2024.2.15
ロードバイクには、ざっくり分けて3種類の楽しみ方があると思っています。一つ目はもちろん「乗る楽しみ」。これは言うまでもありませんね。二つ目は「知る楽しみ」。趣味として自転車を続けていると、物理的・工学的・生理学的・人間工学的知識等、様々な新しい知識を得られます。そしてライド仲間と繋がることで、自分とは異なる考え方に触れる機会も多くなります。自転車は行動範囲を広げてくれるだけでなく、思考の範囲も大幅に拡大してくれます。
そして3つめが愛車を自分好みに「カスタムする楽しみ」です。ポジションやセッティングの調整、パーツの交換など、自分で愛車をカスタムして「自分だけの一台」に仕上げていく楽しさは何物にも代えがたいものがあります。サイクリストのなかには「乗るよりカスタムする方が好き」という人もいるほど。
しかも、エンジンがなく、車重が軽く、構造がシンプルなスポーツバイクは「自分でカスタムするハードル」がかなり低く、工具を数種類揃えれば、ある程度は交換や調整ができるようになります。今回は「簡単な自転車のカスタムに必要な工具3つ」についてお話しします。
まずは「六角レンチ」です。ボルト(ねじ)には様々な種類がありますが、自転車に多く使われているのは「六角穴付きボルト」です。ドライバーで締めるプラスとマイナスのボルトより力をかけやすく、六角ボルト(頭が大きな六角形をしているボルト)より軽くでき、工具を回すスペースが少なくて済むという、スポーツバイクに最適なボルトです。それを回すのに必要なのが六角レンチで、自転車業界では「アーレンキー」とも呼ばれています。
〈参考記事〉 メカトラ事件簿<2>自転車のネジはいつの間にか緩むので時々確認すべし…というお話
六角レンチには様々なサイズや形状がありますが、自転車なら1.5~8mm(1.5、2、3、4、5、6、8mmのセット)を揃えておけば大丈夫。使用頻度が高いのは4、5、6mmです。形は力をかけやすいL型がいいでしょう。
次にドライバー。六角レンチほど出番は多くありませんが、ディレーラー、ブレーキキャリパー、ライトやメーターのマウントなどには、プラスもしくはマイナスのボルトが使われています。六角レンチ同様にドライバーにもサイズがありますが、自転車用なら「2番」を買っておきましょう。
ただし、プラスとマイナスのボルトは、工具のサイズが合っていなくても回すことができてしまいますし、「カムアウト」といって工具がボルトから浮き上がってしまう力が働きやすく、ボルトをなめてしまう(ボルトの頭が破損してしまう)ことがあります。しっかりと力をかけて、慎重に回すようにしてください。
極端な話、100円ショップでも六角レンチやドライバーを扱っていますが、安価な工具は精度が低く、耐久性にも難があります。また、危険な折れ方をして怪我の原因になることもあるので、プロショップで販売されているメーカーの工具を選んでください。
基本工具は以上の2種。あと一つ買うならば、タイヤレバーでしょう。タイヤやチューブの交換、パンク修理時に役立ちます。
〈参考記事〉 メカトラ事件簿<1>「クルマは滅多にパンクしないんだから自転車だって余裕でしょ」←その甘えが命取りに
〈参考記事〉 ロードバイクに必要なパンク修理の道具
これらの工具があれば、簡単な自転車のカスタムができます。ただし、自転車は人を乗せて公道を走る乗り物ということを決して忘れないようにしましょう。ボルトの締め付け力が不足していて、走行中に突然ハンドルがずれてしまったら、もしくは締め付けすぎて走行中にパーツが破損したら……。自身の怪我で済むならまだしも、他人を巻き込んだ重大事故につながることも十分に考えられます。
乗り物をカスタムすることには大きな責任が伴います。それを忘れずに楽しんでいただきたいと思います。
自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。
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