2020.5.15
道路をサイクリングしている以上、交通事故のリスクというものは常に付いて回ります。今回はそのリスクを可能な限り小さくするための考え方のヒントをお伝えします。直接的なハウツーではありませんが、ベテランサイクリストはどのような思考で走るのか、例の一つとして筆者の場合を解説します。
まず事故を防ぐための根本的な考え方ですが、「相手のある事故は、こちらが上手ければ全て防げるし、防げなくてはならない」と考えたほうが良いでしょう。空から突然クルマが降ってきたり、相手が何らかの理由でメカの故障や意識喪失に陥っていたりしない限りは、実際に全て避けられるものとして考えましょう。相手がミスや無法運転をしたとしても、それを吸収して事故につなげない走り方は常に存在すると考え、その方法を模索すべきです。
実際の事故はもちろん、いわゆる「ヒヤリ・ハット」の場合にも、なぜそうなったのかという原因を考えましょう。事故にならなかった場合でも、それは完全に自分のコントロール下に置けていたのか、単に運が良かっただけなのかを評価しましょう。そして「自分が」どのようにすれば危険を防げたかを、常に考えるようにしましょう。
もう一つ大事なのは「自分もミスをする」ということを認める心です。どれだけ経験を積んでも、大小のミスは発生するという現実を受け止めましょう。自分の走り方がベストに比べてどうだったかを、常に自己採点するようにしましょう。そして事故を防ぐだけでなく、全体の円滑に対して配慮できていたかも考えましょう。
サイクリングの現場で事故を防ぐため実際ですが、二つの能力に大別できると思います。
一つは「危険を切り抜ける力」。これは反射神経やライディングテクニックによって、危険を事故につなげないということです。
反射神経は個人差や年齢の影響があると思いますが、ライディングテクニック(バランスやコーナーリングや、前回出てきた真っ直ぐ走る能力などなど)はトレーニングすることで磨いていけるはずです。あと見落としがちですが、自転車をベストなコンディションにしておく(タイヤ、エアー、ブレーキ、ホイール、各回転部など)というのも、紙一重で自転車を操るために重要な要素です。ちゃんと定期的にメンテナンスしておきましょう。
そしてもう一つが「危険を避ける力」です。これは、そもそも危険な状況を作らない、ということです。大まかに分けて以下の3つの手法を使います。
① ポジショニング:危険な位置関係にしない
② タイミング:危険なタイミングにしない(ずらす)
③ ゾーニング:危険なスポットから距離を取る
このポジショニング、タイミング、ゾーニングを意識することで、自分の置かれている状況を自分でコントロールしましょう。
さて、ここまで偉そうに書いていて恐縮ですが、それでもやっぱり事故になることはあります。万が一への備えもしっかりしておくべきです。
備えは大きく分けて2つ。「自分への備え」と「相手への備え」です。自分への備えは、まずはヘルメットでしょうか。自分のことなので自分の価値観で判断していいと思いますが、もし命を落とすことになった場合、親族や友人がどれだけ悲しむかということは、ちょっと想像してほしいと思います。また、ケガや後遺障害に対応した保険も、もしもの時の助けになるでしょう。
相手への備えとは、つまり物的損害や人的損害に対する補償です。自転車保険加入を義務化する自治体も増えており、高額賠償の事例も増えていることから、賠償責任保険加入は今や必須といえるでしょう。自転車専用の保険や、他の保険商品に付随している場合などがありますが、いずれにせよ個人賠償責任の額は十分大きいもの(1億円以上)にしておくのが安心です。
そして備えつつも、やはり事故自体を起こさないのが一番です。事故は運に左右される部分が確かに存在しますが、技術を持って十分に注意することで、運の占める割合を限りなくゼロに近づけることが可能です。自分の安全はまず自分で守りましょう。
スポーツサイクル歴約30年の自転車乗りで元ロードレーサー。その昔はTOJやジャパンカップなどを走っていたことも。幅広いレベルに触れたクラブチームでの経験を生かし、自転車スポーツの楽しみ方やテクニックをメディアで紹介しています。ローラーより実走、ヒルクライムより平坦、山中より都市部を走るのが好きです。
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