2019.8.6
マウンテンバイク(MTB)を買ったなら一度は参加してみたいのが「シマノ・バイカーズフェスティバル」ではないだろうか。2019年で29回目の開催を迎えた同大会。今年も長野県富士見町にあるスノーリゾートの富士見パノラマリゾートを舞台に、7月27日、28日の開催2日間でレース、ツーリングを合わせて約70ものイベントが行われた。MTBの祭典といえるイベントに参加した。
イベント初日の7月29日は朝から雨。最高気温も20℃を超える程度で、この時期にしては寒すぎる、あいにくの天気だった。それにもかかわらず、数多くの人が集まった。午前8時から60分XCマラソン、ファットバイク60分XC、シングルスピード60分XCの3種目がスタート。時間が経過するとともに雨水と泥が混じりあい、参加者たちは一様に泥まみれになっていく。レースコースは次第に溶けたチョコレートのように変化していた。
もちろん泥まみれになることを避けるために、レインジャケットで泥対策をする人も見られたが、レーサーパンツにサイクルジャージといういでたちの人が多く、荒れた路面に突っ込み、泥を浴びることをためらわない人たちばかりだったように思う。
実際、参加者からは熱い声も多かった。「一度吹っ切れればいいんですよ。泥遊びが楽しくなりますから」といったものから、「雨になれば滑るので、コーナーへの進入スピードも考えたりして意外に戦略的になる」など、荒れたなら荒れたで、マウンテンバイクならではの楽しみ方が生まれるとも話してくれた。
洗車場でもウェアに染み込んだ泥水を落とすために、水をかけるほうも、かけられるほうも笑顔が見られる。見ているほうとしては悲惨なのだが、過酷な状況を多くの参加者たちが楽しんでいた。
見ているばかりではもったいない。雨とはいえども、せっかくのイベントなので参加しなければ…。そんな気持ちで午後からはスクールイベントに参加。雨だったからか、参加者は自分のみ。それに対して講師は2人だった。ミヤタメリダバイキングチームの品川真寛氏とスペシャライズドのアンバサダー丸山八智代さんがつきっきりで教えてくれるという豪華な時間になった。
教えてもらったのはMTBの取扱いの基本から基本乗車姿勢まで。適正な空気圧のあり方、サスペンションを有効に活用するためのサグ調整の方法を学んだ。
印象深いのは、前輪への荷重のかけ方だった。前輪の荷重が抜けると前輪が障害物にぶつかったときに、タイヤが左右に大きく振れてしまう。これによって転倒しやすくなってしまう。それを防ぐために、顎をステムの上に、腕を直角に曲げて荷重をかけるという姿勢を教わった。この姿勢により、前輪への荷重が抜けなくなるという。
もちろん、急な下り局面でもステムの上に顎を位置する姿勢を維持しようとすると前転のリスクが大きくなり、局面ごとに最適な姿勢を作ることが必要になるが、基本乗車姿勢を学べたことは大きな収穫だった。
MTBスクールは2日間で全3回の開催。見る限り参加者が極めて少なかった。自分にとってはレースに出るよりもツーリングに行くよりも、有意義なイベントとなり、参加者が少なかったのはもったいないと思えた。レースもしくはツーリングへ参加すれば、無料で受講できるイベントなので、来年もイベントに参加するという方には強くオススメしておきたい。
開催2日目の28日。前日の荒れ模様から一転して晴れ。この日は会場に用意された試走コースを走ったり、MTBのツーリングイベントに参加したりした。シマノバイカーズフェスティバルの魅力はレースイベントだけではなく、スクールイベントあり、MTBを借りて試走コースを走ったりと、幅広い楽しみ方ができることだ。
試走コースは単純な道が続くだけでなく、岩場があったり、木の根があったり、急な下り坂があったりと、短い距離ながらも走り応えがあり、e-MTBを含めて最新のMTBの性能を試すことができる。試走コースのすぐわきには、メーカー各社が最新のMTBやシューズ、ヘルメットなどを展示していたり、地元の食材が味わえる「ビストロ」コーナーのバイカーズマルシェがあり、場内にいたアルパカは多くの人を癒していた。
そしてこの日、何より自分にとって印象深いイベントになったのが、トレイルツアーだった。参加したのは「牧場!湿原!丸金林道下り坂!贅沢トレイルツアー」。ゴンドラに乗って、下りメインで林道をMTBで楽しむというツアーだ。
ゴンドラに揺られて15分。頂上から先はずっと下りを楽しめるコースだ。林道という名が付くし、道幅も広そう。きっと緩い取材になるはずと思っていたのだが、大きな間違いだった。頂上からほどなく、難易度の高い道ばかりが続く。林道とは名ばかりで、そのほとんどは獣道のシングルトラックだった。前日の大雨の影響で地面はぬかるみ、つるりと滑る箇所が多々あり、荷重バランスをうまくとらねば前転しかねないような場所もいくつもある。コース概要を後から見たら、最上級のテクニックが要求されるコースとして紹介されていたので、どうやらコース選びを間違ってしまったようだ。
それでもなお、このツアーに参加して後悔したというわけでもない。前日にMTBスクールで教わったテクニックを実践してみると、安定して下りをこなせるようになっていた。テクニカルなコースを転倒せず、うまくこなすにはどうしたらいいか、それを常に考えて、動きを修正して、課題をこなせると、MTBが非常に楽しいものだと感じられる。長野県のトレイルを走るなど、なかなかできないことであり、非常に有意義な時間を過ごせた。
最後に2日間通じて参加者が最も熱狂したイベントについて触れたい。それは初日、2日目のイベント最後に行われたお楽しみ抽選会だ。雨が続き低温となった初日でも多くの人が抽選会まで残り、熱くなった。そのわけは、賞品がとてつもなく豪華だったからだ。それぞれ買えば10万円は下らないようなものばかり。それが立て続けに出品されるとなれば盛り上がらないわけにはいかないのだ。
豪華賞品に当たらずとも、お持ち帰りできるのが思い出だ。自分の2日間を振り返ると、初日にはライドスクールでの「学び」があり、2日目はエキストリームなコースで転倒しないために「集中」の日となった。70ものイベントがあり、参加者ごとに抱く感想は大きく変わるはず。何度参加してもパターンを変えれば飽きることがない。100人いれば100通りの楽しみ方があり、毎年違う楽しみが味わえる。それが、シマノ・バイカーズフェスティバルの魅力といえるのではないだろうか。
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