2020.6.5
マウンテンバイク(MTB)のプロフェッショナルがMTBにまつわる素朴な疑問に答えていく本コーナー。今回は「マウンテンバイクの選び方・買い方を教えてください」という質問です。プロライダーの井手川直樹氏が答えていきます。
最近、MTBに興味を持ち、購入される方が増えているようで嬉しく感じていますが、そのなかでよく聞かれるのが「どんなMTBがいいですか?」という質問です。
今回はMTBの種類を目的別にご紹介していきます。まずMTBを購入する前に、優先順位を整理してみましょう。
以上の5つの項目を順番に決めていけば、あなたが必要とする最適なMTBが見つかるはずです!
あなたはMTBを使ってどのように楽しみたいですか? MTBには様々な車種がありますが、使用目的をはっきりさせると、MTBは選びやすくなります。使用目的別にオススメの車種をピックアップしてみました。
・主に通勤や通学で使用するが、たまにはオフロードでMTBを楽しんでみたい
まずはMTBで楽しんでみたいという人には入門MTBが選択肢に上がります。入門MTBはフレームにアルミニウムやクロモリ(スチール)を使っていることが多く、10万円以下で購入できるものがたくさんあります。
この価格帯のMTBにはサスペンションを備えないフルリジッドといわれるものもありますが、たまにオフロードでMTBを楽しむなら、サスペンションを備えたものを個人的にはオススメしたいです。入門MTBは街乗りでの使用も想定しているため、完成車のタイヤのブロック形状は低めに設定されていたりします。
・趣味としてとにかくMTBを始めてみたい
専用コースやオフロードでMTBを楽しむためには、それらを想定したスペックのMTBを選ぶ必要があります。前後サスペンションを備えたモデルであれば理想的ですが、機材のスペックが上がれば価格も同時に上がってしまいます。
そんな悩みを解決してくれるMTBが今は各メーカーからもたくさん販売されていて、オススメなのはセミファットタイヤを装着したモデルです。
セミファットバイクは「27.5+(プラス)」というホイール規格で、通常よりもやや太めのタイヤを装着しています。後ろのサスペンションがなくても、オフロードでの走破性や衝撃吸収性をタイヤの太さと容量を増やした空気量により高めているのが特徴です。
・競技には出ないが、上りも下りも楽しんでみたい(エンデューロ系)
上りの軽快性を失うことなく、下りでの安定性を重視したのがエンデューロ系MTBです。最近のエンデューロ系MTBは29インチのホイールを装着し、リア側にもサスペンションが搭載されたモデルが主流となってきています。
サスペンションの動く量を示すストローク量が増えるほど下り向きのバイクとなりますが、エンデューロ系MTBは前後のサスペンションストローク量が130〜170mmとなっており、上りも下りも楽しめる最適な仕様です。 後述するダウンヒルバイクほど多くはないものの、その他のMTBよりはサスペンションストローク量が多くなります。
ちなみに、エンデューロとは「ステージ制の下り系競技」のことを言います。近年誕生した新しい競技ながら世界的な人気を博しています。
各ステージには、計測開始地点(スタート地点)が設定され、各ライダーはあからじめ決められたスタートタイムに間に合うように移動します。時刻が来たらライダーは下りの計測区間を走ります。走り終えると、次のステージへと繋ぐ上り区間(リエゾン)を、スタートタイムに間に合うように各自で移動(基本的には自走、途中リフトを使う場合もあり)します。下り区間では基本的にダウンヒル競技と同様で個人でのタイムトライアル形式となります。この行程を3〜5ステージ続けて行い、計測区間の合計タイムを競うのがエンデューロです。
エンデューロは上り(リエゾン)での軽快性と、下り(計測区間)での安定性が最もバランス良く必要となる競技であるため、使用するMTBにも性能の高さと耐久性が求められます。エンデューロ競技人気の高まりと共に各メーカーがこのジャンルに注力しており、急速に進化しているMTBのモデルです。そのため、選択できるモデルも多く、予算や好みに合わせられるのも魅力の1つです。
・クロスカントリーのようなエンデュランス系の競技をやってみたい、長距離や上りも楽しみたい
上りのパートも多いエンデュランス系の競技では、効率よく走れるように軽量でペダリングロスの少ないMTBが選ばれます。人力で進む自転車ではより軽量な方が人間のエネルギー消費が少なく、楽に走ることができるからです。
