2024.10.9
グラベルロードは舗装路からある程度の未舗装路まで走れる、いわば万能自転車です。そんな自転車を購入したなら、当然未舗装路も走ってみたくなりますよね。しかし、日本国内では「グラベルロードで走れる場所が少ない」とよく言われます。もっといえば、それがオフロード系スポーツバイクの普及を阻んでいる最大の要因ともいわれています。
ただ、よくよく考えてみると日本は山の国。国土における森林率は約67%で、3分の2ほどが森林です。この割合はフィンランドとスウェーデンに次ぐ世界3位(面積の算出方法によって諸説あり)。日本は世界有数の森林国なのです。しかも林業が盛んなので、山を縫うように林道が張り巡らされており、未舗装路も多い。グラベルロードで走れる道はたくさんあるはずです。
グラベルロードは舗装路も走れるので、市街地に住んでいる人も舗装路で山まで漕いで行き、山で未舗装路を楽しんで、また舗装路で帰ってくるという使い方ができ、考えようによっては日本に適したスポーツ用自転車とも言えます。
それにも関わらず「走れる場所がない」と言われるのは、日本特有の事情があるためです。
日本の山道は、地権者や林業従事者やその土地で暮らす人たちが、生活や仕事や森林管理のために使っているケースが多く、そこを自転車で走って良い場所か否かを判断するのが難しいのです。
その背景として、1990年代後半に日本でマウンテンバイク(MTB)ブームが巻き起こった際に、無許可で山道に入るMTBが続出し、ハイカーとの事故や地権者とのトラブルが多発、「マウンテンバイク立ち入り禁止」という看板が各地で掲げられるようになってしまいます。その当時の問題が尾を引き、いまでも「自転車NG」という場所は多いそうです。
東京近郊でも、多摩川や荒川などの大きな河川にはサイクリングロードの横に砂利道が併設されていることが多く、グラベルロードデビューには最適ですが、公園になっている場所は自転車禁止になっているケースもあります。
日本にはグラベルロードに適した道がたくさんあるのに、「どこを走って良いのか分からない」「走る場所がない」と言われるのは、こんな背景があるためです。
ではどうすればグラベルロードを楽しめるのか。詳しい人に聞けば良いのです。それには、自転車のコミュニティに参加するのが近道です。
今はたくさんの自転車コミュニティがあります。有料、無料のものもありますし、規約がある組織的なものや「今度一緒に走りにいきますか」程度のゆるいもの。また、ロードバイクメインのもの、グラベルロード主体のもの。ハードな練習を目的としたコミュニティや、ゆっくりとしたサイクリングを楽しむコミュニティまで様々です。
どんなコミュニティでも良いですが、一番確実なのはショップのコミュニティに参加するのが良いでしょう。地元のショップなら、「あそこのグラベルは地主の◯◯さんと話がついてるから走れますよ」なんてこともよくあります。このような情報はインターネットではオープンになりにくく、実際にコミュニティに参加しないと得られません。
ぜひショップを訪れたときは、店員さんに「このあたりにいいグラベルはありませんか?」と聞いてみてください。そこから、思いもよらない自転車ライフが始まるかもしれません。
自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。
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