2023.12.27
この連載ではこれまで、「なぜサドルは細いのか」、このページでは「なぜサドルは高いのか」を説明してきました。今度はサドルの種類について説明します。ロードバイク用のサドルにはいろんな種類があります。全長が長いものと短いもの、幅が広いものと狭いもの、柔らかいものと硬いもの、穴が開いているものとそうでないもの、湾曲しているものと平面的なもの…。同じサドルメーカー内でも、様々なタイプのサドルを作り分けています。中には、同じシリーズのサドルで数種類の幅をラインナップしているメーカーもあります。
一言で言うなら、それは個人個人に合わせるためです。「スピードを出すためには細くて硬い方が良い」といっても、骨盤の幅、座骨の幅、腰周りの筋肉や脂肪の付き方と量、ポジション、乗り方、ペダリングの仕方など、まさに千差万別十人十色。
例えばTシャツやパーカーなら、サイズやフィット感が厳密に合っていなくても、着ることは可能です。しかしロードバイクのサドルは、細くて硬いが故に、体形や乗り方に合っていないとピンポイントで圧力がかかり、お尻や尿道部分の痛みにつながることが多くなります。
しかし残念なことに、万人に当てはまる正解はありません。先ほど、千差万別十人十色と書きましたが、それがゆえに正解も人それぞれ。体の柔軟性や体形、骨格などからお勧めのサドルを提唱してくれるフィッティングサービスをサドルメーカーが提供していることもありますが、結局は使ってみないとなんとも言えないというのがホントのところです。サイクリストの中には何年経っても理想のサドルと巡り合えない人も多くおり、「サドル探しの旅」「サドル沼」などと言われることもあります。
それに、実はここが一番重要なことなのですが、自転車に正しく乗れていないと、正しいサドル選びはできません。間違った乗り方のままサドルを選んでも、それは「間違った乗り方に合ったサドル」が見つかるだけなのです。それは本当の正しいサドル選びにはならないどころか、間違った乗り方を助長することにもなります。フォームが少し変われば、骨盤角度が変わり、サドルと接する場所も変わりますから。要するに、本当に正しサドル選びをしようとすると、正しい乗り方を見つけなければならないということです。
先に挙げた記事にも書いたことですが、「正しいサドル選び」の一番の近道は、やっぱり自転車のプロがいるショップに相談することでしょう。乗り方を含めて相談に乗ってくれるはずです。ショップによっては、ある程度の期間自分のバイクに付けて試せるレンタルサドルを用意しているところもあります。
「ロードバイクってそこまでしないとちゃんと乗れないの? 面倒で難しそう」─。
そう思われますか?
その通り。でも、難しいからこそ、ロードバイクは面白いんです。5分でクリアできるゲームなんてつまらないですからね。
自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。
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