2020.5.5
直線を真っ直ぐ走ることは、自転車において基本中の基本ですが、意外に難しいものです。自転車は左右のペダルを踏み込んで進むという構造上、若干の蛇行を伴うことは避けられませんが、その範囲はできるだけ小さく抑えておきたいものです。
なるべく真っ直ぐ走りたい理由としてはまず、蛇行が大きいとエネルギーの無駄が増える点です。同じ目的地まで走るための距離が単純に長くなってしまいます。ほんの僅かでも、積もり積もれば少なくない無駄になってしまいます。
そしてもうひとつのメリットとして、蛇行が少ない方が、狭い幅の範囲で走ることができる点です。「それがどうした?」と思われるかもしれませんが、これは言い方を変えれば「同じ幅の道路でもより大きな余裕が持てる」ということ。余裕の大きさは安全の確度に直結するので、蛇行を小さく抑えるということは、同じ道路環境で同じように走る場合でも、より安全に走れるということなのです。
真っ直ぐ走るためのトレーニングですが、これはもう普段からの意識の積み重ねです。車道の外側線(左端のライン)を目印にするといいでしょう。道路の線から走行ラインを一定距離に保って走る、あるいは線上からタイヤが出ないように走る、などを意識して練習してみましょう。
真っ直ぐを阻む要素としてはペダリングの左右差だけでなく、路面の微妙な傾きの変化や、空気の流れの変化といったものもあります。風向き自体が一定でも、周囲の建物の配置だとか、近くをクルマが通過するだけで空気の流れは変わります。スポーツサイクルの速度域であれば、平坦を走る際の走行抵抗の半分以上は空気抵抗になりますから、その影響は侮れません。そういった要素を逐一吸収しながら、真下を見なくても真っ直ぐ走れるようになれるのが理想です。
上り坂はより蛇行しやすくなりますが、こういった状況でも走行ラインを真っ直ぐ保てるようになれば、安全面ではかなりプラスです。ダンシング(立ち漕ぎ)でも真っ直ぐ走れるように意識しましょう。レースイベントを走るなら、密集した集団で走る際に、ぜひ身に付けておきたいテクニックです。
ロードレースの集団走行では、別の意味での「真っ直ぐ」も必要になります。複数人が並走状態とな集団内では、自分の左右位置をなるべく保った状態で、集団全体がコースを通過できるように意識しなくてはなりません。道路上には何も書かれていませんが、集団内には見えないレーン(車線)があると考えて、原則として車線を守り、車線を変える際にはしっかり安全確認をしながら行うようにしましょう。これがもう一つの「真っ直ぐ」です。みだりに走行レーンを変える走りは、集団内で落車を誘発する危険性が高まります。
「見えないレーン」の考え方は、一般道での走りにも役立ちます。自分が走るレーンや、周囲のクルマが走るレーンを頭の中に描いてみましょう。それぞれの通るレーンがしっかりイメージできるようになれば、互いのレーンが重なるポイントを要注意として、危険の発生を高い精度で予知できるようになります。また逆に、レーンが重なっていなければ、さほど気を付けなくても大丈夫ということも分かるようになります。
見えないレーンを意識することで、メリハリを付けた集中力のマネジメントが可能になりますし、危険を避けるため、あるいは交通の円滑を保つために、自分がどのような走行ラインを取るべきかもイメージしやすくなります。
スポーツサイクル歴約30年の自転車乗りで元ロードレーサー。その昔はTOJやジャパンカップなどを走っていたことも。幅広いレベルに触れたクラブチームでの経験を生かし、自転車スポーツの楽しみ方やテクニックをメディアで紹介しています。ローラーより実走、ヒルクライムより平坦、山中より都市部を走るのが好きです。
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