2018.8.28
風はサイクリングにおいてもっぱらマイナス要素です。
まあ、雨天ならサイクリングそのものを諦めなければなりませんが、風向きのせいで、あるいは風が強いからという理由で出かけることをためらってはいないでしょうか?
「だって、向かい風の中走るのってツラいでしょう」
「ハンドルが取られそうになって怖い思いをしたことあるし」
そんな声が聞こえてきそうです。たしかに強風は敵ではあるのですが、うまく付き合えば味方にもなってくれます。一種の劇薬みたいなもので、用法用量を間違えなければわりと「使える」んです。
香港の中国武術家で截拳道(ジークンドー)を創始したマーシャルアーティスト、ブルース・リーは数々の名言を残していますが、私が好きなのは『燃えよドラゴン』での「Be water, my friend.」という言葉。それに倣って私はこう言いたい。
「Ride like wind, my friend」
サイクリストの持つ習性の一つに「やたら風向きと風速に詳しくなる」があります。この時期は南風が多いとか、風速何メートルなら海岸線はやめておく…といったものです。
まずは風速とサイクリングの適性ですが、
「風速8〜9mがサイクリングする・しない」の分かれ目な気がします。まあ、私は台風直後だろうがなんだろうが、雨さえ降ってなければ走りますが…。
サイクリスト歴が長くなるにつれ、風の中の走り方を体得できてくるのか、それとも感覚が麻痺してくるのか、ちょっとやそっとの強風には動じなくなります。風の中を走るのもさほど苦にも感じなくなるでしょう。
ただ、苦ではなくなると書きましたが、べつに楽に走れているわけではありません。ふつうにキツいし、苦しいです。走るモチベーションがそれを上回るだけです。
個人的には「風速10m」がコース変更するラインになっていまして、河川敷や海沿いのような遮蔽物のない場所は避けます。予定していたとしても急遽変更します。グループライドなら一斉連絡して「●●●はやめて、▲▲▲にしない?」と発案します。つまり、天気予報と同時に風速もちゃんとチェックしておきましょう。
軽いロードバイクは横風に弱く、信じられないかもしれませんがドンと風に持っていかれて土手でコケている方もたまにいます。
ディープリムホイールを履いているとなおさらです。風速によってホイールを履き分けたいところなので、「ディープしか持ってない」とちとキツいかも。リムハイト低めのクリンチャーホイールも1セット持っておくのをお勧めします。
あと、砂浜がある海岸だと飛ばされた砂がバチバチと顔に当たって痛い。口と鼻にも入ってくるわ、アイウェアの隙間からでも容赦なく襲ってくるわ、ラインキープもおちおちできないわで走るどころではなくなります。
では、風に対してなす術はないのか? せっかくの快晴なのに、風が強いだけでライドを諦めなければならないのか?
断固としてNOなのであります。そこでどうするか?
「プランBを持っておく」のです!
簡単な話でして、風に抗うのではなく利用すればいいのです。つまり、追い風として使うわけ。天気同様、風速も風向きも天気予報アプリで確認できます。
冬は北風、春は南風といった季節ごとの特性もありますが、刻々と変化する自然現象ですし、やっぱり予報で確認した方がいいです。
風向きチェックの際は、「ピンポイントで目的地を見る」よりも「地域全体の空気対流を見る」ようにしましょう。エリアの全体的な風の流れを鳥目線でつかむのです。
たとえば都内在住なら、「南関東全域で南風…やや南東に向かって吹くのか…では宇都宮に餃子を食いに行くか」といった具合。住んでいる場所を中心に風の吹く先に目的地を据えれば、風も怖くありません。
「でも、行きは良くても帰りが向かい風じゃん」
安心してください。輪行という手があります。電車で一気に運んでもらえば問題なし。逆に向かい風方向にいきなり輪行し、そこから自宅へと風を使って走ってもいいですね。
ひとつコツというか、地球上の全サイクリストが激しく首を振って同意してくれる「風向きの真理」について触れておきます。
それは、「帰りはきっと追い風になる…という希望的観測はほぼ100%外れる」です。理屈で考えれば、行きが向かい風だったら帰りは追い風じゃないですか。でもなぜか帰宅時の風は常に前から吹いてくる法則があります。
よって復路に希望を持つのではなく、スタートからいきなり追い風に乗りましょう。弁当に例えると大好物のエビフライに最初からかぶりつくイメージですね。取っておいてあとで美味しく…とか考えていると、冷めてまずくなってしまいます。
え?綿密に風向きを調べ、準備万端で出発したけどそれでも向かい風に苦しんだらどうするかですって?
そんなときは「トレーニングだ」「ダイエットと思えば」と切り替えて乗り切ってください(笑)。
写真・文/中山順司
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