2019.4.23
メカトラ事件簿の最終回は、ちょっとレアなトラブルをご紹介しましょう。それは「リアディレーラーのスポーク(=ホイール)への巻き込み」です。え、そんなことが起こりえるの?いったい何が原因で?まず遭遇しないでしょ?と思うでしょう。そのとおり、めったに起きないトラブルです。しかし、起きたら一巻の終わり。なにしろ変速できませんし、ペダルを漕ぐことすらできなくなります。下手をするとスポークも折れてホイールが使い物にならなくなる可能性だってあります。
リアディレーラーがホイールに巻き込まれて、ぐしゃぐしゃに壊れる…。メンタルとお財布へのダメージが計り知れない、想像したくないこのトラブルと予防策について書いてみましょう。
どういうトラブルかと言いますと、リアディレーラーがスポークに接触し、スポークの回転によってリアディレーラーが絡め取られて、その勢いのまま根本からバツンと折れてしまう現象です。
実は、筆者はこのトラブルは未経験です。経験したくもありませんが、人から聞く限り、原因は「リアディレーラーハンガー」が内側に少し曲がっていた…ことが多いそうです。もちろん、巻き込みの直接原因は「リアディレーラーがスポークに接触した」ことなのですが、ふつうに使っていれば接触はしません。当然、そうならないように設計されています。
しかし、ディレーラーハンガーが内側に曲がっていたのなら話は別です。ディレーラーハンガーとは、リアディレーラーとフレームを接続する部分なのですが、最近のロードバイクはフレームと別体の金属パーツになっていることが多く、その場合は脱着・交換が可能です。このパーツ、じつは意外に脆いのです。というか、そもそも脆く&曲がりやすく作られています。理由は、リアディレーラーに力が加えられたときに、フレームやディレーラーの本体にダメージが及ばないようにするためです。
ディレーラーハンガーが内側に曲がっていると、リアディレーラー本体がおのずとスポークに近づいてしまいますね。ディレーラーハンガーが斜めになれば、リアディレーラーも傾きます。外側への傾きならまだいいのですが、内側に入り込みは怖い。これが一定のラインを越えると、何かの拍子にディレーラーがスポークと接触→巻き込み…となるのです。
このトラブルが起こったら、もう自走はムリなので、押して歩くか、家族や友人に迎えに来てもらうか、タクシーを拾って戻るしかありません。山奥を走っている最中に起きたら…想像するだけで身震いしそうです。
ふつう、ディレーラーハンガーは地面に対してまっすぐ直角に取り付けられています。そうすることでカセットスプロケットに沿ってリアディレーラーがキレイに移動できるわけです。
ディレーラーハンガーが内側に曲がったということは、何かしらの外圧が加わったと考えるべき。それが起きるのが以下です。
右側…つまりリアディレーラーを下に倒れるような落車を起こすと、飛び出したリアディレーラーが地面に接触して曲がることはありえます。落車はたいてい勢いよく、しかも人の体重を載せたまま地面にヒットするので、ダメージは大きいと考えるべきでしょう。
ただ、落車が原因でリアディレーラーが破損をすることは意外にも多くありません。なぜなら、リアディレーラーより先に身体が地面に触れるから。筆者は何度も落車(公道&三本ローラー)した経験がありますが、リアディレーラーを破損させたことはおろか、傷ひとつつけたことがありません。
とはいえ、もし落車をしてしまった場合は、リアディレーラーが地面にヒットしていないか、またハンガー部が曲がってしまっていないかは、必ずチェックするようにしましょう。
落車より怖いのが、バイク単体での転倒です。柵や壁に立てかけておいたら、風で煽られて右側にバターン…とさせてしまったことは誰でも一度はあると思うのですが、人の体が守ってくれないぶん、リアディレーラーが地面に接触する可能性は高いです。
あと、駐輪時に縁石にぶつけないようにも気をつけましょう。この程度の接触でも、場合によってはディレーラーハンガーを傷める原因になります。
もうひとつ、リアディレーラーに外圧が加わりやすいのが輪行です。輪行袋に入れるために両輪を外すわけですから、リアディレーラーがむき出しになります。ディレーラーハンガー保護用の金具を取り付けて保護するのは大前提だとして、これだけで完璧ではありません。
駅構内の階段を上り下りするときに細心の注意を払って接触させないのはもちろん、車両内で他の乗客に混じって立っているとき、意図しないキックをリアディレーラーに浴びせられないようディフェンスしてください。筆者は輪行時にもっともケアするのがリアディレーラーでして、人に当たらないよう、他の乗客の脚が接触しないような向きを考えてポジショニングを決めています。
あと、初心者の方にはあまり関係ない話ですが、飛行機輪行したときに荷物置き場でディレーラーハンガーが何かに接触して、目的地で受け取ったときにはすでに曲がっていた(あるいは折れていた)という事故体験談もありました。これを予防するため、手荷物を預ける前にディレーラーハンガーを外しておくツワモノもいます。現地で自分で取り付けるわけですね。
ディレーラーハンガーってそんなに脆いのなら、逆に言えば「曲がったら手でぐいっと戻せばいいじゃん」という理屈も生まれます。その気持はよーく分かるのですが、曲がり方というのは3D状態ですので、目分量で適切に直すことは困難です。また、一度曲がってしまったものを反対に曲げ直すと、ポキッと折れてしまうことも少なくありません。
一度曲がってしまったら、消耗品だと割り切って交換しましょう。その心がけが、リアディレーラーのスポークへの巻き込みを予防してくれます。交換可能なディレーラーハンガーであれば、ほとんどの場合、簡単なネジ留めで交換することができます。
ただ、ディレーラーハンガーは店頭に在庫がないこともあり、タイミングによっては取り寄せとなってしまうこともあります。海外メーカーであれば数週間待たされてしまう、なんて場合もあります。ディレーラーハンガーがなければ修理はできないし、待たされるのは嫌なので(その間にイベントがあるかもだし)、筆者はひとつスペアを買っておき、自宅に保管しています。
幸いにしてまだ使う機会は訪れていないですが、何かあったときに即対応できるので安心できます。安いパーツですので、保険のつもりで予備を持っておきましょう。小さいパーツですので、無くさないようご注意を。
目視で確認できなければ…というか、軽い曲がりだと目視は難しいです。それに、目視でわかったらそれはかなりまずい状況で、ろくに変速しないはずです。ショップにはディレーラーハンガーの取付角度をチェックする器具がありまして、それを使えば一発で判明します。「曲がっているのかな…どうなのかな…」と一人で気を揉むのは時間の無駄。さっさとプロに相談するのが、結局近道です。小さな曲がりであれば元通りに修正できる可能性もあります。
ということで、
と心得てください。
ではでは、皆様が「トラブルと無縁な素敵なサイクリング生活」を送ることができますように…。(^^)
写真・文/中山順司
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