2024.12.25
A:この1年の間で2023年の法改正以降、急速に「特定小型原動機付自転車」(いわゆる電動キックボード)が普及し、それまで20年ほど前から徐々に普及してきた電動アシスト自転車と入り混じってよく見かけるようになりました。
2023年7月1日から、自転車でもバイクでもない第三のモビリティとして、「特定小型原動機付自転車」という区分を新設する道路交通法の改正が施行されました。特定小型原動機付自転車というのは、いわゆる電動キックボードに代表される電動の乗り物のことです。
さらに、EV版の原動機付自転車(いわゆる原付バイク)も日本のメーカーからリリースされており、主に郵便配達で使われるようになっていますが、その他にも従来の原付の外観とは全く異なる形態の乗り物が多数輸入されているのが現状です。
このうち、自転車の形態をしていて、ペダル、チェーン、ギヤ等の自転車としての機能はありつつも、実際にペダルを足踏みで動かさなくても内蔵のモーター(やエンジン)で自走できる、いわゆる「モペット」という乗り物が売られており、商品説明にも「航続距離」として足踏み不要で走る距離が記載されていたりします。
この「モペット」と呼ばれる、内蔵のモーターやエンジンで自走できるが、ペダルを用いて人力で走行できる装置も備えた乗り物は、外観上は自転車の形態をしていることから、適用されるルールが「自転車」なのか「電動アシスト自転車」なのか、はたまた「バイク」なのかがはっきりしないという問題がありました。
実際には、法令でこれらの乗り物の区分は細かく規制されており、おおむね以下の表のようになっています。
しかし、2024年11月11日施行の道路交通法改正により、搭載している原動機の出力や車体の大きさなどから、「原動機付自転車」とされる車両については、仮にペダルとクランクを用いて人力で動かしたとしても「自転車の運転という扱いをしない」という規定が置かれました(道交法2条1項17号)。つまりモペットは、仮にバッテリーが空になったから人力で漕いで動かしたとしても、『自転車になれる』わけではないので歩道走行はできませんし、自転車専用道も走れないことになります。また、モペットに乗るのであれば、常時ヘルメット着用義務、運転免許の所持、ライト等の保安機器の稼働義務などが課せられます。
すでに、警視庁では、モペットの歩道走行、ヘルメット着用違反、無免許運転などの取締りを開始しています。モペットは非常に高出力の500W、600Wといった電動機を搭載し、最高速度が50km以上出るようなものも売られており、それらが歩道走行をしたり、保安機器もつけないで走ったりすることは危険ですから、規制はやむをえないことかもしれません。
今回の改正で、モペットは自転車としての扱いはされないことが明らかになったので、販売する側も「フル電動自転車」などと、あたかも自転車であるかのような商品名で顧客に誤解を与えるのは避けるべきでしょう。
2009年弁護士登録。会社関係法務、独占禁止法関係対応、税務対応を中心に取り扱う傍ら、2台のロードバイクを使い分けながら都内往復20kmの自転車通勤を日課とする。久留米大学附設高校卒・東京大学法学部卒・早稲田大学法務研究科卒。
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