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ビギナーもリピーターも楽しめるサイクリングのフルコース

Cycling Course厳選サイクリングコース

神奈川・三浦半島サイクリング
ビギナーもリピーターも楽しめるサイクリングのフルコース

 景色が良く、美味しい“補給食”が随所に散りばめられている─そんなサイクリングの魅力が詰まった三浦半島。サイクリストならば、誰もが一度は訪れてみたいという人気のサイクリングエリアだ。さらに最近はエリア全体でサイクリストを歓迎する動きも高まっており、一度訪れたことがある人でも二度、三度と訪れるたびに新たな魅力を発見できる。そんな懐の深い三浦半島サイクリングを紹介する。
景色もグルメも楽しめる三浦海岸サイクリングは女性にも人気
オススメポイント軍港・横須賀の歴史と三浦の絶品海鮮、おいしいスイーツを味わえる
レベル★★★(上級者向け)
距離69.7km
獲得標高563m
始発・終着地始発・JR横須賀駅/終着地・鎌倉駅
立ち寄りグルメ地魚料理 松輪/松輪エナ・ヴィレッジ(海鮮丼)、カフェ&レストランマーロウ秋谷本店(プリン)
立ち寄りスポット観音埼(かんのんざき)公園浦賀の渡し、城ヶ島・ウミウ展望台

プランニングは多種多様

神奈川県南東部に位置し、東京湾と相模湾とを分けるように太平洋に向けて突き出している三浦半島。都心からなら、JR横須賀線や京浜急行電鉄(京急)などを使えば1時間強でアクセスできる。サイクリングコースは概ね海岸沿いの道を行くルートだが、きついアップダウンはそれほどなく、道もわかりやすいのでビギナーでも安心して走ることができる。
JR横須賀駅に到着
今回走るコースはJR横須賀駅を出発し、半島を時計回りに走って75km先のJR鎌倉駅を目指すルート。左側通行であることを踏まえると時計回りのが方が眺望が期待できるが、当日の風向き次第でスタート地点を鎌倉側に変更し、反時計回りで走るという判断もできる。またスタート地点を久里浜駅にしたり、ゴールを逗子駅にしたりと走力に応じたプランを組み立てることができる。脚力に自信がある人は自宅から自走し、三浦半島のどこかの駅で仲間と待ち合わせて走るという柔軟なプランニングが可能だ。
横須賀海軍施設に停泊する軍艦を横目に出発
下り立ったJR横須賀駅は、米国の海軍施設を望むヴェルニー公園に隣接する駅。軍艦を目にするのが初めてという人にとっては、停泊中の軍艦が並ぶ光景に“異国感”を感じるようだ。
観音埼灯台に向かう途中にある砲台跡。かつてここは東京湾要塞の一角だった
よこすか海岸通りをまっすぐ走り、半島の先を目指す。スタートから8kmほど走ったところで山深くなり、辺りの雰囲気が少し変わる。明治時代、東京湾要塞の一角を担っていた観音埼(かんのんざき)公園だ。公園内には今なお9つの砲台跡が残り、当時の面影を漂わせている。 園内には「なぜこんな細いの?」と思うような道があるが、これも要塞地帯の名残。当時いたるところに切り通しやトンネルが作られ、地層が露出したままの状態なのだ。
要塞地帯だったため崖や切り通しが多く、地層が露わになっている
自転車を下りてちょっと探検
その切り通しを抜けると、現れたのは観音崎灯台。日本最古の洋式灯台だ。白色八角形の中型灯台で、日本の灯台50選にも選ばれている。灯台内部の見学も可能で(参観料:大人200円、小人無料)、灯台の最上階からは浦賀水道を行き交う船舶や対岸の房総半島を一望することができる。
切り通しをくぐり抜けると観音崎灯台が現れた

