2023.10.23
多くのサイクリストが雨の中でのライドをなるべく避けていると思いますが、イベント当日が雨天に見舞われたり、サイクリング中に降られてしまった事もあると思います。そんな時、ライド後にしっかりと車体のメンテナンスをしていますか? そのまま放置しておくと想像を絶する早さで車体へのダメージが広がることも。まず重要なのは雨天直後の迅速なケアを行うこと。そして細部のケアへ。どのような対策をすれば良いのか解説していきます。
ロードバイクをはじめとするスポーツ用自転車には多くの金属製品が使用されています。チェーンやスプロケット、ワイヤーケーブルや各部変速機などが挙げられます。これらが雨に濡れていると想像以上に早く錆びてしまいます。
特に一瞬のうちに錆が浮いてくるのはチェーンとスプロケットです。濡れたまま放置して数時間もすると、うっすらと表面に赤茶色の錆が見えてくることも…。錆びることによって性能が低下してしまうのは言わずもがなです。
また、雨中のライドでは細かな砂を水と一緒に巻き上げており、車体に付着させてしまっている状態を放置しておくことも自転車にとって良い状況ではありません。フレームに傷がつきやすい状態ですし、BB(ボトムブラケット)とクランクの間や、変速機の稼働部に砂が入り込み、内部に傷やダメージを与えることも考えられます。
これらの場所には摩擦を減らしたり、異物の侵入を防いだり、もちろん錆を防ぐためにもグリスやオイルが塗布されています。しかし、雨水によってそれらが流れ落ちてしまうことで、本来の機能を失い、対策を講じることが不可能になります。
ライド中に濡れてしまうことは仕方のないこと。一方、ライド後の処理の方法で車体へのダメージが大きく変わります。
まずはライドを終えた直後に乾いた布やウエスで雨水を拭き取りましょう(雨の日に走らなければならない、もしくは降られることがわかっている場合はあらかじめウエスを持参しましょう)。金属の部分ほど重点的に、そして早く水気を拭い去ることがポイントです。フレームを拭く際は砂が付いている事もあり、傷がつく恐れもあるため、ゴシゴシと擦らず優しく拭き取ってあげましょう。もし家に水場がある場合は拭き取る前に砂を洗い流しても良いでしょう。
水気を拭き取ったらチェーンにオイルを差しましょう(出先用に小分け容器に分けて携行すると便利です)。この時、チェーンのコマの内部に水がまだ残っていたり、通常よりもオイルが抜けてしまっている可能性が高いため、いつもよりも多めに注油することを心がけましょう。
チェーンのコマ全てにオイルが行き渡ったら、リアスプロケットとフロントのチェーリング全てのパターンで変速を行ってください。チェーンに塗布したオイルが各歯を巡り、水と置換することで錆を防ぐことができます。繰り返しになりますが、チェーンとスプロケットは一瞬で錆びますので処理する早さがポイントです!
もしうっすらと錆が現れてしまっても、すぐにパーツ交換をする必要まではないでしょう。注油を行い、通常通り使用することで表面の錆が削れることがほとんどです。しかし、錆びさせた状態で良いことは絶対にありません。なるべく早く対応しましょう。
次に、変速機などの稼働部に注油をしましょう。変速機のヒンジ部や、ビンディングペダルのバネなどです。ここで使うオイルは点眼タイプのチェーンオイルでは差しづらいので、スプレータイプの方がいいでしょう。勢いよく噴射するとブレーキシューが当たるリムや、ディスクブレーキなどNGな場所にかかる可能性があるため、後ろにウエスをあてがうなど養生しながら作業すると良いでしょう。
ボルト類も錆びやすいのでオイルを塗布すると良いです。ペットボトルの蓋にオイルを溜めて、綿棒に吸収させて塗布すると作業が楽です。
これまで、すぐに行うべき応急処置を紹介しましたが、分解をしなければ作業できない箇所もあり、専用工具や知識が必要なケースもあります。例えばBB内部やヘッドパーツ内のグリスが抜けてしまった場合や、プーリーのベアリングに砂が入り込んだケースなどです。
軽い雨で、1回くらいのライドであれば応急処置を施すことで問題ないと思いますが、土砂降りのなか何時間も走り続けた場合には何らかしらの不具合が発生してもおかしくはありません。異音やいつもとは違う感覚を感じた場合には、専門店でチェックしてもらいましょう。不具合の状態が軽微なほどかかる費用も抑えられます。重篤になる前に相談することが大切です。
なお、雨ライド後にメンテナンスが必要なのは車体だけではありません。特にシューズは濡れたまま放置しておくと菌が繁殖して悪臭を放ちます。こちらもなるべく早く洗った方が良いのですが、形状的にも素材的にもなかなか乾きにくいものです。
そこでおすすめしたいのが布団乾燥機です。本来は布団用なのですが、シューズ用のアタッチメントが付いているものもあり、カラッとすぐに乾かすことが可能です。1万円しないほどで購入できます。雨の中でライドする機会があるサイクリストに超おすすめです。
10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体「Cyclist」の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在はYouTubeチャンネル「サイクリストTV」でナビゲーターを務めるほか、自治体の自転車施策プロデュース業務を担当。
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