2019.9.27
自転車ロードレースのレース展開を知るうえで欠かせないことが、脚質を知ることです。脚質とは、一言でいえば選手の得意分野の違いを表します。前回は得意分野がハッキリしている「スプリンター」「クライマー」「タイムトライアルスペシャリスト(TTスペシャリスト)」の3つの脚質を紹介しました。今回は、自転車ロードレースならではといえる「ルーラー」「パンチャー」「オールラウンダー」を紹介します。
1日200km以上を走ることもある自転車ロードレースにおいて、風よけのため集団の先頭で長時間けん引できる選手の存在はとても重要です。「ルーラー」はまさにそのような局面において、最も力を発揮するタイプの脚質です。
TTスペシャリストが時速50kmを30分から1時間ほど保てるのに対して、ルーラーは時速45kmを2〜3時間保てるようなイメージです。なかには、タイムトライアルも得意とし、長時間巡航も得意とするルーラーもいます。さらに、2〜3分程度の数分間にわたって時速60km近い高速域を保つことができるルーラーもいます。そういったタイプのルーラーは、集団スプリントのリードアウトトレインの一角として起用されることもあります。
ただし、スプリンターほどのスプリント力はなく、クライマーのように上りが得意でもないため、なかなか勝利をあげることは難しい脚質です。唯一ともいえる勝ち筋は、逃げ切りを狙うことです。
しかし、ロードレースは空気抵抗との戦いであるため、風よけに最も適した脚質であるルーラーはすべてのチームにとって欠かすことのできない存在です。チームへの献身的な働きが評価され、たとえ勝利があげられずとも長年トップチームで活躍する選手もいます。
自転車ロードレースはエース級の強い選手がいれば勝てるというほど、単純な競技ではありません。高度な戦略性を持つ自転車ロードレースだからこそ、風よけなど地味な役回りを受け待つルーラーが最も重要な存在となるのです。
近年、自転車ロードレースは戦略性を増しつつあり、それに呼応するようにレース主催者も複雑な地形のコースを設定することが多くなりました。そういった背景から、スプリンターやクライマーといった分類ではカテゴライズできない脚質が生まれました。そのひとつが「パンチャー」です。
パンチャーとは、文字通りパンチ力を持った選手という意味です。具体的には2〜3キロ程度の短い上りを十分にこなすことができ、そうした丘を越えて絞られた集団によるスプリントに勝てるスプリント力を持った選手のことをいいます。
一般的にはクライマーより登坂力に劣り、スプリンターよりスプリント力は劣るといえます。一方で、例えば平均勾配10%を超えるような1kmの激坂を上る力はクライマーよりパンチャーの方が優れていることが多いですし、ラスト500mの勾配が5%程度の上りスプリントでは、パンチャーがスプリンターを凌駕するスプリントを披露することも見られます。つまり、パンチャーは勝利を狙える脚質だといえるでしょう。
オールラウンドにどんな局面でも高いパフォーマンスを発揮できる脚質のことを「オールラウンダー」といいます。非常にありふれた表現ではありますが、言葉を使う人によって厳密には意味合いが少し違っていることが多いです。
クライマーのように上りが得意で、TTスペシャリストのようにタイムトライアルも得意で、グランツールで総合優勝が狙えるような選手のことをオールラウンダーと呼ぶことが多いです。また、クライマーのように上りが得意で、パンチャーのように小集団スプリントや上りスプリントを得意とする選手のこともオールラウンダーと表現する場合もあります。逆にハッキリとした特徴がない選手のことをオールラウンダーと表現することもあり、「オールラウンダー」という言葉だけでは選手の特徴を正確に表現することは難しいです。
ひらたく「どんな地形でも得意な脚質」と覚えておき、具体的にはどんな脚質と脚質を合わせ持つのか見極めることをおすすめします。
そうして、「このコースは短い上りがたくさんあるから、クライマーとパンチャーの勝負になりそうだ」、「最後の丘を越えて集団スプリントになりそうだから、生き残ったスプリンターとパンチャーの争いになるだろう」というように、脚質を理解するとレース展開を予想しやすくなり、よりレース観戦を楽しめるようになります。
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