2021.6.11
スポーツバイクに乗り始めると自力で移動できる行動範囲が一気に広がり、それまでの世界が狭く感じるようになります。観光地もそうで、自転車で巡ると、電車やバスを使った移動と違い、意外と狭い範囲に凝縮されていることがわかります。その例の一つが横浜で、みなとみらいから歴史ある港町と、様々な顔を併せ持つエリアが25kmほどで巡れる範囲に収まっています。スポーツバイクを始めたばかりでも安心の、短い距離で横浜を濃厚に満喫できる“みなと横浜ポタリング”をご紹介します。
オススメポイント | 自転車でのんびり走るのにちょうど良い範囲に、魅力的な観光スポットが凝縮されている港町・横浜。美味しいものもたくさんあるので、カロリーを消費しながら横浜をたっぷり味わい尽くしましょう。 |
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レベル | ★(初心者向け) |
距離 | 24.9km |
獲得標高 | 275m |
出発・終着地 | 桜木町 |
立ち寄りグルメ | ZEBRA Coffee & Croissant MARINE & WALK YOKOHAMA、ザ・ホフブロウ、かをり、景徳鎮 |
立ち寄りスポット | MARINE & WALK YOKOHAMA、横浜赤レンガ倉庫、山下公園、横浜港シンボルタワー、根岸森林公園、港の見える丘公園、横浜中華街、MM21地区 |
スタート地点は桜木町駅。“横浜ポタリング”というと横浜駅をイメージするかもしれませんが、横浜駅周辺は道路が複雑な上に車道の交通量も多いので、桜木町駅を発着点にすることをおすすめします。
出発したら、横浜港を代表する歴史的建造物「横浜赤レンガ倉庫」を目指して海沿いへと向かいます。「みなとみらい」の観光スポットが集まっているだけでなく、道の幅も広いので、海沿いを走っているだけでもワクワクする“横浜感”が味わえます。
途中、赤レンガ倉庫の手前にあるショッピングモール「MARINE & WALK YOKOHAMA」に立ち寄ります。一般の観光客も行き交う観光スポットですが、ここに是非サイクリストに立ち寄ってほしいスポットがあります。東京近郊のサイクリストにはおなじみの、神奈川・相模原市は津久井町にあるカフェ「ゼブラコーヒー&クロワッサン」です。
津久井本店と同じくサイクリストウェルカムな店づくりで、2階という立地ながら、自転車を押し運びしやすいように階段のサイドにスロープが設けられています。
自転車の駐輪はもちろん店内。当日も、すでにサイクルジャージでくつろぐサイクリストと、ラックには数台の自転車がとめられていました。
市街地から離れたところにあるカフェでなく、一般人が行き交う横浜のカフェで愛車とともにコーヒーを楽しめるのはなんだか不思議な感覚。いつもだったら人目を気にしてしまう全身サイクルウェアのいでたちも、ここではむしろそれが当たり前のような雰囲気です。
ゼブラコーヒーの名物、巨大なクロワッサンも健在。ただ、うっかり食べるとランチに響くので、ランチに備えてコーヒーのみで済ますか、遅めのスタートでここでランチとするか、ここは少々計画を要します。
ゼブラコーヒーが入っている「MARINE & WALK YOKOHAMA」を出ると、そのすぐ隣が横浜赤レンガ倉庫です。明治末期から大正初期に国の模範倉庫として建設され、長い年月を経て2002年、当時の面影を残したまま文化・商業施設として生まれ変わりました。
この赤レンガ倉庫は「横浜港大さん橋国際客船ターミナル」に面した場所にあり、タイミングが良ければ、停泊している国内外の豪華客船を間近に見ることができます。
ちなみに、赤レンガ倉庫の敷地は自転車の乗り入れが禁止されていますので、下車して押し歩きをするようしましょう。
赤レンガ倉庫をあとにして海沿いの道を走り、横浜の開港の地で、いまは官庁街となっている開港広場方面へと向かいます。
開港広場は1854年に日本の開国を約束した「日米和親条約」が締結された場所で、その横浜開港資料館や、横浜港で生糸・絹産業及び貿易の振興的役割を果たしたシルクセンター、港湾関連企業等、かつての港町を思わせる風情が漂っています。
ここでぜひランチに立ち寄っていただきたいレストランがあります。1947年創業の老舗「ホフブロウ」。シルクセンターの脇の道、水町通りを入っていったところに佇む「古き良き時代の港町ヨコハマ」を感じられる洋食屋です。
横浜港に寄港する外国船の船客や船員に愛されたという「港ヨコハマ」に育てられたレストランで、看板メニューである「スパピザ」もそんな料理の一つ。たっぷりのチーズがかかったピザのようなスパゲティは外国船の乗組員からの要望を受けて考案されたものだそうで、ここでしか味わえない人気メニューです。
