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グラベルロードのススメ<6>

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グラベルライドを安全に楽しむための4つのポイント
グラベルロードのススメ<6>

 自転車のコミュニティに参加して、走れるグラベルコースも分かってくると、一人で走りに行く機会も増えてくるでしょう。本連載の最終回は、グラベルロードでオフロードを走る際のルールとマナーについてお伝えします。

 山道を走るときは、一般公道とは違う独自のルールとマナーが必要となります。といっても、難しいことではありません。内容を大別すると、①怪我や事故を防ぐ②他人に迷惑をかけない③自然を守る④ローカルルールの遵守─の4点です。最初の3つは言わば人として当たり前のこと。最後の1つはコミュニティから学べばOKです。

この記事の内容

怪我や事故を防ぐ備えと注意点

 オフロード走行はどうしても転倒の可能性が高くなるため、ヘルメットはもちろん、グローブも必須。木の枝などが目に当たることもあるため、アイウエアも必要です。走りに行く場所が山深い場合は晴れていても薄暗いので、レンズの色は薄めが良いでしょう。

 また、舗装路とは違ってバイクに大きな衝撃が加わることもあり、車体には舗装路とは比べ物にならないほどのストレスがかかります。各パーツの組み付けなど、整備状態は完璧にしておきましょう。パンクの可能性も高くなるので、予備チューブやパンク修理キットも忘れずに携行してください。

 山は動物の住処でもあります。里山を走っていると、鹿や猿、狸などに出会うことがよくありますが、とくに怖いのは熊。近年は熊の生息地がどんどん人家の方に広がってきており、東京都内の中山間地域でも目撃されています。山に入る場合は、熊の目撃情報をチェックするように注意しましょう。

 そしてなにより、無理をしてスピードを出さないことです(これはロードバイクにも言えることですが)。本格的なオフロードになると、木の根っこや大きな岩、大きな段差などが出現することも少なくありません。つい挑戦してみたくなるものですし、そのチャレンジが面白かったりもするのですが、「怖い」と感じたら絶対に無理をしないように。

 ソロライドで怪我をしてしまうとその後が大変です。舗装路とは違って人気が少なく、場所によっては携帯電話が圏外のこともあります。自力で動けなくなれば救助にも時間を要するでしょう。グラベルライドはレースではありません。「速く走る」ことではなく、「楽しむ」ことが目的です。

山道では歩行者に対して自転車が「強者」

 山道は車道とは違って「クルマや自転車のための道ではない」ということを念頭に置いておいてください。車道では自転車がクルマに対して「弱者」になりますが、山道では歩行者に対して自転車が「強者」になります。

 したがって「歩行者優先」を大前提とすること。歩行者とすれ違うときは自転車から降り、追い抜く際は広い場所で「自転車通ります」とひと声かけ、歩くスピード+αくらいまでスピードを落とすようにしてください。休日や行楽シーズンなど、歩行者が多い時期は避けるなどの配慮も必要です。

 どれほどスピードを落としても、ヘルメットとアイウエアを着用したライダーが速そうなスポーツバイクに乗っていきなり現れたら、誰でも威圧感を抱いてしまうものです。歩行者と会ったら挨拶をするなど、こちらからイメージを和らげることも大切です。

道を“楽しませてもらっている”意識で

 植物や木を傷つけないことはもちろん、タイヤをわざと滑らせてコースを痛めないように注意をしましょう。タイヤの跡は、水の流れを変え、山道を破壊してしまうことにもつながります。あくまで、地元の方々が仕事や作業のために使っている道で楽しませてもらっている立場であることを忘れないようにしましょう。

 これ以外にも、「○時~○時までは農作業車が行き来するから避けてほしい」「場所の詳細を他人に公開しないでほしい」など、ローカル特有のルールがあったりします。また、コースの情報をネット上に公開したり、場所が分かる写真をアップしたりすることはマナー違反になることもありますので要注意です。

 色々と書きましたが、これらの点に注意すれば、日本でもグラベルロードを楽しむことができます。これまでロードバイク一筋だった僕は、グラベルロードに乗り始めて自転車の楽しみが2倍に広がりました。皆さんもぜひグラベルロードで自転車の世界を広げてみてください。

文: 安井行生(やすい・ゆきお)

自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。

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