2019.5.17
現在日本各地で催されているヒルクライムレース。峠、山頂への上り一本で競われるこの種目は世界に類を見ない規模で広がりをみせています。距離は10~20km程度、平均勾配は4~8%と山の高さや地形により様々なレイアウトで、競技時間も参加者のペースにより1時間~2時間半程度と、フルタイムワーカーでも挑戦しやすく満足度の高い強度を味わえるのが特徴です。富士山や赤城山などの名峰から名も知らぬ山まで、自転車登山の醍醐味も味わえるのも人気の一つ。参加者の年齢、体格、レベルも幅広く、万人が満足できるヒルクライムレースを紹介してきます。
ヒルクライムの参加人数は数十人から1万人までと幅広く、表彰対象となるカテゴリーも年代別、性別、上級者、車種別に細かく分かれているのが特徴です。基本的にはカテゴリー別に同時スタートをして頂上のゴールに向けて走り出すのがレースの形態で、ほとんどの大会でICチップによる計測を導入しており、誰もが正確な記録を得ることができます。
参加者の多くが目標タイムへの自己更新を目的としているため、大きな駆け引きはなくロードレースやクリテリウムなどの緊張感とは違った温和な雰囲気が親しみ安い特徴でしょう。とはいえ参加者たちは記録への挑戦に余念がなく、体調・体重のコントロールはもちろん、上り専用のギア、超軽量ホイール、シングルギア、軽量パーツなど、重さを重視してカスタマイズを施したバイクを用意する参加者も多く見受けられます。
初めてのエントリーでは特別なトレーニングをせずに挑戦する人もいますが、多くの参加者が平均的な完走タイムを想像して適度な強度で走るトレーニングを行っています。1時間半が目標であれば、週に1度は1時間半、頑張って走ってみるといった具合です。タイムアウトの制限も緩く設定されており、脚を攣るなどのアクシデントやパンクトラブルがない限り、ほとんどの参加者がゴールできるのがヒルクライムレースの人気の理由のひとつといえます。そして一度出したタイムを翌年縮めることを目標にする参加者は非常に多く、1年間の健康・体力のバロメーターになっているようです。
タイムを縮めようと思い始めたら本格的なトレーニングが必要になります。体重・体調のコントロールはもちろん、登坂の勾配でかかる負荷をシミュレーションしたトレーニングが必要になったり、ライディングポジションにも変化が生じたりします。そして大会1カ月前に試走に行くようになれば自身をヒルクライマーと呼べるでしょう。
社会人の参加者にはトレーニングをホームトレーナーで行っている人もいます。1時間程度の高い運動強度のトレーニングを行えば自己ベストが望めることは、ヒルクライムレースが人気の理由のひとつとなっています。心拍計やパワーメーターなどを使って運動強度を割り出すと誰でも本格的なトレーニングを始めることができるでしょう。
ヒルクライムレースは登山同様、天候の変化に対応した準備が必要です。以前紹介した準備品リストを参考に荷物をまとめるとよいでしょう。ヒルクライムレース当日は麓の駐車場からシャトルバスで下山用の荷物がゴール地点まで運ばれます。1000mを超える標高では大きく天候や気温も異なりますので、預けるリュックの中にはロンググローブや冬用のジャージなど十分な防寒着と、ゴール地点で摂取する補給食や飲料などを入れておきましょう。リュックは、背負って下ることを考慮したサイズのものを用意しましょう。
レース前の食事に関しては前日に十分な炭水化物、タンパク質を摂り、当日朝は3時間前であればパスタやおにぎりなど消化が緩やかな主食、1時間前であればパンなど質量が軽く高エネルギーなものがよいでしょう。
レース直前はジェル状のエナジードリンクを1本、レース中に少し飲めるようにボトルにも薄めのエナジードリンクを入れておくと血糖値も安定するでしょう。
大きな落車がほとんどないのもヒルクライムレースの特徴ですが、つづら折れや突然の急勾配でギヤの掛け方を間違えるとフラッと隣のライダーに接触してしまうこともあります。キツくなってから急にギヤを軽くするのではなく、徐々にシフトチェンジをして滑らかなペダリングを心がけましょう。
つづら折れはイン側がキツく、アウト側が緩くなっています。インベタでギヤを変えるタイミングが間に合わない場合はダンシングを併用すると良いでしょう。一方アウト側は勾配の変化も少なく一定のリズムで走ることができます。その時のフィーリングによってコースを選ぶことも重要です。
登り返しは注意が必要で、ギヤを急速に大きく変えると起こりやすいのがチェーン落ちです。急坂の途中でチェーンが落ちてしまうと復帰に大きなロスとなってしまうので、変速は落ち着いて行いましょう。
レースが終わるとある程度まとまった人数で山頂から一斉に下ります。追い込んで上った直後に下るのはリスクも高くなるので、まずは十分な休息を頂上でとってから下山するのが鉄則です。
暖かい格好をしてブレーキの引きシロの確認をしてから下りましょう。ヒルクライムレースで最も多いのが下山時の接触落車です。大事故にも繋がるケースがあるので、他のライダーとの車間は大きくとり、景色を顔で追うことなく下山のルートをしっかり見据えて下りましょう。フロントブレーキは制動力が高いですが手も疲れやすいです。
一方リアブレーキはロックしやすく力加減が重要となります。左右のブレーキタッチに気を遣いながら疲れたら入れ替えてブレーキングを行いましょう。下りのコーナーは思った以上にタイトです。怖いと思ったらクランクを水平に両膝でフレームを挟み、腰を少し引くとよいでしょう。フレームを膝で挟むことで前荷重が大きく軽減します。
前のライダーに不安を感じる場合は、下山途中の休憩場所などでポジションを入れ替えましょう。余裕が持てる環境を作ることが安全に下る大きなポイントとなります。
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