MTBのポジションを見ても、下り系とは全く違いますね。急な上りでもフロントタイヤが浮き上がらないようにハンドルのポジションは低く長く設定され、アップダウンが激しいコースでも前後のホイールにバランス良く力をかけられるようトップチューブが長めになっていることなどが特徴です。
・ダウンヒルのようなグラビティ系の下り競技をやってみたい
下り専用に作られているダウンヒルバイクは、激しい下りでの安定性と耐久性を保つためにMTBの剛性を極限まで上げる必要があります。
剛性を上げると同時に重量も重たくなってしまうので、近年では軽量素材のカーボンを使用することも主流となっています。リアのストローク量は180〜210mmほどとなり、モーターサイクルとほとんど変わらないくらいのスペックを持っているのが特徴です。
・体力に自信はないけどMTBを仲間と楽しみたい
昨年あたりから徐々に日本国内でも各メーカーから販売され始めたe-MTB(電動アシストマウンテンバイク)は、世界的には既に主流となっており、とにかく軽快に楽しみたいという方に支持されています。
女性や高齢者の方でもプロライダーと同じようなスピードで楽に上ることができるので、体力に自信がない方でも気軽にMTBを楽しむことができます。前後にはしっかりとサスペンションが付いているタイプも多く、スペックとしては本格的なMTBです。
各メーカーには様々な特色やイメージがあります。購入者が思い浮かべるイメージ、メーカーが打ち出すイメージなどです。
メーカー自体の取り組みも、海外のレースで勝つことで、バイクの性能をアピールしていたり、マウンテンバイクを中心に楽しさを追求していたり、e-BIKEを中心に次世代の遊びをアピールしていたりするメーカーなど色々ですね。
自分はどのメーカーのイメージが好みなのか? これを調べてみたり、知人に聞いてみたりするのも楽しみの1つかもしれません。先入観を捨てて、好みのメーカーを見つけ出してみましょう!
何といっても一番気になるのは価格かもしれません。①でお伝えした「使用目的」に合わせてMTBを選びますが、もちろん、予算感に合ったものを買うということも重要なポイントです。
ただし、これからMTBを長く本気で続けていこうと思われているのであれば、頑張って予算を少し上げて、今考えているMTBの1つ上のグレードを購入されるのが良いかなと思います。
やはり、価格が高いものにはそれなりの理由があります。完成車販売では、同じフレームを使っているのに価格が10万円以上高いというような場合があります。これはサスペンションやコンポーネント(パーツ)などのスペックが高く、性能や耐久性も同時に高くなっているからです。
実際にMTBに乗り始め、慣れてくると「もっと良いパーツをつけておけば良かったな…」と後悔する方も多くいらっしゃいます。MTBを本気で楽しんでいくつもりであれば、最初の一台を少し頑張って買う方が後々、余計な出費を抑えられると思います。
もちろん、高スペックのものが欲しくなるかは分からないけど、とりあえずMTBが一台欲しいという方は、無理のない予算内で買えるMTBでも十分に楽しむ方法はありますので、計画に合ったMTBを選択してみましょう。
最後に重要なのが、どこでMTBを購入するのか? ということです。
MTBやロードバイクなどのスポーツサイクルは、車やモーターサイクルと同じように定期的なメンテナスが必要です。
現代ではインターネットを使った海外通販などが価格も安く購入しやすいように見えますが、やはりメンテナンスや保証がしっかりとした身近なショップで購入されることをオススメします。
ただし、ご自身が購入したいと思ったメーカーのMTBが、お近くのショップでは取り扱いがないと言われる場合もあるかと思います。
その時、まずは各メーカーのウェブサイトなどに掲載されている全国の取扱店リストを確認してから問い合わせしてみると効率的ですね。
お近くのショップで購入されることで、イベントの情報などがもらえたり、みんなで山に走りに行ったりすることでMTBの仲間が増えて、よりMTBライフは充実していくと思います。MTBの楽しさをより多くの皆さんとシェアして、どんどん仲間を増やしていきましょう!
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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