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教えて! MTBのスゴイ人<23>

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e-MTBはどんな人にオススメですか?
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 マウンテンバイク(MTB)のプロフェッショナルがMTBにまつわる素朴な疑問に答えていく本コーナー。今回は「e-MTBはどんな人にオススメですか?」という質問にプロライダーの井手川直樹氏が答えていきます。

今回の回答者 井手川直樹(いでがわ なおき)
 1980年4月22日生まれ。1996年に日本最高峰のクラス、エリートクラスへ特別昇格。今も破られていない最年少記録である16歳で全日本チャンピオンに。2002年から2年間は海外のチームへ移籍しワールドカップを転戦。その活躍からホンダ・レーシング(HRC)のMTBチームの設立当初からメンバーとして活動した。在籍中、2年連続のナショナルチャンピオンやアジアチャンピオンなどを獲得し、数多くの功績を残した。現在も現役にこだわり、2021年度発足の「TEAM A&F」では選手兼監督としてレース活動を続けながら、チーム運営やMTBの普及活動に努めている。

 皆さん、こんにちは。プロマウンテンバイクライダーの井手川直樹(いでがわ なおき)です。

 最近「e-BIKE」や「e-MTB」というワードをよく耳にしませんか? 「あぁ、電動アシストの自転車でしょ? あれ、高いじゃん!」なんて声もよく聞きます。今回、e-MTBはどんな方にオススメなのかを僕が感じたことのなかからお伝えしたいと思います。

e-MTBはどんな人にオススメなのか、所感をお伝えします

時速24kmまでアシスト

 まず日本国内で正規に販売されているe-MTBでアシストされる最高速度は時速24kmです。時速24kmを超えるとアシストは自動的に解除されます。

 これは日本の法律で決まっていることなので、これ以上のスピードでアシストされる自転車は日本の公道では走行することができません。

 電動アシストの速度制限は時速24kmまでと決まってはいるものの、出力の出し方(味付け)は各社によって異なるので、乗り比べてみると各社の特徴が感じられてとても面白いです。

e-MTBは電動アシスト機能が付いたマウンテンバイクのこと。時速24kmまでアシストされます

e-MTBはネガティブな思考を排除してくれる?

 MTBと聞くと、山のなかを気持ち良く走れそう、健康にも良さそう、下りの爽快感が良さそうなど、良いイメージを持たれている方も多いと思います。

 でも、「それでは、MTBに乗りましょうよ!!」とお誘いすると、だいたいの方が「上りがしんどいよ」とか「プロについていけないし迷惑かかるから」などと、なかなか乗り始めてもらうまでに至らないことも多いのです。

 そうしたマイナス面をカバーしてくれるのがまさにe-MTBなのです!

 さすがのプロライダーでも時速24km以上で、ずっと坂道を上ることはできませんので、e-MTBのアシストは時速24kmで十分です。

 e-MTBは、プロライダーと同じテンポで走りながら、なおかつ余裕で会話まで楽しめてしまうところが素晴らしいのですが、何よりも体力や脚力の違うメンバーが一緒に走って時間や行動を共有できるところが個人的にはオススメのポイントですね。

 これはプロライダーに限らず、ファンライダー同士でも同じです。

 例えば家族でMTBを楽しみたいと考えた際に、お父さんと子供はMTB、おじいちゃん、おばあちゃん、お母さんはe-MTBを使用すれば、三世代で一緒に楽しくMTBに乗れてしまうわけですね。想像しただけでもすごく楽しそうだと思いませんか? 体力に自信のない人や初心者など、レベル差があっても一緒に楽しめますよね。

 実際に僕がワールドカップへ参戦するためにヨーロッパへ行ったとき、60〜70代くらいの方がMTBフィールドでe-MTBに乗って走ったり、三世代ライドなどを楽しんでいる方たちをたくさん見てきました。健康的で楽しそうに会話をしながら走っている姿に感動しました。日本でもこうした楽しみ方が増えるといいなと思います。

e-MTBならではの新しい楽しみ方も

 別目線からe-MTBの魅力に触れましょう。もちろん上りが楽なのは当たり前なのですが、僕がe-MTBに乗って思ったのは、電動アシストによって筋力や体力に余裕ができることで、今まで走ったことのなかったハードな上りセクションをこなせることです。

 走行ラインやトラクションのかけ方などを考えながらグイグイ上ってみたりできるところは、新しい楽しみ方だと感じました。自分がすごい体力とスキルを持っていると勘違いするほどです(笑)。

e-MTBなら上りが楽に

 大体のe-MTBは、ECO、ノーマル、ハイパワーの3つのモード設定があります。モードの違いによってアシスト力が変わってくるのですが、ハイパワーになるほどアシストも強くバッテリーの消費量も増えていきます。

 そのため、バッテリーの残量や、セクションやコースに合わせて出力をマネージメントして走り切ることを考える楽しみやスキルも必要になりますね。

ラインナップが増えて手頃なモデルが増えた

 日本国内でもここ2〜3年で各メーカーから様々なe-MTBがラインナップされてきています。

 用途や価格も様々で、カーボンフレームで前後にサスペンションが付いた本格的な競技にも対応できるモデルだと100万円オーバーの車両もありますし、トレイルやオンロードを快適に走るくらいのモデルであれば20万円台の車両も発売されています。

 少し前までは高価なモデルしかなかったイメージのe-MTBですが、各社にラインナップが増えたことで少しずつ手頃なモデルも増えてきていると感じています。

 手頃といっても20万円もするので簡単に買うことは難しいと思いますが、通常のMTBであっても高価なモデルでは20〜100万円ほどします。e-MTBも同等のクラスで同額だと考えると、電動アシストの付いたe-MTBの方がお得なのでは? と思ってしまいます。考え方を変えれば、決してe-MTBは高いとは言えないかもしれませんね。

 もちろん高価なモデルほどフレームやパーツ、電動アシスト本体などが高スペックになりますので、性能も高く魅力的な製品だと思います。

 重量も少し前までは30kg弱ありましたが、今では18kg台に突入するモデルもでてきているほど製品開発が進んでおります。

 これからますます開発技術が進んでいけば、通常のMTBとほとんど変わらないくらいの重さのe-MTBも出てくるかもしれませんね!

 そうなればまた新たな層の方がMTBを楽しめることに繋がり、用途に合わせて選択肢も増えていくので、MTBが生涯スポーツとして日本でも認知される日が来るのではないかと期待しています。

 世界的に今大注目のe-MTBは誰でも楽しめて、体力に自信のない人や初心者の方に特にオススメ!!

 これが今回の質問に対しての私の答えです。最後までご覧いただき、ありがとうございました。