2025.1.6
外気温が低いなかでのサイクリングは、心身へのダメージは相当なもの。ロードバイクは速度が出やすく、体に当たる風も厳しいため突き刺さるような寒さがあります。冬こそウェア選びにこだわり、寒さに負けない快適なライドを楽しみましょう!
寒さを防ぐ単純な手立ては厚着をすることですが、それだけではNGです。寒さには種類があり、代表的なもので「汗冷え」があります。サイクリングでは通常、風を体で受けているため、適度な冷却効果があり、発汗量も調整されています。汗をかいたとしても、春〜秋までのウェアであれば自然と乾いてしまいます。しかし、過度な厚着をすることで、汗をかきすぎてしまい、さらに汗の逃げ場も失うため、一番体に近いインナーウェアがびしゃびしゃに濡れてしまい、体温を下げてしまう恐れがあります。
また、気温に対して暖かすぎるウェアを着ることも同様です。例えばモコモコのダウンジャケットを着るとします。保温性が高いため確かに暖かいのですが、サイクリングは運動なので、体から発する熱で想定以上に暑くなりがちです。脱いだとしても、限られたスペースに収納するか、帰宅までダウンジャケットを着用する必要が出てきます。
これらはビギナーにありがちなミスですが、真冬のサイクリング中に遭遇するとダメージが大きく、冬のライドに嫌気が差してしまうかもしれません。しかし、ウェアを選ぶ適切な知識があれば備えられるはずです。
冬用のサイクリングウェアには購入時、使用に適した気温帯がタグなどに表記されていることが多くあります。それを参考にまず「長袖インナー」、「ジャケット」、「ウィンドブレーカー」または「ベスト(ジレ)」を用意しましょう。
インナーウェアは長袖タイプがベターです。後述しますが、手先の冷えにも直結します。体に直接触れるウェアなので、発汗しても汗が逃げやすい透湿性が高いものほどよいでしょう。
ジャケットは製品の推奨適用気温が低すぎるものを避けた方が無難です。仮に気温が7度前後だとして、氷点下に耐えられる厳冬期向けの製品だと少々オーバースペックとなり、前述の暑くなりすぎるといったデメリットが生じる可能性もあります。筆者の場合はメーカーが想定している気温よりも少しだけ暖かい、薄手のジャケットを選ぶようにしています。
ここでポイントになるのが3枚目のウィンドブレーカー、またはベスト(ジレ)です。ともにジャケットの上に着用するもので、ジャケットよりは薄手の素材になります。走り出しは着用し、体が温まってきたら脱いで背中のポケットにしまう、という具合に調整役として機能します。寒さが厳しい場合はウィンドブレーカーの上からベストを着て、合計4枚でのコーディネートも考えられますね。大事なのは薄手のウェアを重ね着して、その時の気温や体温に合わせて脱ぎ着することです。
ペダリングで動かし続ける脚ですが、風が当たり続けるため防風性には気をつけたいところ。特に膝は冷えると関節を痛めることもあるため、冬場では特にデリケートに扱った方がよいと考えます。筆者の場合は気温が15度を下回った場合、ニーウォーマーやレッグウォーマーなどで膝が冷えないように心がけています。
冬場のサイクリングではタイツの使用が一般的です。ジャケットと同様に製品の推奨適用気温が記載されているため、その表示通りに選ぶとよいでしょう。以前は生地が厚く、ゴワゴワして履きづらかったり、ペダリングがしづらい製品もありましたが、近年では薄手かつストレッチ性に優れた製品がたくさん登場しています。
特に冬場のライドで厳しいのが末端の冷えです。足先や指先、耳などが千切れるほどの痛みを感じたという読者の方も多いのではないでしょうか。そんな時に活躍するのがグローブやシューズカバー、ネックウォーマーです。
グローブを選ぶ際のポイントとして手首までの生地の長さと操作性が挙げられます。手だけでなく、末端部分全てに該当しますが、血流が多い箇所を冷やすと末端部分の冷えにつながります。指の場合は手首を冷やさないことが重要です。 以前、左右同じグローブで、片方の手首を捲って冬場にライドし、どちらが先に指先が痛くなるか実験したところ、生地を捲った側がすぐに冷え始めて痛くなり、通常通り使用した側はあまり冷えを感じませんでした。このことからも冬場のライドでは、手首までカバーできるタイプの冬用グローブがおすすめです。
足先も同様です。シューズカバーも足首までカバーした製品の方が足先の痛みは軽減できるでしょう。また、ソックスも足首以上の丈の製品を選んだ方がより快適です。それでも足先が寒さで痛くなる場合は、冬用タイツを厳冬期向けの製品に変えてみるのもおすすめです。太ももには太い血管があるため、ここを冷やさないようにすると足先の冷えが軽減します。足先が寒いからという理由で極厚のシューズカバーを装着したくなりますが、実の原因は薄手のタイツで太ももが冷えていたから、というケースも多くあります。
ネックウォーマーも冬場にはマストアイテムです。首元を暖めるだけではなく、顔まで覆って防風効果を高める製品もあります。呼吸がしやすいように穴が設けられていたり、生地がズリ下がらないよう耳に引っ掛ける機能がある製品もあります。価格もお手頃なので、気温に合わせて選んでもよいでしょう。
冬場の快適なライドを目指すウェアの選び方を紹介しましたが、全てサイクリングという運動をしている前提であり、停まっている状態をそこまで考慮していません。運動している状態で“ちょうどいい”と感じることが重要で、停まっている時も快適だと冒頭の汗冷えに直結するからです。
屋外で休憩中、仲間と話に盛り上がって気がついたら冷えていた...とならないよう、冬場のライドほど立ち寄りスポットをあらかじめ屋内に定めるなど、事前の計画性を持って寒さを乗り切ってください。
10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体「Cyclist」の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在はYouTubeチャンネル「サイクリストTV」でナビゲーターを務めるほか、自治体の自転車施策プロデュース業務を担当。
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