2024.3.8
サドルやホイール、クランクやペダルは、ロードバイクにもクロスバイクにも、もちろん軽快車にも付いています。しかし、くねくねと曲がった形状の「ドロップハンドル」は、ロードバイクやトラックバイクにしか付いていません。ドロップハンドル専用のシフト/ブレーキレバーを含めて、自転車の中でも特殊なパーツと言えます。
そんなドロップハンドル、そもそもなんであんな形をしているのでしょう。軽快車しか乗ったことがない人がドロップハンドルを見ると、「一体これのどこを握ればいいの?」と漏れなく戸惑います。実はその戸惑いこそが、ドロップハンドルの形の意味でもあります。ドロップハンドルは「どこを握っても良い」からです。というより、「色々なところを握れるようにあの形になった」と言うべきでしょうか。
軽快車やクロスバイクのハンドルは握る場所が一カ所です。一見しただけで「ここを握れば良いのだ」と分かります。でもドロップハンドルは、色んなところが握れます。「どこを握ればいいの?」という戸惑いは、ドロップハンドルの機能を考えれば生まれて当然のものでもあるのです。
例えば、平坦路を普通に走っているときはレバー(のブラケットという部分)を握ります。これを「ブラケットポジション」と言います。
また、空気抵抗を減らして高速走行をするときや、フルパワーで加速するときはハンドルの下部を握りしめます。これが「ドロップポジション」です。
上体を起こしてリラックスするときはハンドル上側の中心部分(上ハンドルといいます)を握ります。
そのほか、状況や体調や速度域に応じて、あらゆるところを握れるのがドロップハンドルなのです。限りあるヒューマン・パワーを効率よく引き出し、無駄なく使うために到達した「究極のハンドル」とも言えます。
ドロップハンドルには様々な製品があります。素材は大きく分けてカーボンとアルミの2種類(チタン製もありますがかなり少数)。カーボンハンドルの方が軽く、快適性が高くなる傾向にありますが、その分高価です。
選ぶ際に気にすべきポイントは、サイズと形状です。サイズは「幅」、「リーチ」、「ドロップ」の3つ。幅は文字通りハンドルの全幅のことで、380mmから20mm刻みで440mmくらいまで用意されることが多いです。レバーを握ったときに、腕の幅が肩幅と同じくらいになるサイズが基準。
リーチはステム取り付け部からシフトレバー取り付け部までの距離。このリーチが長いとレバーが遠くなり、逆に短いとレバーの位置が近くなります。60~100mmが一般的ですが、最近はショートリーチと呼ばれるリーチが短いハンドルが多くなりました。
ドロップとは、ステムに取り付ける部分からハンドル下部までの距離。ドロップが大きければ大きいほど、ドロップポジションをとったときの前傾姿勢がきつくなります。120~150mmの製品が多いですね。
その他に、ドロップ部分の曲がり方にも様々な種類があります。ドロップ部分が大きく湾曲しているのが、「丸ハンドル」「シャロー」などと呼ばれるタイプ。ドロップポジションでの前傾姿勢がきつくなり、握るポイントが遠くなることが特徴です。昔は、ドロップハンドルといえばこの形でした。
最近の主流になっているのが、「アナトミックシャロー」や「コンパクト」と呼ばれる形。湾曲が緩やかでドロップが小さく、前傾が緩やかになるタイプです。ドロップポジションに慣れていないビギナーはこちらを選ぶといいでしょう。
しかし、ドロップハンドルの選び方に正解はありません。サドルと同じで、好みによって決まるパーツだからです。さらに、同じハンドルでもレバーをハンドルのどこに取り付けるかによってハンドルの握り心地や使い勝手は大きく変わります。色々な製品を使い、様々なセッティングを試しながら、徐々に自分に合ったハンドルを見つけるしか手段はありません。
自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。
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