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100km完走するための賢い走り方

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ロードバイク単独100km走破術<4>
100km完走するための賢い走り方

 100kmライドに挑むには、自転車もライダーも万全な状態で臨みたいところ。同じ100kmを走るとしても、ちょっとしたコツを知って実践するだけで、体感としてかなりラクに走れます。そこで、今回は100kmライドで初心者が陥りがちな失敗とその対策についてお話しします。

初めての100kmをこなすうえで知っておきたいコツがいくつもあります

初心者にありがちなミスその1 自転車の整備不良でトラブル発生!

 自転車がきちんと整備されていることは、100kmライドを成功させる第一条件と言っても過言ではありません。いくら体力があっても、整備不良の自転車だと途中でトラブルに見舞われて完走できない可能性があるからです。

 主に下記の項目について乗車前にチェックし、気になるところがあったら自分でメンテナンスするかショップで見てもらいましょう。

初心者にありがちなミスその2 序盤に飛ばしすぎ、後半にバテる

 100kmライドに挑戦するとき、残り距離やこれまでの走行距離を意識する人は多いのではないでしょうか。そんなとき、「元気なうちにスピードを上げて距離を稼ごう!」と考える人もいらっしゃるでしょう。

 でも、元気なうちにスピードを上げるということは、最初からオーバーペースで走るということです。オーバーペースで走ると、いずれバテてしまってそのペースが維持できなくなります。それどころか、走り続けることさえつらくなって、結局大きく失速してしまうことになりかねません。

最初から気合を入れて走ると後半ばててしまいます

 では、一定のスピードで走ればいいのかというと、必ずしもそうとは言えません。なぜなら、スピードは地形や風向きの影響を受けやすいからです。

 例えば、時速20kmで走るとすると、追い風の時や下り坂ではおそらく簡単にできますが、強い向かい風の時や上りではかなり頑張らないといけないはずです。もし速度を一定に保とうとすると、体への負荷が風向きや地形によって大きく変化してしまうのです。

 「一定ペースを保つことがロングライドでは重要」だと言われます。一定ペースというと「スピードを一定に保つこと」だと考えがちですが、ロングライドでは「運動強度(=体への負荷)を一定に保つこと」ととらえた方がいいでしょう。運動強度が変化することで、体への負担が大きくなり、体力の消耗が激しくなるからです。

 では、運動強度を知るにはどうすればいいのでしょうか? その方法はいくつかあります。

●その1:パワーメーターを使い、パワーがFTP(有酸素運動能力の限界パワー)の7割以下を目安に走る
●その2:心拍計を使い、最大心拍数の7割程度までに抑えて走る
●その3:主観的運動強度(体感的なつらさ)を表すボルグスケールの11~13(楽である~ややきつい)を目安に走る

ボルグスケール(出典:厚生労働省認知症予防マニュアルをもとに編集部作成)

 最も正確なのがパワーメーターを使う方法ですが、心拍計も運動強度を数値で知ることができるので、あると便利です。最近では比較的安価な心拍数表示対応のサイクルコンピューターや活動量計もあるので、それらを利用するのもおすすめです。何もなければ主観的運動強度でも大丈夫。いずれにしても、「序盤を抑えめに入って、最後まで一定の強度を保つ。後半余力があれば少しペースを上げてみる」ことを心がけましょう。

心拍モニターを利用してペースをつかむ方法もあります
対策と心得

・序盤から飛ばしすぎないようにし、最後まで一定の強度で走る。
・一定ペース=一定スピードではなく、一定ペース=一定の運動強度

初心者にありがちなミスその3 走行中のギヤが軽すぎる・重すぎる

 100kmという長丁場を乗り切るには、走行中のギヤの選択も重要です。

 ギヤは軽すぎても重すぎてもよくありません。軽いギヤはトルクをかけなくても回せるので筋肉への負担は減らせますが、軽すぎると心肺機能への負担が大きく、脚を回してもバイクが進みません。反対に重いギヤはケイデンスを上げなくてもスピードが出せる反面、大きなトルクが必要で、筋肉への負担が大きくなります。風向きや勾配の変化に合わせてこまめに変速し、適切なギヤを選ぶことが重要です。

