パンプトラックって何？　得られる技術を紹介
教えて! MTBのスゴイ人＜41＞

　マウンテンバイク（MTB）のプロフェッショナルがMTBにまつわる素朴な疑問に答えていく本コーナー。第41回は「パンプトラックって何？」という質問にプロライダーの井手川直樹氏が答えていきます。

パンプトラックとは？

　パンプトラックとは人工的に作られた凹凸のコブがある波打つコースです。山に行かず平地に設置して手軽に遊べるものとして出来たのでしょう。元々、BMXなどの室内コースにあったものを抜き取って屋外に設置していると思います。ヨーロッパやアメリカでは、ナショナルパークに設置されていて、自転車だけでなくスケートボードやインラインも楽しめます。

山に行く前にパンプトラックでプッシュ＆プルを習得

　マウンテンバイクを乗りこなす上で、地面にバイクを押し付けて引くプッシュ＆プルと呼ばれる技術を習得することがとても大事になります。プッシュ＆プルを習得すれば、こがなくても自転車が前に進み、衝撃を吸収させることができます。

　プッシュ＆プルは、日本語に訳すと「加重と抜重」です。マウンテンバイクは上半身と下半身の加重と抜重を行うことで走ることができますが、パンプトラックではそうした技術を安全に習得することができます。スピードを落とさないことに着目しがちですが、あくまでも課題の一つ。究極の目標は、凹凸に対して自分の身体を動かせるようにすることです。マウンテンバイクはロードバイクと違い、縦や横の動き、つまり3Dの動きに対応できなければなりません。技術を習得しないまま山を走れば怪我のリスクも高まってしまいます。

　オフロードは、凹凸や木の根、岩がありペダリングができない時があるため、ペダリングをせずにバイクを進めたり、下から突き上げられる衝撃を吸収したりしなければなりません。その時に必要なのがプッシュ＆プルの技術です。パンプトラックは同じ形状の凹凸が設置されているので、プッシュ＆プルの技術を習得するにはもってこいです。山の凹凸は同じ形状ではないので練習するのは難しいですよね。

　自治体が所有しているものも含め、パンプトラックが設置されているフィールドはたくさんあります。一周グルっと周るパンプトラックでは、距離やコーナーを変えることもできます。直線状のコブだけのパンプトラックもありますよ。

なぜペダルをこがなくても進む？

　コブは上りと下りの連続でできています。コブの頂点に達した後は下り坂で、下り始めた時に自分の体重を加えることで加速することができます。しかし、自転車が下りきってコブとコブの間に達した時、下りと同じ力を加えたままだと、地面に体重が伝わりスピードダウンしてしまいます。スピードダウンをさせないために必要なのが引く力です。地面にぶつかった時、引く力で地面からの押し返しを吸収することで加速することができるのです。その繰り返しで、ペダルをこがなくても自転車を進めることができるのです。