表情豊かなコースプロファイル

舞い散る桜の中をサイクリング
探検を兼ねた休憩を終えて、再び漕ぎ出す。ときは春。風に乗って舞い散る桜の中を潜り抜ける。サイクリングが最高に気持ちよい季節だ。 観音埼から5kmほど走ったところで現れたのは、「浦賀の渡し」。浦賀港の東西の町を結ぶ渡し船で、地元では「ポンポン船」の愛称で親しまれている。時刻表は無く、渡船が対岸にいるときは船着き場にある呼び出しボタンを押して呼ぶシステム。わずか数分ほどの船旅だが、この“プチ船旅”がほどよい旅情を醸し出してくれる。
浦賀で運行されている渡し船でプチ船旅
地元では「ポンポン船」の愛称で親しまれている
料金は大人200円、子供100円、そして自転車は1台50円。なのでサイクリストは250円となる。嬉しいことに船内には自転車を置くスペースが2台分設けられており、前輪を固定すれば安定して運搬できる。
自転車を置くスペースが設けられていてうれしい
わずか数分間の乗船だけど、旅感アップ!
向かい風が強い場合は前を行く人と距離を縮めて風の抵抗を避けながら進もう
米国のペリー提督率いる「黒船の来航」で知られる浦賀。途中、「開国橋」という名前の橋や「ペリー公園」が目に入り、かつてここが海外に向けた日本の玄関口だったこと感じる。 そんな歴史の舞台を抜け、しばらく海岸に沿って走る。この日は少し強めの向かい風。こんな日に集団で走る場合は、前を走る人を風よけにして走ると空気抵抗を低減し、楽に走行できる。ポイントはなるべく前の人の後輪に近づくこと。その際、前を走る人は手信号と声出しに注意しよう。指示を出すタイミングも早めを心がけ、後方に次の動きを予測させることが大切だ。
走りやすいとはいえ、ここは半島。ときどき現れるアップダウンはがんばりどころだ
スタートから30km地点、三浦半島の南端へさしかかる辺りから少しずつアップダウンが始まる。これも三浦半島の長所(?)の1つで、上りの練習ができるような坂が忘れた頃に登場する。平地続きの道をピリリと引き締める、いわばスパイスのような存在。ビギナーの中には坂が苦手という人もいるかもしれないが、キツさを感じるところで終了する坂ばかりなので、ダンシングなどを取り入れながら頑張ってペダルを踏んでみよう。
視野に広がるキャベツ畑と海。坂を上った先に広がる景色が気持ちいい
半島の東端、剱埼灯台付近では少し高い丘に上ると、一面に畑が広がり、その先に海が見えた。三浦は冬暖かく、夏涼しいという絶好の気象条件に恵まれた温暖の地。一年を通してさまざまな野菜を造ることができ、そのおいしさから「三浦野菜」というブランド名でも知られている。

