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ヒルクライムで楽に走るための呼吸法と乗車姿勢

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ロードバイクをより楽しむためのヒルクライム講座<5>
ヒルクライムで楽に走るための呼吸法と乗車姿勢

 ヒルクライムを少しでも楽に、速く走るためにはテクニックを身に付けることが欠かせません。今回は呼吸が楽になる方法とその乗車姿勢について解説していきます。(文・菅洋介 / 写真・石川海璃)

ヒルクライムで重要になる呼吸が楽になる方法とその乗車姿勢を解説します

坂道におけるロードバイクの武器

 平地では息が切れないのに、上りに入ると途端に「ゼェゼェハァハァ…」。誰しもが近所の坂道でこんな経験をしたことがあるはずです。短い坂道はロードバイクの性能を活かして比較的楽に走れた! しかし、1km、2km…と登坂が続けばそうはいきません。

 坂道では自らの体重が負荷となります。そして前進するのに勾配がキツくなればなるほど、進むのに大きな力が必要となります。これは歩行でもロードバイクに乗って走るのでも同じ原理です。しかしロードバイクには多段変速という武器があります。坂道を上るスピードが落ちてもギヤを調節すれば、進む距離は短くなりますが、小さい力で前へ進めます。

呼吸の正しいリズムは?

 呼吸が乱れる大きな原因はリズムです。ランニングでは1分間の歩数はピッチ(step per minute、spm)と呼ばれ、180歩(180spm)で走るのが目安とされています。自転車はクランクが1分間に回転する数を表すケイデンス(revolution per minute、rpm)が用いられ、平地の場合は1分間に90回転(90rpm)を超えるのが目安とされています。ケイデンスはクランク一回転で左右の足が一回ずつ上下しているので、ピッチとケイデンスはほぼ同じと考えていいでしょう。呼吸に当てはめると、ランニングでは4歩で1呼吸がアベレージであることから、自転車で一定ペースで走るには2回転で1呼吸すればよいと計算できます。

 しかし、自転車は惰性が大きく味方し、上りではギヤを使い分ければペースを自在に操れるので、呼吸ベースでリズムを細かく整えるよりは、ペダルを踏んだ結果、呼吸が整うという感覚で向き合う方がベターです。

 この感覚を掴むのは難しくありません。まだ余裕のある坂道で呼吸を少し細めて走ってみましょう。身体が負荷とリズムに応じて丁度良い呼吸を求めてくるのが体感できます。これに素直に従うのが個人差を含めてベストな呼吸のリズムだということです。

呼吸はフォームが大切

 ロードバイクに乗る上で重要なのが呼吸をしやすい姿勢(フォーム)です。日常生活でフォームを意識してみましょう。椅子に座った状態で、背中を丸めると呼吸がしづらいのが体感できます。一方、胸を起こしてお腹が伸びるとどうでしょうか。呼吸しやすくなるのが分ります。

 ロードバイクに乗っていると、サドルに腰を据えようとする意識からハンドルをより遠いものにしてしまい、ハンドルに手を伸ばして背中を丸めやすいフォームに陥りがちです。

フォームの悪い例。お腹と背中が丸まってしまい、呼吸がしにくくなります

 このフォームはサドルに座るという点で言えば間違いないのですが、呼吸をする姿勢としてはマイナスです。サドルから身体を起こすというイメージでブラケットを小指薬指中心に構えて、肘は“浅い「く」の字”にハンドルを脇で引きつけてみましょう。するとサドルに腰を据えていたフォームは胸が起きてお腹は伸び、たちまち呼吸がしやすくなるでしょう。

いいフォームの例。胸が起きてお腹は伸び、呼吸がしやすくなります

 自転車をこぐときは、ハンドルを脇で引きつけたタイミングで腿をお腹から押し下げてペダルを踏み、逆側の足が上がってきたタイミングでもう一度ハンドルを引いて、ペダルを踏みます。無理のないピッチで続けていけることがポイントです。繰り返すうちに呼吸のリズムも自然と付いてくるでしょう。

 ハンドルを引きつけやすいポジションはハンドルの高さやリーチによっても異なります。手でブラケットを握ったときに、胸を起こして肘が軽く曲がる程度の距離でバイクをセッティングするのも重要なポイントとなります。

 次回は少しでも楽に効率よく上りたいというテーマで、重要な回転数とギヤの関係についてお話します。


 
撮影協力:株式会社シマノ

管洋介(SUGA YOSUKE)
AVENTURA CYCLING代表、有限会社デボ代表取締役社長。競技歴22年のベテランロード選手。国内外で50ステージレースを経験。近年は長い経験を生かしてメディア出演も多く、自転車専門誌のレギュラーキャストとして、モデル、インプレッション、ライディングレクチャー、好評の連載を持つ。自転車ライディング講師として イベント他、様々なコミュニティでのテクニ カルコーチ務める。2017年よりAVENTURA CYCLING を立ち上げ、 自転車界の明るい未来をリードしていく。