2021.2.12
前回はどういう場合に通勤災害となるのか、考え方や仕組みを見てきました。今回は実際にありそうな9つの出来事を検討し、それが通勤災害に当たるのか当たらないのか詳しく見ていきましょう。
ケース①はその店やトイレに寄るべき理由がないのに、著しく遠回りしているような場合を除き、合理的な経路と認められます。
実際の例では、「経路上の店で、たばこ、雑誌などを購入する場合、駅構内でそばなどを立食する場合」「通勤途中に短時間で食事を取るための行為」が通勤中のものと認められています。
対して、業務外の懇親会に数時間にわたって出席し、飲食したようなケースでは、通勤から逸脱したものと扱われています。散髪は通勤経路上で短時間のものであれば、通勤から逸脱しているとはされないでしょう。
会社に届出た通勤経路とは異なる経路で事故に遭った場合、その事故は通勤災害となるかという問題です。労働災害補償保険法では、「合理的な経路及び方法」で通勤している限り、通勤災害と扱われるので、必ずしも、会社へ届け出た通勤経路かどうかとは関係がありません。
届出と異なる通勤経路で通勤中に事故に遭ってしまった例ですが、通勤災害との関係では合理的な経路及び方法であったとして、通勤災害を認定した例もあります。
③と同様の考え方に基づき、労働災害補償保険法では、「合理的な経路及び方法」で通勤している限り、通勤災害と扱われます。合理的な経路及び方法で自転車通勤をしていれば通勤災害として扱われる可能性が高いといえます。
③と同様の考え方です。労働災害補償保険法では、「合理的な経路及び方法」で通勤している限り、通勤災害と扱われます。合理的な経路及び方法で自転車通勤をしていれば通勤災害として扱われる可能性が高いといえます。
③と同様の考え方に基づき、労働災害補償保険法では、「合理的な経路及び方法」で通勤している限り、通勤災害と扱われます。合理的な経路及び方法で電車通勤をしていれば通勤災害として扱われる可能性が高いといえます。
勤務先によっては、就業規則や服務規律で、私的目的の立ち寄りについて一定の制限のもとにこれを許容するものを定めているところもあるようです。このようなルールは、社用車を使う際のルールとして定められている場合が多いと思われます。自転車通勤者が使用している自転車が社用車の場合には、同じようなルールが適用される場合もあるでしょう。
しかし、そうだからと言って、通勤災害の範囲が定まるわけではありません。上記のようなルールがあったとしても、③と同様の考え方に基づき、労働災害補償保険法では、「合理的な経路及び方法」で通勤している限り、通勤災害と扱われます。合理的な経路及び方法で自転車通勤をしていれば通勤災害として扱われる可能性が高いといえます。
自転車で自宅から取引先や現場に直行し、勤務先の事業所に戻らずに、自宅に直帰するという方も多いと思います。このような場合でも、勤務先から就業場所の指定を受けてそこで勤務するわけですから、直行中や直帰中は通勤に当たります。その通勤途中での事故は通勤災害に当たることになります。
自転車通勤が認められていない場合に自転車通勤を行うということは、会社の服務規律との関係で、服務規律違反ということになりますので、懲戒などのペナルティを受ける可能性があります。もちろん、通勤方法を何にするかは本来個人の自由であると考えると、そもそも自転車通勤を禁止する合理的な根拠がない場合には、会社の規定そのものの有効性が問題となることも考えられます。
このような自転車通勤の禁止の善し悪しと、労災給付の問題は別個に考えるべき問題です。つまり、通勤災害として補償の対象となるかどうかは、やはり、労働者の通勤が「合理的な経路及び方法」であったか否かにより定まります。
2009年弁護士登録。会社関係法務、独占禁止法関係対応、税務対応を中心に取り扱う傍ら、2台のロードバイクを使い分けながら都内往復20kmの自転車通勤を日課とする。久留米大学附設高校卒・東京大学法学部卒・早稲田大学法務研究科卒。
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