旬を味わう三浦グルメ

走り始めて30kmを過ぎたところで江奈湾に到着。時間は11時半、あらかじめ狙いを定めていた「松輪エナ・ヴィレッジ」でランチをいただく。
ランチスポット、江奈湾の漁協が運営する「松輪エナ・ヴィレッジ」に到着。バイクラックが完備されているのがうれしい
エナ・ヴィレッジは地元の漁協が運営するレストランで、“黄金のサバ”として有名な「松輪サバ」のほか、季節折々の旬の地魚料理が堪能できる。少しわかりにくい場所にあるため、三浦を訪れるサイクリストにもあまり知られていない穴場スポットだ。ただ、駐輪用のバイクラックを設置しており、店舗的にはとってもサイクリストウェルカムなのだ。 店主によると、おすすめは冬~春にかけがて旬の金目鯛があふれんばかりに乗った「キンメとメバチ鮪の二色丼」。2,500円とちょっと値段もお高めだが、地元でも定評のあるお店。ここは贅沢に飛び切り美味しい“旬”をいただこう。
地元の畑で採れた「三浦春キャベツ」が先出に。新鮮で甘い!
春が旬の金目鯛と地元で水揚げされたマグロとブリを贅沢に使った「キンメとメバチ鮪の二色丼」
出てきたのは今朝獲れたばかりという金目鯛。頬張った瞬間、口の中に広がる甘さに思わず目を見張る。他にも旬の魚の刺身が添えられており、味覚を飽きさせない。先出の新鮮なキャベツといい、三浦の旬をまるごといただく贅沢さに、地元の人たちの食に対する愛情を感じる。名物の松輪サバは脂が乗る秋が旬だというが、これでも十分ほっぺたの落ちる美味しさ。秋になったらどんなに美味しくなるのか。ここにはまた足を運ばなければならなそうだ。
名物の「松輪サバ」の炙り。旬は秋だそうだが十分美味しい!
ふっくらサクサクのアジフライ
満腹のおなかを抱え、「ちょっと食べすぎたかな~」と思っても大丈夫。サイクリング中はどんなに食べてもすぐに走るエネルギーへと変わる。ただし、食事後、消化が始まるまでは30分ほどかかるため、急に走り出さずにゆっくりと漕ぎ出すようにしよう。といいつつ次なる目的地、食後のデザートを目指す。
次に目指すはデザート!
宮川公園のマイルストーン「マグロと大根」
やってきたのは大きな風力発電施設が目印の宮川公園。ここでは新しく設けられたモニュメント、「マグロと大根」がサイクリストを出迎える。これは「マイルストーン」という記念撮影用モニュメント。各設置場所の地域特性を活かしてデザインされたブロンズ像で、三浦半島に全8カ所設置されている。台座の上部にはQRコードが表示され、スマートフォンなどを利用して周辺の観光情報を閲覧することもできる。隣接する場所にはロードバイク用の自転車ラックやトイレなどが設置されており、サイクリストの休憩の目印にもなっている。
宮川公園の下にひっそりと佇む「みやがわベーグル」。ここにもバイクラック完備
目的地は公園ではなく、この公園の下に位置する「みやがわベーグル」。谷間にかかる橋を渡り、谷の底へと向かう坂を下る。すると、知らなければ見過ごしてしまいそうな佇まいの店舗が出現する。 ここは、三浦の地産地消にこだわったベーグルやドリンクを販売するお店。地元で人気のパン屋が手掛けたベーグルを使い、三浦野菜を練りこんだクリームチーズや地元で採れた蜂蜜などを使用する。昨年オープンして以来、土日のみの営業にも関わらず足を運ぶ客が後を絶たない。
三浦野菜を練りこんだクリームチーズなど地産地消にこだわったお店
メニューは「ピンク」や「ダイダイ」といったクリームチーズの色で表現。ピンク色を作り出すビーツや橙色を作り出す人参ジャムなど、使われている野菜は全て道中で目にしてきた畑で採れたものだというから驚きだ。
地元で人気のパン屋、「充麦」製のベーグル 
ジンジャーエールとクリームチーズにラムレーズンが入った「ベージュ」
もと来た下り坂は今度は上り坂に…
ベーグルの大きさは小ぶりで、選ぶメニューによってはデザート感覚で楽しめる。ジャージのバックポケットにも入るサイズなので、ここで今後の補給食を調達しておくのも良いだろう。ドリンクもコーヒーの他に、地元で採れた生姜がたっぷり入ったジンジャーエールやレモネードも取り揃えている。暑い夏の日に立ち寄ったら、一気に元気になれそうなお店だ。

