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ヒルクライムスポットのアクセス方法と事前準備

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ロードバイクをより楽しむためのヒルクライム講座<4>
ヒルクライムスポットのアクセス方法と事前準備

 「週末楽しみにしているヒルクライム、現地までの移動はどうしよう?」「自転車を電車やバスに持ち込む輪行も体験してみたい」「家から見えるあの山なら自走でいけるかもしれない…」などなど、ヒルクライムスポットへ向かう手段は様々です。今回はそれぞれのアクセス方法について工夫や注意点、事前準備を紹介していきます。(文・菅洋介 / 写真・石川海璃)

ヒルクライムスポットへのアクセス方法や事前準備を紹介します

自走で目的地に行く場合のポイント

 自走は時間に余裕があり、目的地までの往復距離が自分の体力の許容範囲であれば、手軽に移動できます。少し遠くに見えていた山も、道を繋いで山頂までたどり着いたときの達成感は格別です。

 しかし、自走するにあたっては体力の消耗、空腹、パンクなど自走で起こりうる様々な状況を懸念して準備をしておくことがポイントです。すべてのライドにも言えますが、山を上る目的とは別に「起点自宅、宿まで無事に走って戻ってくること」を目標に計画を立てるといいでしょう。特に気を付けたいのがタイムスケジュールの組み立て方です。帰路のペースダウンを考えてタイムスケジュールを組みましょう。

 推進力に優れたロードバイクは、平地で簡単に時速20km台のスピードを出せてしまう乗り物ですが、山では時速20kmを下回ることもあります。平地を抜けて山を往復するコースのタイムスケジュールを考える場合、起点から山麓までの区間と山の区間を分けて計算するといいでしょう。

 ここで注意したいのが時間を逆算する場合の平均スピードです。例えば平地の一区間を時速20kmで楽に走れるライダーでも、走行距離や交通環境、立寄りの時間ロス、天候を考慮すると平均時速をマイナス5kmで算出するのが無難でしょう。

 試しに平地区間60kmを15km/h、斜度3%の5kmの上りを10km/h、5kmの下り坂を30km/hで走ると仮定して、全行程70kmのヒルクライムの走行時間を考えてみます。

例:全行程70kmの自走ヒルクライム1本のスケジュール(平地一区間を20km/hで巡航できる場合)

起点→山麓まで30km=2時間(15km/h)
3% 上り5km=30分(10km/h)
3% 下り5km=10分(30km/h)
山麓→起点まで30km=2時間(15km/h)

 この場合、平地で4時間、上りで30分、下りで10分、トータルで4時間40分かかります。これに休憩時間を足して、全体のスケジュールを算出しましょう。

 計画を練ってライドを重ねて行く度にこの計算が上手になります。また適切にスケジュール管理するのをヒルクライムの目標にすると楽しさも増すことでしょう。

輪行する場合の注意点

 近年、電車で輪行するのは静かなブームとなっています。交通機関を繋いでのヒルクライム旅は、自走では行けない場所にもアクセスができて活動のフィールドが一気に広がるでしょう。しかし輪行の場合、持ち物や注意点がいくつかあります。

 自転車を分解・組み立てる場合は、歩行者の通路から外れた駅の壁や柱を背に作業を行うといいでしょう。その際スペースを最小限にすることを心がけましょう。また輪行する場合は公共交通機関各社のルールを守りましょう。規定で荷物のサイズが定められている場合があります。輪行袋からハンドルなどがはみ出るのはNGです。

 輪行は人の混み合う時間帯を避けて、置き場所は先頭及び最後尾の車両の端に置くのが通例です。電車によっては大きな荷物スペースがあったり、時間帯によって自転車を輪行袋なしで乗せられる車両を設けている場合もあります。

 またコインロッカーがある駅でしたら余分な荷物を預けて走り出すのをおススメします。事前に時刻表、電車の種類、駅構内の情報チェックをしておくといいでしょう。

輪行のポイントまとめ

① 輪行作業スペースは最小限に通路から外れて行う
② 電車は混み合う時間を避けて、最端車両を選ぶ
③ 事前に時刻表・電車の種類・駅構内の情報をチェックしておく

 ここからは輪行袋の種類やおすすめのアイテムを紹介します。輪行袋の種類は色々とありますが、おすすめなのが薄手の輪行袋です。電車輪行の場合はあまりかさばらないので、車内のスペースを確保する意味でも便利です。

