サグ取りの方法は?教えて! MTBのスゴイ人<6>
マウンテンバイク(MTB)のプロフェッショナルがMTBにまつわる素朴な疑問に答えていく本コーナー。プロライダー品川真寛氏の第2回は「サグ取りの方法は?」という質問に答えます。そもそもサグ取りって?という方は前回の「サグ取りって何ですか?」もあわせてどうぞ。(Text & Photo:Masahiro OSAWA)

1982年2月15日生まれ。2004年ロードレース全日本選手権U23クラスで優勝。2005年からオランダ籍スキル・シマノで活動。2007年にパリ〜ルーベ日本人初出場。2012年ジャパンカップロードレース11位を最後に引退。ロード選手引退後はMTBリーグのCoupe du Japon(CJ)に参戦。2015年にMTB全日本選手権エリート10位、2017と2018年にMTB全日本選手権マスターズ優勝。2019年に静岡県伊豆地域にあるメリダブランドの大型展示体験施設「MERIDA X BASE」のマネージャーに就任し、同時にミヤタ-メリダバイキングチームのサポートライダー兼メカニックとしても活動。さらに2019年に設立した地域密着型のロードレースチーム「レバンテフジ静岡」のコーチに就任。スポーツ自転車の楽しさをライダー、施設スタッフ、コーチという3つの立場から伝え続けている。
この人の記事一覧へサグ取り前の準備編
サグ取りを行う際、サスペンション用の空気入れ「サスペンションポンプ」(以下、サスポンプ)が必須になります。サスポンプは通常の自転車の空気入れに比べて、高圧の空気が入れられます。入れすぎた場合に空気を抜く調節が行えるものもあります。完成車でMTBを購入した場合、サスポンプは付属していないので、購入することをオススメします。購入するなら、内圧が目視できるエアゲージ付きの物がいいですね。

用意ができたら次の準備に移りましょう。まずはMTBのロック機構を開放した状態にします。サスペンションの動きをロックするロックアウト機構を開放し、サスペンションの硬さを調整するコンプレッション、サスペンションの戻りを調整する「リバウンド」もそれぞれ緩めた状態、最弱の状態にします(メーカーごとによってマイナス、LOW、うさぎマークなど様々な表示がある)。


なお、下準備として、サスペンション内のエアをすべて抜いてから行うことをオススメします。MTBに乗車していると、スペンションが上下動を繰り返すうちに、パッキンからエアが漏れて、意図しない部分にまで入ってしまうことがあるからです。

空気が移動してしまうことで、サスペンションストロークが本来100mmのはずなのに、80mmに落ちていたということもあります。こうした現象を避けるには、エアを抜いてリセットすることが必要です。
サスペンションに空気を入れる
次にサスペンションに空気を入れます。その際の目安として、サスペンションの裏側に表示された数値を参考にしてください。記載がない場合は、メーカーホームページで調べるか、もしくはメーカーへ問い合わせてください。体重をベースにした参考値から、大まかな設定が行えます。

この後のサグ取りで空気を入れたり、抜いたりして微調整を行っていきますが、それを行う前に必ず空気入れを外しましょう。空気入れを外さずに乗車してしまうと、空気入れに一気に圧がかかってしまい、壊れてしまう恐れがあります。
サグ取りの手順
いよいよサグ取りです。ここから紹介する方法でさらに、細かく調整していきます。手順は次のとおりです。
- <手順1>MTBに乗車してサスペンションが沈み込んだ量(幅)を測定
- <手順2>手順1の数値がサスペンションのトラベル量(ストローク量)に対して20%前後に
例:トラベル量が120mmのサスペンションでトラベル量の20%を目標とした場合、サグは24mm必要。計算式は「120×0.2(20%)=24mm」 - <手順3>20%にほど遠い場合は「サスペンションの空気を抜く」「サスペンションに空気を入れる」のいずれかで対処し手順1に戻る

サグ取りのポイント1
では、ポイントを記していきます。MTBに乗車する際は、ウェア、ヘルメットなど走行するときと同様の装備にします。リュックを背負ったトレイルライドをするならば、リュックを背負った状態でMTBに乗ります。同じ装備にしないと、サグの量が変わってしまうからです。
乗車時は脚を水平にして、ハンドルを握り、立ち姿勢を保ちます。この際、勢いよく乗車して、サスペンションに荷重をかけないようにしてください。

あくまでも自然な乗車を心がけて、自然にサスペンションに荷重がかかった状態にします。サスペンションが沈み込んだら、ゆっくりとMTBから降ります。
サグ取りのポイント2
次にサスペンションに付いているゴムリングの位置を見ます。ゴムリングでサスペンションが沈み込んだ量(サグ)を一目で確認できます。画像の場合には、サスペンションに「%」表示が入っており、一目でわかるようになっています。

沈み込みが足りなければ空気を抜きます。沈み込みが大きければ空気を入れます。20%前後に近づくように何度も繰り返して調整をしましょう。
なお、サグ取りを行う際に、サスペンションにゴムリングがなかったり、サグ取りの際の目安が記されていないがあります。その場合は、タイラップやノギスなど使うなどして工夫をしましょう(タイラップはインナーチューブの磨耗の原因になるので走行時には外してください)。