時速10kmの濃厚サイクリング

元気も回復!海を横目に足取りも軽い!
美味しいものを堪能し、パワーも充電完了。足取り軽く次の目的地、城ケ島を目指す。城ケ島は三浦半島の南端、マグロの水揚げで有名な三崎に面した離島で、城ヶ島大橋で半島とつながっている。城ケ島大橋は有料道路だが、歩行者や自転車は無料で通行可能。橋の上からは三崎漁港を一望することができる。 橋を渡ってすぐのところにあるのが城ケ島公園。園内にあるウミウ展望台からは、荒々しい岩礁地帯など大洋に面した島ならではの絶景を目にすることができる。
三浦半島の南端、城ケ島のウミウ展望台。赤羽根海岸の断崖に向かって「タイタニック」ポーズ!
いったん内陸に入ったあと、再び海岸沿いを走る。今度は相模湾 
40km地点の三崎まで来たら折り返し地点。再び内陸へと向かう。途中からは交通量の多い国道134号線を走るため、クルマの往来に注意して走ろう。背後にクルマの気配を感じたら、いったん振り返り、ドライバーとアイコンタクトをとるだけでも相互の気遣いが生まれる。 ランチを食べてから、漕ぎ進めること35km。3時間ほど走ったところで、小腹が空き始める。「お昼あんなにしっかり食べたのに」と思ってしまうくらい、エネルギー消費の速さに驚く。ということでおやつタイムに狙いを定めていた、プリンが有名なカフェレストラン「マーロウ」に立ち寄ることに。
濃厚なプリンが人気の葉山の「マーロウ」
スタンダードなカスタードプリンから、エスプレッソプリンやティラミスプリン等さまざまな種類のプリンが並ぶ
「葉山といえばマーロウ」といわれるほど有名なプリンは濃厚で食べごたえがあり、空いた小腹にジャストサイズでどっしりとおさまる。いまや1日に2000個も売れるという人気ぶりで、飽きずに楽しめる種類の豊富さもリピーターをひきつける。
カスタードプリン(左)とリンゴをベースに数種類の香辛料とりんご酒などを加えて煮詰めた「ブラックバター」を乗せたプリン(右)
富士山と相模湾を眺める店舗でプリンを楽しむのも良いけれど、テイクアウトして店舗の向かいにある立石公園でのんびり食べるのもオツな楽しみ方。テイクアウトにするとオリジナルの耐熱ビーカーに入った状態でプリンが渡されるので、持ち帰ることもできる(不要の場合は返却・容器代返金可)。
ビーチの風景とともに、ゴールの鎌倉が近づいてきたことを感じる
ちなみに、運動後の疲労回復には糖分も必要なので、もうゴールが近いからといって糖分を控えることはせず、運動終了後の体を思ってしっかり適量を食べよう。 プリンを食べたら、ここからラストスパート。相模湾沿いに北上し、ゴールの鎌倉を目指す。これまでの海の景色と変わって、ビーチが広がる景色に湘南ムードが漂い始める。
ゴールの鎌倉海浜公園に到着!
目的地、由比ヶ浜に到着。時刻は16時。朝の9時から出発し、約70kmを7時間で走ったことになる。平均時速にすると、10km/hほどののんびりサイクリング。おいしいものや絶景などいろんなものが詰まったスピードだ。 ここから鎌倉駅に向かって、輪行して帰途につく。帰り道、仲間の口から「楽しかったね~」と「美味しかったね~」が出てきたら大成功!こんなサイクリングのフルコースが味わえる三浦半島、楽しい仲間と堪能してみては?

■松輪エナ・ヴィレッジ

住所:神奈川県三浦市南下浦町松輪264 TEL:046-886-1767 営業時間:11:00~16:00(L.O.15:00) 定休日:火曜日(※年末年始、お盆及び漁協の祭礼等で臨時休業する場合あり)

■宮川ベーグル

住所:神奈川県三浦市宮川町11-28 営業時間:土・日曜日のみ 10:00~15:00(無くなり次第終了) //m-bagle.jp/

■カフェ&レストランマーロウ秋谷本店

住所:神奈川県横須賀市秋谷3-6-27 営業時間:ホームページを要確認 定休日:金曜日(※2017年5月8日~5月12日は春休み) //www.marlowe.co.jp/

文・後藤恭子/写真・平澤尚威

文: 後藤恭子(ごとう・きょうこ)

アウトドアメーカーの広報担当を経て、2015年に産経デジタルに入社。5年間にわたって自転車専門webメディア『Cyclist』編集部の記者として活動。主に自転車旅やスポーツ・アクティビティとして自転車の魅力を発信する取材・企画提案に従事。私生活でもロードバイクを趣味とし、社会における自転車活用の推進拡大をライフワークとしている。

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