大な結果を避けて、より簡易な反則金の納付で済ませることで膨れ上がった刑事事件を減少させるのが本来の目的でした。しかし、自転車に反則通告制度を導入することについては少し目的が異なります。
もともと、自転車運転者の違反に対して刑事罰を科すという運用は極めて限定的にしか行われていませんでした。より危険な乗り物である自動車の運転者の違反ですら反則金で済ませているのですから、自転車運転者の比較的軽微な違反について刑事罰を科すことは均衡を失するからです。
そこで、自転車運転者の違反に制裁を科す方法として、刑事罰ではなく、反則金を科すことで自転車運転者の違反を本格的に取り締まろうという警察庁の意向があります。これまでしてこなかった取締を新たに行うのですから、その意味では「厳罰化」と言うことができます。
この反則通告制度を自転車運転者に適用することになった背景ですが、警察庁の説明では、「自転車事故が増加の兆しを見せていること」、「交通事故全体が減少する中で自転車事故の割合が上昇していること」、「自転車死傷事故の場合に自転車側の4分の3に法令違反が認められること」などが挙げられており、法令遵守を徹底して事故を減少させるべきであるということが述べられています。
しかし、自転車の利用者や走行距離が増えれば、事故が増えるのはあり得ることで、その点を検証していないのは統計の見方として適切でないとも言えます。
これに対しては有識者会議の中でも、自転車と自動車の事故が大半を占める中、自転車死傷事故の場合に自動車側の法令違反がほぼすべてに認められること、自転車通行ルールに不合理なものや一方的に自転車を危険にさらすものがあること、自転車通行空間や自転車保護のためのルールが未整備であり、自転車が安全に車道を走行できる環境にないこと、などの理由から、道路のグランドデザインからの見直しを求める声もありました。
しかし、全体としては自転車により厳しくルールの遵守を求めるために、反則通告制度(青切符制度)を導入することについては一致した見解となっているようです。
結果として、自転車の取締りは今後厳しくなることは確実で、自転車の運転者は違反をしないように注意することは当然ですが、これを一つの契機として自転車の適切な利用のためにもっと利用者視点の声を上げていくことが求められます。
2009年弁護士登録。会社関係法務、独占禁止法関係対応、税務対応を中心に取り扱う傍ら、2台のロードバイクを使い分けながら都内往復20kmの自転車通勤を日課とする。久留米大学附設高校卒・東京大学法学部卒・早稲田大学法務研究科卒。
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