2022.12.18
日本の自転車パーツメーカー、シマノが2019年に発売した「GRX」は、世界初のグラベル専用コンポーネント(自転車パーツ群)です。幅広い楽しみ方ができるグラベルロード用とあって、GRXも幅広いシーンとニーズに対応できるコンポになっています。GRXの概要と特徴を解説します。
GRXはグラベルライドに最適化した操作性やギア構成、堅牢さを兼ね備えたコンポーネントとして、ゼロから設計されています。それまでのグラベルロードは、ロードバイク用パーツが中心にアッセンブルされていましたが、オフロードライドでは使い心地や信頼性に難がある部分もありました。GRXはグラベルロードの使用用途を想定し、その幅広い使用シーンに対応できる設計になっています。
ロード用コンポでは「デュラエース」、「アルテグラ」、「105」など、グレードごとの名称がありますが、グラベル用コンポはGRXの名称に集約されています。ただし実際にはGRXの中で「GRX810系」、「GRX600系」、「GRX400系」という、3つのグレードが存在します。グレード間は変速段数や重量などが異なり、もちろん価格も異なります。
GRX810系はロード用でいうとアルテグラ相当で、リア11速(11段変速)仕様。Di2(電動変速モデル)もラインナップします。GRX600系はロード用でいう105相当で、リア11速です。GRX400系はロード用でいうティアグラ相当となり、リア10速でフロントシングルの設定がありません。なおGRX600系のパーツはレバーとクランクセットのみで、ディレイラーやブレーキなど他の部分は、他のグレードと組み合わせることになります。
なおこの記事の執筆時点(2022年12月)ではアルテグラ、105はリア12速の新モデルとなっていますが、現行のGRXは上位グレードも2019年当時の仕様に合わせた11速仕様です。GRX内にラインナップされないパーツ(カセットスプロケット、チェーン、BBなど)もあり、これらは適宜互換性のあるロード用、MTB用のパーツを使用するようになっています。
GRXはフロントギアに48/31Tのダブル、もしくは40T、42Tのシングル仕様が選択可能。オフロードで必須となる軽いギア比までをカバーします。ダブルではロード用のカセットスプロケット(後ろギア)を組み合わせて、きめ細かな変速が可能。シングルはMTB用のカセットを組み合わせて、超ワイドなギア比とシンプルな変速操作を得ることができます。またシングルはフロントギアにチェーン落ちを防ぐ歯先形状を採用。オフロードでのトラブル要因を減らしています。
リアディレイラーは、フロントダブル向けのモデル(ロースプロケット最大34T)と、シングル向け(同42T)の2種類を用意。MTB用ディレイラーの技術であるチェーンスタビライザー機能を搭載し、悪路走行時にチェーンが暴れて脱落することを防止します。フロントチェーンリングは太いタイヤを装着した際の干渉を避けるため、2.5mm外側にオフセットしたデザインを採用しています。
レバーはロード用に比べてトップ部分が長く、またブラケットスペースも広げたデザインを採用。ブラケット部をしっかりホールドできるため、荒れ地でも握った手が離れにくく、オフロードでの安心感をもたらします。レバー形状や支点の位置なども吟味され、より小さい力で確実にブレーキをかけることが可能です。
もちろん、ブレーキとシフティング(変速)が一体化された、デュアルコントロールレバーです。フロントシングル仕様では左レバーに、シフティング機能を省いたレバーだけでなく、ドロッパーポストを操作できるレバーも選択が可能。より激しいオフロードライドに対応します。
ブレーキは全グレードで油圧式ディスクブレーキを採用。アイステクノロジーのフィンによる優れた放熱性能で、荒れた路面や悪天候時でも安定したブレーキ力を発揮します。また、ハンドルのフラット部に取付け可能なサブブレーキレバーもオプションで用意。幅広いニーズに対応します。
また、GRX標準のホイールとして、太いタイヤと相性のよいワイドリム(内径21.6mm)を採用したホイールセットもラインナップしています。サイズは700Cだけでなく、より太いタイヤを装着できる650Bも選ぶことができます。
GRXはグラベルロードの幅広いフィールドに対応する、汎用性の高いコンポーネントになっています。フロントダブル仕様は、ロードバイクに近い高速性能を持ちつつオフロードにも対応。フロントシングル仕様では、よりオフロードに適応した構成を実現します。また3つのグレードにより、さまざまな価格帯のバイクに対応します。
オフロードでの安定感と安心感をもたらす設計は、ツーリングや通勤・通学用途でも価値を発揮するでしょう。自由な発想、自由なフィールドで自転車スポーツを楽しむことができる、GRXはまさにグラベルロードのためのコンポーネントなのです。
スポーツサイクル歴約30年の自転車乗りで元ロードレーサー。その昔はTOJやジャパンカップなどを走っていたことも。幅広いレベルに触れたクラブチームでの経験を生かし、自転車スポーツの楽しみ方やテクニックをメディアで紹介しています。ローラーより実走、ヒルクライムより平坦、山中より都市部を走るのが好きです。
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