2020.11.3
ヒルクライムに挑戦することでロードバイクのスキルを磨き、新しいことに挑戦する楽しさを知ってもらう連載「ロードバイクをより楽しむためのヒルクライム講座」が始まります。初回はヒルクライムの魅力について。山を上るのは辛いイメージがあるけれど、どのようなことが楽しいのだろう。そのような素朴な疑問に答える内容です。(文・菅洋介 / 写真・石川海璃)
昨今、街中を颯爽と駆け抜けるロードバイクを見かけるのは、珍しいことではなくなってきました。ロードバイクはドロップハンドル、細身のタイヤ、シンプルで軽量な構造のフレームなどを特徴とし、走りは軽快です。
その軽快な走行性能を体感できるのは平地だけにとどまらず、上りや下りにおいても自転車の中で随一のパフォーマンスを発揮します。週末にロードバイクに乗って、山へ向かうサイクリストが多いのは、ロードバイクのパフォーマンスを発揮したいという理由からでしょう。
サイクリストはなぜヒルクライムに挑戦するのか。きっかけは街中にある坂道かもしれません。推進力の高いロードバイク用タイヤ、多段変速のギヤ、リズムのとりやすいハンドル操作など、数々の特徴を持つロードバイクに乗ると、これまで自転車に抱いていた感覚…、近所の上り坂に対する気の重い印象が一変します。坂道を驚くほどスピーディーに上れてしまう快感が得られるでしょう。
「この坂は楽だった、ではあの長い坂も…」という体験が、これまで思いもよらなかった坂道への探究心になり、峠道に挑戦するための出発点となっていきます。ロードバイクに乗って坂道を越える快感と以前より速く走れた喜びは、それまで移動手段でしかなかった自転車に、スポーツの楽しさを感じるようになっていくでしょう。
ロードバイクで平坦な5kmの道を走るのはあっという間ですが、一方のヒルクライムはその5kmを時間をかけて走れます。ギアを踏みしめる音を聞きながら坂を上っていると、生い茂った木々、谷や河川を挟む橋から見える景色は、雄大で美しいことに気付きます。また木々の揺れる音や鳥の鳴き声、仲間と走っていればその息づかいなど、平坦な道では気がつかないような音に耳を傾けられます。
多段ギヤを使いこなしてペダリングのリズムを保ち、ロードバイクと人車一体となりながらたどり着いた山頂は、驚くほどの美しい景色が待っていることでしょう。
10kmも上れば気温や景色が変わり、20kmも上ると春でも雪に囲まれる体験も珍しくありません。頑張って上った先にある特別な景色こそ、ヒルクライムの醍醐味といってよいでしょう。
ヒルクライムの醍醐味を味わうと、もう一度山に挑戦したくなります。「一度上った山にもう一度挑戦する」のは、お気に入りの眺望や達成感を再び味わいたいという想いからきます。再挑戦するときは、前回上ったときとコンディションの比較が重要です。比較する中で「前回よりもギヤの使い方が上手くなった! 力が付いた!」など、自分自身のちょっとした変化を理解できるようになるでしょう。
また、自然や気候、四季折々の変化を自分の脚でゆっくりと上る中で全身で感じられるでしょう。ヒルクライムは徒歩の登山で味わう感覚を手軽に短い時間で体感できます。
ヒルクライムの道中、サイクリストとすれ違う機会があるでしょう。ランニングほど人口は多くありませんが、ヒルクライムを好むサイクリストは、近年確実に増えている傾向にあります。頂上で同じ山を上った方々と巡り合ったときの会話は弾むものです。「頂上に着くまで何分かかった! この機材は楽ですね」と話をしているうちに、自分のロードバイクもヒルクライム仕様に…と考えるのも十分にあり得ます。
ヒルクライムに挑戦する前の下調べでウェブサイトを検索すると、どの峠にもプロフィールやレビューが書かれている記事にたどり着きます。そうした記事を読み、少しずつヒルクライムに詳しくなった頃、ロードバイクを持つ友人ができれば、きっと「今度あの山にいこうよ!」という話をすることでしょう。
撮影協力:株式会社シマノ
管洋介(SUGA YOSUKE)
AVENTURA CYCLING代表、有限会社デボ代表取締役社長。競技歴22年のベテランロード選手。国内外で50ステージレースを経験。近年は長い経験を生かしてメディア出演も多く、自転車専門誌のレギュラーキャストとして、モデル、インプレッション、ライディングレクチャー、好評の連載を持つ。自転車ライディング講師として イベント他、様々なコミュニティでのテクニ カルコーチ務める。2017年よりAVENTURA CYCLING を立ち上げ、 自転車界の明るい未来をリードしていく。
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