 輪行袋に自転車を収納する場合、ホイールやハンドルなどはタイラップやヒモ、ビニールテープなどで縛っておくとまとまりがいいでしょう。駅にロッカーがあるなら、利用することを前提に自転車の梱包にひと手間加えるといいかもしれません。段ボールなどをホイールとフレームの間、ギヤに被せておけば、愛車を傷つけずに輪行できるでしょう。

自動車で行く場合に注意したいこと

 仲間と乗り合いでヒルクライムに向かうには自動車が便利でしょう。自走や輪行と違い、大型のフロアポンプや工具セットも携行できるのは大きなメリットです。

 山に向かう道は都内に比べると人通りや車通りが少ないですが、住民の生活路であることを考えた行動をとりましょう。特に長時間の駐車が許可されていない道の駅や公共施設の無許可利用は、苦情も出ているので注意が必要です。有料駐車場や開放されている無料駐車場の有無を事前にチェックしておくといいでしょう。

トラブルに備えた用意をしよう

 ライドをするにあたっては、荷物を最小限に留め、最低限トラブルに対応できる準備をしましょう。

① トラブル対応のグッズはサドルバッグへ収納

 パンクトラブルを未然に防ぐには事前にタイヤの表面のすり減り、亀裂や穴などのチェックを行いましょう。チューブの入ったクリンチャーのほか、チューブレス、チューブラーなど仕様に選択がありますが、メンテナンスの利便性を考えればクリンチャーをおすすめします。

 本格的なパンク対策としてはチューブの中にシーラントといわれるパンク防止剤を入れておくと安心ですが、予備チューブとパンク修理材セットを持参するのが無難でしょう。アクシデントでタイヤに亀裂が入った場合はバーテープを止めているビニールテープなどでタイヤ裏側から応急処置といて補修することもあります。

 自転車工具でも主要なアーレンキーとドライバー、チェーン切りがコンパクトかつセットになった携帯マルチツールが便利です。サドルバッグにパンク修理セットと一緒に収納しておくのがいいでしょう。携帯ポンプはボトルケージの脇に装着できるタイプが主流です。空気の入れ口をアメリカンバルブに変える変換バルブを持っていると、ガソリンスタンドなどでも応急的に空気を入れることができます。

サドルバッグに予備チューブ、 パンク修理キット、 携帯マルチツールなどを入れておきましょう

準備するもの(サドルバッグ・ボトルケージに収納が便利なもの)

◯ 予備チューブ(タイヤサイズ、バルブの長さに注意)
◯ パンク修理キット(パッチとタイヤレバーのセット)
◯ 携帯マルチツール
◯ 携帯ポンプ(バイクに装着)
◯ 前後ライト(バイク・ヘルメットなどに装着)
△ ポケット輪行袋(ボトルケージなどに収納)
△ シーラント
△ ビニールテープ
△ 変換バルブ(仏式バルブ→米式バルブ)

〇 =必要なもの
△ =あると便利なもの
② ジャージのポケットの中身も最小限にまとめよう

 あれもこれもと荷物が多くなってしまうのも自走では困りもの。ジャージのポケットに薄手のウィンドブレーカーを入れ、ジップロックなどのファスナー付きのビニールパックに保険証・エマージェンシーカード・小さな財布・携帯電話を入れて纏めておくと雨や汗などの侵入を防げます。補給食も前回紹介した様なコンパクトで十分なカロリーを摂取できるものがいいでしょう。

ポケットの中に入れるもの

◯ 薄手のウィンドブレーカー
◯ ビニールパック(保険証・エマージェンシーカード・小さな財布・携帯電話)
◯ 補給食

撮影協力:株式会社シマノ

管洋介(SUGA YOSUKE)
AVENTURA CYCLING代表、有限会社デボ代表取締役社長。競技歴22年のベテランロード選手。国内外で50ステージレースを経験。近年は長い経験を生かしてメディア出演も多く、自転車専門誌のレギュラーキャストとして、モデル、インプレッション、ライディングレクチャー、好評の連載を持つ。自転車ライディング講師として イベント他、様々なコミュニティでのテクニ カルコーチ務める。2017年よりAVENTURA CYCLING を立ち上げ、 自転車界の明るい未来をリードしていく。