2020.3.20
一般の道路を走っているのであれば、余程のことがない限り、他の交通者という「相手」がいる中で走ることになります。そこで大事になるのがコミュニケーション。相手の意思を確かめ、自分の意思を伝えながら走ることで、余計な交錯を防いで円滑な通行をすることができます。
サイクリストが走行中に自分の意思を示すのに重要な手段として、アイコンタクトがあります。ルール上では手信号というものもありますが、当然のことながら片手をハンドルから離す必要があり、常に完璧に行うのは難しいのが現実です。離れてのアイコンタクトはほぼ「相手を見る」ことしかできませんが、それによって次のような意思を表すことができます。
・「私はあなたに気付いています」
・「私はあなたの動きを気にしています」
・「私はあなたに止まっていてほしい」
・「私はこれからそちらの方向に通りたいです」
例えば後方からクルマが近付いてきた場合、ドライバーからはサイクリスト側がクルマに気付いているかどうかがハッキリせず、漠然と不安を抱いています。このときにサイクリスト側が後ろを振り返ることで、ドライバーに対して「気付いているよ」と伝えることができるのです。
エンジン音などでクルマが近付いていることが自明でも、さらにアイコンタクトを取ることで、ドライバーにとっては安心材料になりますし、サイクリスト側としてはクルマの不用意な動きをけん制することができます。
正確なアイコンタクトをするためには、相手に「見られている」ということを正確に伝えることが、まず大切です。以下の点を注意して行いましょう。
アイコンタクトというからには、目と目を合わせるのが基本です。クルマとアイコンタクトする場合は、ドライバーの目を見るようにしましょう。ガラスの反射などでこちらからはよく見えない場合も、ドライバーの顔がある場所を狙って見るようにしましょう。ミラー越しに見るのもありです。
道路上で目だけを動かしても、相手に「見られている」ことを伝えるのは難しいです。スーツアクターさん(特撮ヒーローの中の人)がインタビューで話していましたが、面(マスク)を被った状態では目線だけではなく、マスク全体(マスクの正面)が見ている方向に向くよう演技するそうです。サイクリストも同様に顔全体を動かして、なるべく顔の正面を見る方に向けるようにしましょう。ヘルメットやサングラスを付けていると特撮ヒーローっぽいですもんね。
こちらだけが見ていてもアイコンタクトは成立しません。見たときに相手がこちらを見ていなければ、相手がこちらを見るまで見続けましょう。もし一向にこちらを見なかったとしたら、アイコンタクトは不成立です。警戒レベルを上げましょう。
さて、前や横を見るのは比較的簡単ですが、後ろを見るのは苦手という人は少なくないようです。自転車には基本的にバックミラーが付いていませんから(付けられますが死角が多く思ったほど役に立ちません)、後方確認の技術は練習して身に付けるようにしましょう。
後ろを見る際の難しさ、すなわち何が問題かというと、「前を見ていないので変な方向に行ってしまう」「振り返るとそちらの方向に進路が曲がってしまう」という2点があります。そこで身に付けるべき技術は、「進路を真っ直ぐ保ったまま後ろを振り返るテクニック」ということになります。安全な場所で真っ直ぐ走りながら、後ろを見る練習をしてみましょう。最初は進行方向が曲がってしまうと思いますが、体の使い方を工夫してみましょう。
例えば首から上だけを動かして体は傾かないようにするとか、振り返る方向と逆向きにハンドルを微妙に押し込んで進路が曲がる力を打ち消すとか、振り返る側の手をハンドルから離して体を開いて振り返るとか、いくつか具体的なテクニックがあります。
筆者の場合、右後ろを振り返るときは、右の肩や腕をしっかり突っ張って固定して、逆に左腕は力を抜いて肘も柔らかく曲げることで、ハンドルが右側に切れる力が発生しないようにした状態で顔を動かします。近くを見るのか遠くを見るのか、一瞬見るのかじっくり見るのかで、異なる方法を持っておくと便利です。
公道をライド中、特に後方にクルマがいる場合や、交差点の前後などでは、こまめに後方確認をするようにしましょう。もちろん後ろを振り返る際は、前方の安全を十分に確認してから素早く行うようにしましょう。
スポーツサイクル歴約30年の自転車乗りで元ロードレーサー。その昔はTOJやジャパンカップなどを走っていたことも。幅広いレベルに触れたクラブチームでの経験を生かし、自転車スポーツの楽しみ方やテクニックをメディアで紹介しています。ローラーより実走、ヒルクライムより平坦、山中より都市部を走るのが好きです。
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