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教えて! MTBのスゴイ人<29>

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子どもをスポーツバイクに乗せたいが、何がオススメですか?
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 マウンテンバイク(MTB)のプロフェッショナルがMTBにまつわる素朴な疑問に答えていく本コーナー。第29回は「子どもをスポーツバイクに乗せたいが、何がオススメですか?」という質問にプロライダーの井手川直樹氏が答えていきます。

今回の回答者 : 井手川直樹(いでがわ なおき)
 1980年4月22日生まれ。1996年に日本最高峰のクラス、エリートクラスへ特別昇格。今も破られていない最年少記録である16歳で全日本チャンピオンに。2002年から2年間は海外のチームへ移籍しワールドカップを転戦。その活躍からホンダ・レーシング(HRC)MTBチームの設立当初からメンバーとして活動した。在籍中、2年連続でナショナルチャンピオンやアジアチャンピオンなどを獲得し、数多くの功績を残した。現在も現役にこだわり、2021年度発足の「TEAM A&F」では選手兼監督としてレース活動を続けながら、チーム運営やMTBの普及活動に努めている。

 皆さん、こんにちは。プロマウンテンバイクライダーの井手川直樹(いでがわ なおき)です。

 お子さんをスポーツバイクに乗せる場合、何がオススメになるかは、お子さんがスポーツバイクで何をやりたいかにもよるので、一概には言えないのが正直なところです。代表的なスポーツバイクであるBMX、マウンテンバイク、ロードバイクの特徴を知ることで、ある程度の目安にはなると思いますのでお伝えします。

子どもが乗るスポーツバイクのオススメは?

BMXレースは子供のレースが盛ん

 BMXは基本20インチの自転車を使い、大きく分けて速さを競うレースと、技を競うフリースタイルとフラットランドがあります。BMXレースと、BMXフリースタイル・パークは、オリンピック種目にもなっています。フリースタイルはストリートファッション的な要素もあり、乗り始められる方が多くなっています。

 レースは専用オフロードコースで、8人で横に並び一斉にスタートして順位を争います。フリースタイルはパークやストリートといったジャンプ系の技をするものと、フラットランドという平らな場所で曲芸みたいに自転車をクルクル回すような技をするものがあります。

 BMXレースは幼少期から始められるので、子供のカテゴリーが充実しているのが特徴です。実際に子供がBMXに乗るとしたらレーサーが多いと思います。早い子は3〜4歳くらいからレースを始めていて、大会でも大人よりも中学生までの子供達の方が参加者が多いほどです。日本の子供は世界選手権でも年齢別クラスで優勝してしまうくらい強いんですよ。

BMXはその成り立ちから子供のレースが盛んです

 子供が多いのでコミュニティがあったり、競技会場でファミリー同士がつながっていくことも多く情報が充実していると思います。ただコースは都心部よりは離れた場所にあることが多く、また全国どこにでもあるという訳ではありません。

 一方でフリースタイルのパークはスケートパークやバイクパークが専用の施設となり都心部に比較的多くあります。ストリートやフラットランドは身近な場所でも練習できるので、乗る場所は色々とあると思います。ただ、乗り方を教えてもらえるところとなると、それほど多くないかもしれません。

 BMXは20インチの自転車で子供が乗りやすく、バイクコントロールが学べるので、幼少期にはオススメの自転車スポーツです。基本的に専用のフィールド内で楽しむものなので、移動の手間がかかりますが、その分安全を確保しやすいのはメリットです。

マウンテンバイクはマルチに使える

 マウンテンバイクはホイール径の種類がたくさんあって身長や年齢に合わせて選択できますし、変速ギアも多く子供たちが普段乗るのに適した自転車だと思います。太いタイヤはカッコ良さもありますし、移動など普段乗りに使いつつ、たまにオフロードにも行って楽しむ、という使い方ができます。一番マルチに使えるので、一台で済ませるならコストパフォーマンスがいいと思います。

 競技としては、クロスカントリー(XCO)、ダウンヒル(DHI)がよく知られていますが、トライアルというバランスを必要とする競技もあります。これは岩場や大きな段差などの障害物を自転車に乗ったまま足を着けずにクリアしていく競技です。場所を選ばず乗ることができますし、どんな自転車を乗るのにも必要なバランス感覚を養えます。

 実際に僕も幼い頃にトライアルを練習していて基礎が身に付きましたし、今でも身体が忘れることのない必要なスキルだと感じています。

MTBは遊び感覚でバイクコントロールのスキルを磨けます

ロードバイクはペダリングスキル向上に

 ロードバイクは脚をきれいに回す事でペダリングスキルを身に付けやすくなり、持久力やペダリングパワーを向上させるのに適していると思います。

 ただ、大人のスポーツバイクとしてはとてもメジャーなロードバイクですが、子供向けのホイールサイズが小さいモデルを用意しているブランドが限られていることや、速く走るためのドロップハンドルの形状が特殊で、ブレーキのかけ方も子供たちが普段乗るにはなかなか難しいと思います。

 速く長く乗る用途にはロードバイクが良いと思いますが、タイヤも細く使用用途はかなり限られてしまいます。知識の少ない子供が公道を走ることのリスクもありますし、安全の確保も身体の小さな子供には少し難しいかもしれません。クローズドされたレース会場などで走行する機会が多い方には良いと思います。

 僕の感覚では中学生以上になったらロードバイクに乗ることをオススメしたいですね。

子供向けのロードバイクはいくつか難しいポイントがあります

幼少期はオフロードで楽しむのがオススメ

 最近の子供はペダル無し自転車(ランニングバイク)から乗り始めて、早ければ3〜4歳で自転車に乗れるようになります。そこからの幼児〜小学生の間は、BMXやマウンテンバイクに乗っている子が多いという印象です。ロードバイクは乗る場所や交通状況の問題もあって、なかなか速く走るのが難しいのと、身に付くスキルがペダリングに偏ってしまいがちです。

 ちなみに僕の場合は小学校5年生でマウンテンバイクのクロスカントリーを始めた後、マウンテンバイクの練習のためにトライアルやBMXレースも始めてスキルを磨き、高校生になってからロードバイクやピストバイクに乗り始めました。

 競技に必要な要素がそれぞれの競技にあるので、目的に合わせて乗るバイクを変えて練習していましたね。

小さいうちはオフロードで楽しみながらスキルを磨くのがオススメです

 現代では世界的にも、大人になってロードの競技で活躍する選手も、小さい頃はBMXやマウンテンバイクに乗ってスキルや基礎を覚えたという人が一般的になっています。子供のうちはオフロードを走る自転車で、バイクコントロールのスキルやバランス感覚を身に付けようという考え方です。僕のオススメとしても、子供の頃は特にオフロードバイクに乗ってもらう方が成長過程でも身体の作りに良い影響を与えてくれると感じています。

 最後までご覧いただき、ありがとうございました。