2018.10.19
東日本大震災の被災地復興支援を目的としたサイクリングイベント「CYCLE AID JAPAN」(サイクルエイドジャパン)の2018年大会となる「CYCLE AID JAPAN 2018 in 郡山 ツール・ド・猪苗代湖」が13日、福島県で開催された。秋晴れの空のもと、1140人が出走した。移り変わる景色、地元の味を堪能するともに、走ることで被災地への支援ができるシステムにも感銘を受けた。
サイクルエイドジャパンは、2012年に始まったサイクリングイベント。当初は東日本大震災で被災した福島、宮城、岩手県を自転車で走るイベントだったが、2014年からは福島県で単独開催。「ツール・ド・猪苗代湖」の名の通り、猪苗代湖を回るサイクリングイベントとして続いている。
2018年大会は昨年同様の3コース。郡山市の温泉地となる磐梯熱海の郡山スケート場をスタート・ゴールとして、125km、85km、50kmの3コースが用意された。Cyclist編集部はこのうち、猪苗代湖をぐるっと左回りで一周する“イナイチ”を体験した(85km コース)。
7回目の開催を迎えた10月13日。大会当日の早朝は非常に寒く、朝5時過ぎで10℃に満たない。スタート地点の磐梯熱海の標高は300mほどだが、地元の人に聞いたところ、この時期から福島は冷え込み始めるとのこと。冬本番が迫っていることがわかる。
しかし、会場に集まった人たちは、寒さよりもイベント自体が楽しみといった様子。スタートまでに、仲間と談笑したり、メッセージボードに書き込んだり、思い思いの時間を過ごす。イベントでは出走前にマナー講習会も行われ、テールライトの点灯やベルの装着、一列走行などの呼びかけも行われた。
スタートは125kmコースを先頭に、85km、50kmと続き、小集団をつくりながら出走していく流れ。印象に残ったのは、スタート直前がレースのような雰囲気だったこと。会場が一瞬静まり、スターターピストルの号砲とともに選手がスタートラインを切っていく。ちょっとした冒険に挑むかのようで、レースイベントの緊張感を彷彿させる。
スタートすると、ほどなくして磐梯熱海の温泉街が現れる。隊列を組みながら走行していると、前方から「頑張って」との声援が聞こえ、歓迎されたサイクルイベントだとわかる。
この後も、沿道から声援を送ってくれた人を何度か見かけたが、こうした心意気がうれしくてリピートしているという参加者もいたほど。猪苗代湖南部では、一年で一番多く人がやってくるイベントで、参加者のみならず、地元に人にも大きな意味を持つイベントのようだ。
85kmコースはスタートからほどなくして、猪苗代湖に向かう約10kmまでの道のりが緩い上り。登坂区間を乗り切れば後は、ほぼ平坦な道のりが続く。最も心が躍ったのは、壮大な景色だ。日本で4番目の大きさの猪苗代湖が目の前に現れ、さらに走行すると、標高1819mの雄大な磐梯山も見えてくる。そこに田園地帯も加わると壮観だ。
いずれも中途半端な大きさではない。磐梯山、猪苗代湖、田園地帯と、目にする景色、すべてのスケールが大きい。東京近郊ではなかなか味わえない。心なしか空気もおいしく感じられるから不思議なものだ。
湖南近くにたどり着くと、湖沿いに起伏のある林道も出現して、移り変わる景色が走っていて楽しい。約61km地点にある第2エイドステーションの少年湖畔の村ASを過ぎると、湖の際を並走するような道路も出てくる。湖の奥には磐梯山が見え、スケールの大きな景色の組み合わせが増えていく。車通りも少なく、景色を堪能しながら、走れるのが大きな魅力だ。
サイクリングイベントには、エイドステーションの楽しみもある。85kmコースの給水・補給ポイントは全部で6カ所。エイドステーションでは、唐揚げ、おにぎりと続き、第2エイドで湖南名物の湖南高原そば、かりんとうが振舞われた。
最後の第3エイドとなる上戸ASでは、郡山名物のクリームボックスも。厚切りのパンにミルク風味のクリームをのせた菓子パンで、ハマるおいしさだ。
85kmを走るなかで、補給食の量は、圧倒的に足りないといったことはなく、仮にお腹が減ってどうしようもなくなれば、コンビニへ駆け込むもできる。コースの難易度も含めて、初級者から中級者まで楽しめるライドイベントだと感じた。そして、印象的だったのが、各エイドでかなり長らく談笑し続ける参加者たちの姿だ。このイベントの醍醐味がどこにあるのか、参加者の声にも耳を傾けてみよう。
第1エイドで、ビブスを表裏反対に着ていた筆者を見て「ビブス反対に着てますよ」と話しかけてくれたチームヨシノの4人組。うち2人は今年で3回目のリピーター。「仲間と一緒に走れるから」「沿道の応援がうれしくて」と参加の動機を話してくれた。
さらに、第1エイドでは、KhodaaBloom(コーダーブルーム)のジャージを来た女性集団も発見。声をかけたところ、コーダーブルームブランドを展開するホダカの社員だった。よく見れば、ホダカの別ブランド「NESTO」(ネスト)のジャージを身にまとった人たちもいる。かねてから参加しているようで、ブランドの垣根を越えて参加する数少ないイベントということだが、ホダカ社員は本当に自転車が好きなようだ。ちなみに、ホダカの女性社員からも「ビブス反対に着てますよ」と指摘された。
サイクリングイベントでは何か目を引くものがあると会話が弾むという法則をこの日初めて知ったのだった。次回サイクリングイベントを取材することがあったら、被り物を着けて参加しようと本気で考えている次第。取材がはかどる、はかどる。
第2エイドでは、ピンクのジャージがひと際目立った「ディベルティーレ」のみなさん。栃木県、福島県から参加しており、近県のサイクリングイベントに出場しているとのこと。仲間と走るのが楽しいから、というのが参加理由で、猪苗代湖の景色の良さも堪能していた。
とりわけ85kmコースは平坦が多く、参加者の脚のレベルを問わないところがいいかもしれない。絶景広がるコースを仲間と走り、エイドで舌鼓を打ちながら語らいつつ、楽しい時間を過ごすのは、サイクリングの醍醐味だろう。
ゴール後にも楽しみが待っていた。参加者には、豚汁の「つるりんこ鍋」のほか、地元で有名な茶菓も。柏屋のまんじゅうとかんの屋の三春ゆべし、会津のご当地キャラクターのあかべぇをかたどった、「あかべぇサブレー」が配られた。開会式で「エイドステーションの食べ物は試食と思ってください。帰りにお土産として買ってもらうのが、もうひとつのエイド(援助)になります」と実行委員から挨拶があったが、配られたものは、正にそれを示すものだと悟った。
忘れてならないのは、このイベントが、東日本大震災の復興支援として始まっていることだ。イベントでは、走行距離1kmに対して10円が寄付でき、125kmコースを選択すると1250円分を支援できる。寄付先は、東日本大震災、北海道胆振地震、2018年7月の豪雨の被災地など5つから選択し、ゼッケンシールをボックスに入れて、寄付先を選ぶ仕組みだ。
自転車で走ること自体が、人のためになるという経験は筆者自身これが初めて。こういった仕組みはとてもいいなと思えた次第だ。景色を楽しみ、地元の味を楽しめた今回。次は語らう仲間とともに、いつしか参加してみたいと思う。
(cyclistより転載)
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