そしてデザートはホフブロウからほど近い、同じく横浜で愛され続ける老舗の洋菓子店「かをり」のレーズンサンドがおすすめ。高級ブランデーにたっぷり浸し、時間をかけて作り上げたカリフォルニアレーズンと、口あたりの良い上品な甘さのクリームを、上質なバターを使ったクッキーで挟んだ逸品です。
がっつりランチを食べたばかりで、すぐに食べられないという人でも大丈夫。サイクルジャージのバックポケットにすっぽり入るサイズなので、休憩用の補給食として携行しても良いでしょう。
ランチ後は、山下公園通りを本牧埠頭方面へと走ります。その途中、「ホテルニューグランド」の前を通過します。
1927年開業、異国文化の窓口として横浜と共に歩んできた同ホテルは、数々の国賓が利用した日本を代表するクラシックホテルの一つです。ちなみにニューグランドは、ドリアやスパゲッティナポリタン、プリン・ア・ラ・モードなど後に広く知られる料理が誕生した場所としても有名です。
山下公園エリアから本牧埠頭へ向かって走ることおよそ5km、埠頭の「D突堤」に到着しました。本牧埠頭はA~D突堤があり、D突堤は埠頭の最奥に位置します。
ここに来るまで経由する道幅の広い臨港道路は、平日は多くのトレーラーが行き交う、足を踏み入れにくいコンテナエリアですが、往来が停止する休日はただただ広く、走りやすい道になります。華やかな横浜とは雰囲気が異なりますが、これも港町としての横浜の一面です。
次は異国情緒溢れる山手町方面を目指します。本牧からそのまま最短距離で向かうこともできますが、観光地としてはあまり知られていない、“関東屈指の名廃墟”といわれる根岸競馬場跡(横浜競馬場跡)をご紹介します。
正確には「旧根岸競馬場一等馬見所」で、日本初の洋式競馬場として幕末から76年間に渡って賑わいを見せたあと、戦後の米軍による接収を経てこの一角だけが残されました。建物に施された装飾に垣間見える、かつての栄華。ちょっと遠回りしても一度は訪れてほしい名所です。
根岸から山手町へ2kmほど、さらに小高い丘を上っていくと山手町が見えてきます。
山手町は横浜の開港後に外国人居留地とされた区域で、当時の洋館がいまなお多く残る異国情緒漂うエリアです。全体が高台にあるので海や街並みの眺望も良く、とても気持ちの良い散策コースです。
保存され、一般公開されている邸宅や庭園の他に、カフェとして利用されている邸宅もあるので、気になった建築物があったら休憩がてら立ち寄ってみるのも良いでしょう。
山手エリアのフィニッシュ地点は「みなとの見える丘公園」です。イギリス海軍病院の跡地を整備した公園で、山下公園と並ぶ名所の一つです。
歌謡曲『港が見える丘』が公園名の由来とされ、園内には歌碑が建てられています。その名の通り、昼は横浜ベイブリッジや横浜港一帯を一望でき、夜は夜景が楽しめる人気のスポットです。
夕食の前に、ぜひ訪れてほしい名所をご紹介。「関帝廟」(かんていびょう)と「媽祖廟」(まそびょう)です。昼間は観光客で混雑していますが、夜は比較的人が少なくゆっくり観光したり、写真を撮ることができます。
また、夜になるとライトアップされるので、昼間とはまた違う雰囲気を楽しむことができます。赤い灯りがとてもエキゾチックで、まるで中国に来ているかのような錯覚を覚える空間です。
さて、お待ちかねの夕食です。中華料理には上海、北京、四川、広東といった種類があり、それぞれにおすすめの店舗がありますが、今回は本場四川の辛さが味わえると評判の「景徳鎮」をチョイス。日本ではあまりなじみのない香辛料等がふんだんに使われた麻婆豆腐は、味覚フル活用で“中華感”を味わえます。
中華街はみなとみらい線の駅もあるので、ここをゴールとして輪行で帰宅しても良いですし、飲酒をしていなければ、もうひと走りしてみなとみらいの夜景を楽しみながらスタート地点の桜木町駅まで戻るのも良いでしょう。
これだけ様々な名所を巡って総距離約25km。自転車を始めたばかりの人でも気軽に、かつ濃厚に楽しむことができます。自転車で“ディスカバー近所”、始めてみませんか?アウトドアメーカーの広報担当を経て、2015年に産経デジタルに入社。5年間にわたって自転車専門webメディア『Cyclist』編集部の記者として活動。主に自転車旅やスポーツ・アクティビティとして自転車の魅力を発信する取材・企画提案に従事。私生活でもロードバイクを趣味とし、社会における自転車活用の推進拡大をライフワークとしている。
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