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ただ摂るだけじゃもったいない 「食べるタイミング」を知って栄養の働きを最大限に

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自転車ダイエットの極意<4>
ただ摂るだけじゃもったいない 「食べるタイミング」を知って栄養の働きを最大限に

 タイミングが合えば物事がトントン拍子に進んだり、逆に準備が整っていてもタイミングが合わず上手くいかないことってありますよね。実はスポーツ栄養学もこの「タイミング」が重要なポイントで、摂取タイミングを考えることによってその栄養素の働きを最大限に引き出せることがあります(その逆も然り)。今回は効率の良い体づくりや健康維持増進につなげる「栄養摂取のタイミング」についてお話したいと思います。

(Getty Images)※画像はイメージです

夜遅く食べるとなぜ太りやすい?

 タイミングと言っても、様々なことが思い浮かぶと思います。運動時間に合わせたタイミング…例えば「運動開始の3時間前までに食事は済ませておく」や「運動終了後30分以内にリカバリーの栄養補給をする」などは、よく知られているのではないでしょうか。8時スタートのロードレースの時には5時には朝食をとりたいと、宿泊先ホテルに伝えると、「早朝過ぎて対応できない」と言われ、前日に近くのスーパーでロールパン、スライスハム、スライスチーズ、トマト(輪切り)、キウイ(半分に切ってスプーンで食べる)、ヨーグルト、100%オレンジジュースを買っておき、翌朝各自でロールサンドを作って食べてもらった思い出があります。

 運動時間に合わせたタイミングの他に、注目してほしいのが「体内時計」です。皆さんは体内時計を意識したことはありますか? 私はたまに腹時計が鳴るくらいかなぁと思ったのですが…これは体内時計とはちょっと違います。体内時計は生命活動(体温や血圧、睡眠など)や身体活動(その日の気分や体調など)をコントロールしていて、年周リズム(季節的リズム)をはじめ、月周リズム、週周リズム、そして「サーカディアンリズム」とも呼ばれる日周リズム(概日リズム)などがあります。最も基本的な生体リズムはサーカディアンリズムで、血糖の調節にも関与しています。

 「夜遅くに食べると太りやすい」と、よく耳にします。これは「夕食後は寝るだけなのでエネルギー消費があまり見込まれないから」という理由もあるのですが、そもそも夜遅い食事は体内時計の影響もあって血糖値が上がりやすくなるのです。糖質摂取による血糖値の上昇は1日の平均値と比較すると、8時頃から20時頃までは平均より低いのですが、20時以降の夜食では平均以上となります。

 以前にもお話しましたが、血糖値が上がるとインスリンというホルモンが分泌されて、体脂肪を蓄えやすくなります。ですので、インスリンの分泌を抑えるには、20時以降は食べることを控える方が良いということになります。…という私も勝手に「21時はギリギリセーフ」と思って20時過ぎに食後のスイーツを食べていましたが、これを機に悔い改めようと思います。

たんぱく質は朝食に摂るのが効果的

 また、ダイエットは体脂肪を減らすと共に筋量を増やすことによって代謝がアップして痩せやすくなったり、引き締まった体を手に入れたりすることができますし、レースに出場する方だとパフォーマンスも上がるかもしれません。最近ではサイクリストでプロテインを飲んでいる方も増えているように思いますが、たんぱく質をとっているのに思ったほど筋量が増えない…という方もいらっしゃるのではないでしょうか?もちろん、たんぱく質をとっただけでは筋肉はつきません。ある程度の筋肉への刺激(レジスタンストレーニング)も必要なのですが、トレーニングもしているのに増えない場合は、もしかしたらたんぱく質の摂取タイミングが問題かもしれません。

 昨年の夏に発表された論文には「たんぱく質摂取による筋量増加効果は、量だけでなくタイミングも影響することが明らかにされた」と記されています。これにも、冒頭にお話しした体内時計が関連しているのです。結論から申し上げますと、そのタイミングというのが朝食です。

 マウスでの実験なのですが、朝食に多くのたんぱく質を摂取したマウスの方が、夕食に多く摂取したマウスよりも筋量の増加が促進しました。

 私はこの論文を読んだ時に、とある競技のプロチームでの食事調査結果を思い出しました。…が、研究とはほど遠く、被験者も数名で信憑性があるのかと言われると何も言えず、そんなデータを公開してもいいものか悩みましたが、私の体験談として軽く聞いていただけたらと思います。

 数名の選手に、毎食「主食・主菜・副菜・乳製品・果物」をとれているかという食事調査をしたところ、全員毎食何かしらは食べていました。しかし、体重がなかなか増えてこない選手の食事バランスを見ると、朝食で主菜をとっている日が少なかったのです。主菜と言えば、たんぱく質源です。そして朝食で主菜をほぼ毎日とっている選手が2名いたのですが、その2名は筋量が多い選手でした。条件を揃えて研究したわけではないので、本当に私自身の感覚でしかないのですが、朝食でたんぱく質をちゃんととることは、やはり筋量の増加に関係していたのでした。

 朝食でたんぱく質をしっかりとるために、私がお勧めするのはインスタントスープを使ったリゾットです。大き目のボウル(または丼)にインスタントスープを作り、その中にご飯を入れます。そしてたんぱく質源は、豆腐だったりツナ(水煮缶だと脂質をカットできます)だったり。そして冷凍ほうれん草などがあれば簡単に、主食・主菜・副菜が揃います。インスタントスープも様々な種類があるので、楽しめると思います。

 明日から朝食にしっかりたんぱく質をとりましょう!…ただ、摂取タイミングも大切ですが、一日に必要な量(1日当たりの摂取推奨量:一般の方は体重1kgあたり1g、アスリートは同2g)がちゃんととれていることが前提となります。量とタイミング、どちらも意識してもらうと良いと思います。

文: 河南こころ(かわなみ・こころ)

管理栄養士。女子フィギュアスケートバンクーバー五輪銀メダリスト、男子バレーボールVプレミアリーグ所属チーム、ラグビートップリーグ所属チームなどを栄養面からサポート。ロードレースチームの「シマノレーシング」を担当していた経歴をもち、現在も「シマノ鈴鹿ロードレース」で開催される栄養講座の講師を務めている。自転車ロードレースの主要な国内レースは常にチェックしているというロードレースファン。現在はFC今治のサポートの他、トレーナー養成学校でスポーツ栄養学の講師をしたり、栄養学を学ぶ学生のコミュニティ「COMPASS」のアドバイザーとして後進育成に注力している。

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