軽すぎず重すぎないギヤにこまめに変速しましょう

 適切なギヤ比の目安ですが、平坦や下りではケイデンス80~90、上りは勾配にもよりますが、ケイデンス70を下回らないようなギヤ比を選びましょう。

対策と心得

・ギヤは勾配変化や風向きに応じて早めに変速
・適切なギヤの目安はケイデンスで見る。平坦や下りでは80~90回転、上りでは70回転を下回らないよう心がける

初心者にありがちなミスその4 お腹が空いてから、のどが渇いてから慌てて補給

 100kmライドはかなりの長丁場になります。完走のためにはエネルギー補給と水分補給が欠かせません。エネルギーが切れては走れませんし、水分不足による脱水症状はパフォーマンスに悪影響を与えるだけでなく、最悪の場合命に関わります。

 エネルギー補給・水分補給に関しても初心者が犯しがちなミスが潜んでいます。それは、空腹を感じてからエネルギー補給し、のどの渇きを感じてから水分補給することです。

 エネルギー補給は食品やドリンクの摂取を通じて行いますが、すぐにエネルギーが使える状態になるわけではありません。空腹を感じてからエネルギー補給をするのでは、エネルギーが使える状態になる前にエネルギー切れになる可能性が出てくるのです。水分補給に関しても、のどの渇きを感じたときにはすでに脱水状態が始まっています。

 また、エネルギーも水分も消化・吸収できるスピードにも限界がありますから、一度に大量にエネルギーや水分を補給しても吸収されない可能性が高いのです。つまり、空腹やのどの渇きを感じてから補給するのは、完全に後手を踏んでいる状態なのです。

 このような状況に陥らないようにするには、「早め」かつ「こまめ」に補給をすることです。運動強度や気温、ライダーの体格や消化能力などによって変わってきますが、おおむね次のペースがひとつの目安になります。

●固形物やジェルなどによるエネルギー補給:30分~1時間に1回程度
●水分補給:5~10分程度に一口ずつ

 エネルギー補給に関しては、前回紹介したMETsを利用すると、だいたいどれぐらいのペースでどのぐらいのエネルギー補給が必要かの目安が分かります。ぜひ活用してください。

対策と心得

・空腹とのどの渇きを感じる前に早めにこまめに補給!
・METsでエネルギー消費量を概算し、計画的に補給しよう

初心者にありがちなミスその5 休憩が少なすぎる、長すぎる

 ロングライドでは休憩も重要ですが、とり方には注意したいところ。コンビニなどで補給食を購入しがてら休憩するのはありですが、あまり長時間休みすぎるのは考えものです。長時間休みすぎると、心身ともに再スタートするのがつらくなるからです。

 1回の休憩は10分程度を目安にしましょう。お昼をまたぐようなライドでは、しっかりランチ休憩を取りたくなるところですが、100km完走を一番の目的とするなら、休憩をこまめにとるという観点から、またエネルギー補給をこまめに行うという観点からも、ボリュームのある食事はライド後の楽しみにとっておくことをおすすめします。

 反対に、疲れをガマンして走り続けるのも、あまり効率がよいとは言えません。休憩時間を少なくする方が時間の節約にはなりますが、その結果、ひどく疲れてペースが落ちてしまっては意味がありません。また、休憩を少なくすると、1回の休憩が長くなりがちで、再スタートがつらくなります。

 まずは1時間に1回程度、10分ほどの短いコンビニ休憩をとるようにして、体力がついてきたり慣れてきたら休憩の間隔を延ばすようにするといいでしょう。

対策と心得

・最初は1時間に1回程度、10分ほどの短い休憩をとろう 

 

 次回はバイクのポジションについてです。

 

浅野真則
浅野真則(あさの・まさのり)
自転車ライター。JBCFエリートクラスに参戦し、ロードレース、ヒルクライム、タイムトライアルなど、レース中心に自転車を楽しんでいる。海外のグランフォンド参戦経験もあり、ロングライドも好き。出身地である三重県や東海地方の魅力をサイクリスト目線で伝えることを今後のライフワークにしたいと考えており、ツーリングの実走レポートの仕事にも力を入れている