2023.10.4
格好良いロードバイクはいつまでもきれいな状態で乗っていたいものです。しかし外でのサイクリングを重ねるうちにドライブトレイン周りやフレームが次第に汚れてしまいます。雨上がりには泥や砂を巻き込んでしまい、車体にダメージを与えかねません。今回はロードバイクの洗車の必要性や方法を解説。愛車をピカピカにして、気持ちよく乗り続けましょう!
ロードバイクをはじめとするスポーツ用自転車は、多くの部品で構成され、各部がそれぞれ重要な働きを担っています。特に稼働部には潤滑油やグリスが塗布されており、スムーズな動きで回転や変速性能を支えています。
前述の通り、走行していると砂や埃が車体に付着します。特に潤滑油やグリスが塗布された部分、ベタベタとしている箇所に付きやすいです。そうすると、稼働部にジャリジャリとした砂などの汚れが入り込み、部品にダメージを与えていたり、動きを阻害して本来の働きができなくなってしまいます。走りが重くなるのはもちろん、部品の消耗を早める可能性が高くなります。
こうした汚れによるダメージからリセットすることも洗車をする大きな意義です。また、くまなく全体を掃除することで、普段は気が付かない故障や部品の不具合を発見することにも繋がります。見た目をピカピカにする効果だけでなく、安全性にも寄与するのが洗車です。
「ロードバイクの洗車」と画像検索をかけると、車体を専用のスタンドに固定し、泡で包んでスポンジで汚れを落とし、シャワーや高圧洗浄機で洗い流す…そんな画像が見受けられると思います。この方法は古くからロードレースのプロチームで採用されてきましたし、近年では民間の洗車サービスも増えていて人気を博しています。実際に汚れもすっきりと落ちますし、まるで新車のような輝きを取り戻せる洗車方法です。
一方、水を大量に用いることで必要なグリスが落ちてしまったり、高圧で水をかけることで本来はNGな箇所に水が進入するリスクがあります。プロのメカニックであればこのような事態を回避したり、洗車後に適切な処置を行うことができますが、もし知識のない方が実施するとかえって部品を傷めてしまうことも考えられます。
こうした事態を回避するためにも、ビギナーの方はまず水を使わない洗車から始めるのが良いでしょう。
水を使わない洗車では下記のものを用意すると良いでしょう。
洗車を実施する場所ですが、オイルや汚れが飛び散る可能性が高いため、室内で行う場合は十分に注意しましょう。ケミカルを使用するため、換気の良い場所で行う必要もあります。
まずはチェーンやスプロケットといったドライブトレイン周りから始めましょう。油汚れがフレームなどに飛び散ることがあるためです。ここで必要なのがパーツクリーナー。チェーンへの注油方法を説明する記事でも説明しましたが、パーツクリーナーは油を分解するケミカルです。チェーンやスプロケットに噴射すると汚れが一気に落ちていきます。まずはチェーンやスプロケットに塗布して、ブラシで軽く擦りながら汚れを落としていきましょう。パーツクリーナーは速乾性がほとんどですが、中乾性や遅乾性のものも販売されています。どちらかというと後者の方がブラッシングしやすいと個人的には感じています。
ここで注意が必要なのは汚れて飛び散る溶剤です。ディスクブレーキの円盤部や、ブレーキキャリパー内のパッドにオイルを含んだパーツクリーナーが付着するとブレーキが効かなくなる場合があります。リムタイプのブレーキでは、リムとブレーキシューが該当します。養生するなどして付着しないように気をつけましょう。
また、リアディレーラー(後ろの変速機)にあるプーリー(小さい歯車)の中心部にはベアリングが入っているものもあります。ここにパーツクリーナを勢いよくかけないようにしましょう。中のグリスが抜けるなどして、部品が傷む危険性があります。
プーリーの側面にはホコリがオイルで固まったヘドロ状の汚れが付着します。走行抵抗になるため、ブラシの柄などでこそぎ落としましょう。
スプロケットの汚れの大半はパーツクリーナーの噴射で落ちると思いますが、隙間や下部に溜まった汚れは水切りネットやストッキングを使うと良いでしょう。ネットを引っ張りながら隙間に入れて掃除すると、網目で汚れを絡めとることができます。
最後にウエスで拭きあげれば掃除は完成です。注油は最後に行います。
フレームには砂や泥、チェーン付近から飛んだ油などが汚れとして付着しています。水を使わない洗車においてはウエスによる拭き上げで落としていきます。一方で、砂でジャリジャリになったフレームを乾いたウエスで吹き上げると傷がついてしまいます。まずは水を含ませたウエスで軽く拭くことで大まかな汚れを落としていきましょう。
全体的に汚れが落ちたら、乾いたマイクロファイバークロスで拭き上げていきましょう。グロス(艶あり)のフレームであればワックスを使うと驚くほど綺麗になり、輝きを取り戻すと思います。車用のワックスでOKですが、固形や半練りタイプよりは、液状やスプレータイプのワックスの方が扱いやすいと思います。ワックスを塗布→マイクロファイバークロスで拭くという順番です。
ここで注意すべきことは、ワックスも油の一種ですので、前述のディスクブレーキ部や、リムタイプのブレーキの場合はリムやブレーキシューに付着しないようにしましょう。
なお、汚れの度合いが激しい場合は、ガラスクリーナーなどの油膜取りも活用できます。泡で出てくるタイプのものが多く、ホコリや砂などの汚れを浮かし、拭き取ることも可能です。水で流す必要はありませんので、水場がなくてもOKです。ただし、泡は比較的広範囲に飛び散るので注意が必要です。
個人的にはドライブトレイン周りの清掃が終わってしばらくしてから注油をしたほうが良いと考えています。理由としてはパーツクリーナーなどの溶剤が残っていると、せっかく注油してもオイルの効果を発揮できないためです。速乾性のパーツクリーナーであれば比較的すぐに揮発しますが、遅乾性の場合はチェーン内部に残っている可能性もあります。順番としてはフレームの清掃と注油はどちらが先でも良いですが、完全に溶剤が揮発してからオイルを塗布した方が良いでしょう。
注油の仕方の詳しい説明はこちらの記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
冒頭で記述したように、水を使った大掛かりな洗車や、ブラシを内蔵した専用工具を用いたチェーン清掃、分解してのベアリング清掃など、ロードバイクを綺麗に保ち、正常に動かすための処置を挙げ続けると、行き着く先にはオーバーホールという作業にあたります。各部の部品を分解し、綺麗に清掃した後に再び組み上げる作業です。
当然ながら幅広く深い知識、専用工具が必要になり、自宅で作業を行うことは容易ではありません。専門店で施工することが前提で、費用もそれなりに必要になります。しかし、乗る頻度にもよりますが、スポーツ用自転車で安全快適にライドし続けるためには必要な作業でもあります。
一方、裏を返せば今回紹介した水を使わない洗車もオーバーホールのはじめの一歩です。普段からマメに清掃していればダメージを抑えることができ、本格的なオーバーホール時に消耗品の交換や出費を抑えることにも繋がります。
気持ちよくサイクリングを続けるためにも、まずは簡単にでも愛車の清掃を始めてみてはいかがでしょうか。
10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体「Cyclist」の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在はYouTubeチャンネル「サイクリストTV」でナビゲーターを務めるほか、自治体の自転車施策プロデュース業務を担当。
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