2025.2.18
モデルでありながら、実力派ヒルクライマーとしても知られる日向涼子さん。出産を経てママサイクリストになったいまも変わらず、楽しんだりもがいたり(?)と、意欲的な自転車ライフを送っています。国内外問わず、数多くの峠を上ってきた日向さんが選ぶ“My Favorite”な峠とは? その答えからは、日向さんが感じるヒルクライムの様々な魅力が見えてきました。
─お気に入りの峠を1つ教えてください
1つに絞るのは難しいのですが…立春を過ぎた頃、真っ先に思い浮かぶのは湯河原から大観山展望台を目指すヒルクライムコースです。
神奈川県道75号湯河原箱根仙石原線、通称「椿ライン」と呼ばれる道を走るのですが、南に面しているので他の山が路面凍結していても椿ラインは走れるということが多いです。また、その名の通りコース沿いには数多くのツバキが植えられ、2月下旬から4月くらいまでは美しい椿を眺めながら走ることができます。
6kmほど続いた椿並木が終わると徐々に景色が開け、次は海が望めます。クライマックスはピークにある大観山展望台からの景色。芦ノ湖と富士山の大パノラマが一望できるビュースポットです。
アクセスの良さ、比較的早い時期から走れる、勾配が緩いので多くの人が楽しめる、それでいて距離が長いので達成感があり、首都圏にありながら最初から最後まで景色を楽しめるという、楽しさ“てんこ盛り”な峠なのです。
─大観山を好きな理由、魅力を教えてください
アクセスの良さや景色も魅力ですが、同じくらい「初心者から上級者まで誰もが楽しめる」という点も好きな理由のひとつです。自分を追い込みたい、いわゆる“ガチ勢”も、ゆるっと楽しみたいサイクリストも誘いやすいコースなのです。
例えばガチ勢であれば、「富士ヒルを想定した練習ができるよ」と誘います。毎年6月に富士山の5合目を目指して富士スバルラインを走る「Mt.富士ヒルクライム」という人気大会があるのですが、椿ラインの勾配は富士スバルラインのそれに近いのです。
富士スバルラインの全線開通は例年ゴールデンウィークあたりですが、椿ラインは早い時期から走れます。私自身、湯河原を拠点に「ヒルクライム合宿」と称して、夫と毎日のように椿ラインを走ったこともありました。子供が生まれてからは難しくなりましたが、今でも良い思い出です。
練習のためでなく、「楽しみたい」という目的で自転車に乗る相手には「景色が良くて達成感もあるよ」と声をかけるかな? 私はスポーツバイクに乗り始めてから、それまで出会わなかったような人たちとの出会いに恵まれたのが一番の宝物だと感じているのですが、いまもそんな仲間たちと走りに行くことが楽しみの一つでもあります。
東京から踊り子号に乗って湯河原へ。椿ラインを走った後は、「電車の時間まで」と湯河原駅前の居酒屋に入って「お疲れ様会」と称した軽い打ち上げ。輪行で帰るのでお酒も飲めます。ヒルクライム後の打ち上げを楽しみに参加している人もいるでしょうね(笑)。宿泊でいけば温泉も楽しめますし、写真を撮りに走りに行くでもいい。千差万別の楽しみ方ができるのが魅力だと思います。
─最後に日向さんにとってのヒルクライムの魅力を教えてください
何でしょう(笑)。よく同様の質問をされますが、そのたびに「そこに山があるから」と、イギリスの登山家であるジョージ・マロリー氏の言葉が浮かびます。
ピークからの眺望に癒されることもありますし、例え景色が開けないコースでも、「今日は頑張ったなあ」と自分に対する達成感が得られることもあります。頑張りたくても調子が悪くて落ち込むこともあれば、少し強くなった自分を感じられることも、ごくたま~にですがあって、そういう時はやっぱり嬉しい。頑張っていてよかったなと思えます。
ヒルクライムは人生にも似ているところがあるように感じるのです。目先の良し悪しにとらわれず、ただひたすらに一生懸命に上っていれば、充実した気持ちになって…。「充実した人生」というと大げさかもしれませんが、ヒルクライムも頑張っていると満たされた気持ちになるのは確かですね。
モデル(SHREW所属)。ダイエットを目的にスポーツバイクに乗り始めたが、気が付けばヒルクライムの虜に。日本国内のヒルクライムスポットやイベントはもちろん、ツール・ド・フランスの1ステージを走る「エタップ・デュ・ツール」や本場イタリアの「グランフォンドピナレロ」も完走。モデルでありながら国内外のレースで優勝・入賞経験もある本格派サイクリスト。結婚・出産を経て、現在は幅広い層に向けたサイクリングの楽しみ方を提唱している。今の目標は子供との自転車旅。親子で安心して楽しめるコースやスポットを模索中。書籍に「<坂バカ>式 知識ゼロからのロードバイク入門」「日向涼子のヒルクライムナビ」「絶景サイクリング旅」などがある。
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