2020.1.14
自転車販売店・ディーラー向けの試乗イベント「SBAA オフロードバイク ディーラー サミット」が11月12日、13日に静岡県の「御殿場MTB&RUNパークFUTAGO」で開催された。ここでは、自転車業界の人材育成を手がける「drawer」(ドゥロワー)代表として、現在、各種スクール事業や行政や各種団体での講演、自転車関連企業へのコンサルティングサービスの提供する一方、日本で唯一のUCI公認メカニックとして、国内外で20年以上、レースシーンで活動している山路篤氏が12日に行ったセミナー「MTBメンテナンス習得事情」の模様をリポートする。(Text & Photo by Masahiro OSAWA )
ロードバイクの売行きに陰りが見え始めた今、MTBを本格的に取り扱うのも、良い選択になる。一方で「毎年規格が変わり、フォローしていくのが大変」「機材の取扱いが難しい」と思う人が多いと触れたうえで、ここ10年の間にスポーツバイクに起きた変化を示す4つのキーワードを挙げた。それは「サスペンション」「チューブレスレディ」「スルーアクスル」「ディスクブレーキ」などのMTBでは当たり前の装備が、クロスバイクやロードバイクにも採用され始めたことである。
山路氏は「多くが液体の話につながる」と指摘する。ディスクブレーキやサスペンションに使われるフルード、チューブレスレディのシーラント剤は液体であるからだ。これらに関する知識があれば、MTBの取扱いにおいてアレルギーはなくなるという。
なかでも、サスペンションの取り扱いは難しいと思われがちだ。中に入ったフルードが劣化しているかもしれない、水が混入してしまったかもしれない、フルードの流動音と異音の区別がつかないことがある。さらには、販売店側で「サグ取り」(サスペンションの沈み込む量を調整する作業)を乗り手に合わせてきちんと行う必要もある。
こうした様々なトラブルや対処が必要になるが、メカニカルトラブルについては、自分ですべてをやろうとするのではなく、メーカーサービスに任せて構わないと考えてもいいと話す。
任せるといっても、異常を見過ごすのは問題だ。サスペンションでは、サスペンション内のスプリングシステムの異常が起こる場合があるが、サスペンションの縮みから、見た目で異常を発見できるはずだという。販売店側はこうした異常を見過ごさないことが重要だと山路氏は話した。
チューブレスレディについては、「ビードが上がらない」「シーラント剤の取り扱いで手がべたつく」といったことから敬遠されることある。しかし、タイヤの転がり抵抗の軽減や乗り心地の良さが大きく向上するなど、乗り手のメリットは大きく、是非とも勧めて欲しいと話す。「ビードが上がらない」事態に対処できれば、それほど面倒なことはないと話す。
説明に多くの時間が割かれたのが油圧ディスクブレーキだった。油圧ディスクブレーキの原理と仕組みを説明し、内部の仕組みを理解しておくことが重要と話した。加えて、メタル、レジンといったブレーキパッドでブレーキングパワーが変わり、ディスクローターのサイズの変更によってブレーキングパワーに大きな違いが出ると説明した。
最後に不具合にどう対処すべきかが重要になると話した。一番のトラブルが制動力の低下について。制動力の低下は、油圧ディスクブレーキの内部機構に、空気が入ってしまうこと原因だとする。空気が入ってしまうと、力の伝達が不十分になるという。それを避けるために、できるだけ細かい頻度でブリーディングをしたほうがいいと話した。
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