2021.11.12
広島県の尾道市と愛媛県の今治市を、大小6つの島々を橋で結び、自転車で本州から四国までを走り通せる「しまなみ海道サイクリングロード」は、ナショナルサイクルルートにも選ばれた、名実共に日本を代表するサイクリングコースです。尾道から今治までの片道ルートを少し変わったルールで走ってみました。
オススメポイント | 瀬戸内海を自転車で横断できる。美しい瀬戸内海の島々の景色や、橋からの眺望が目を飽きさせない。自転車での橋の利用料金は「しまなみサイクリングフリー」という企画割引によって、現在無料化されている。大小6つの橋はバラエティに富み、また6つの島もそれぞれ異なる表情を見せてくれる。 |
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レベル | ★★★(上級者向け) |
距離 | 約93km |
獲得標高 | 約695m |
出発・終着地 | JR尾道駅〜JR今治駅 |
立ち寄りグルメ | 住田製パン所、後藤飲料水工業所、はっさく屋、はっさく工房 まつうら、ドルチェ、ドルチェ 瀬戸田本店、瀬戸田梅月堂、岡哲商店、しまなみロマン、猪骨ラーメン、マリンオアシスはかた、石のカフェ、道の駅 よしうみいきいき館 |
立ち寄りスポット | 大山祇神社、サンライズ糸山 |
しまなみ海道はこの十年来、サイクリング環境の整備が多方面で進んでおり、サイクリングに関するサービスは量・質ともに充実しています。その玄関口となるJR尾道駅は2019年に新駅舎がオープン。駅前広場と屋根下のスペースがたっぷりあり、輪行アクセスでの自転車の組立て作業場所には困りません。レンタサイクルも複数の事業者が提供しており、手ぶらアクセスでのサイクリングも可能です。
今回は改めて尾道→今治をスタンダードに縦断してみながら、お楽しみとして「各島1つ以上の地元グルメを味わう」というルールを設けました。早速出発しましょう。
まずは最初の島、向島へ渡船で尾道水道を渡ります。尾道水道には尾道大橋が架かっており、歩道もあるので自転車でも渡れるのですが、やや回り道になるのと歩道が狭くやや危険なのもあって、渡船の利用が推奨されています。渡船は駅前すぐのものや、安くて便数も多い福本渡船もありますが、今回は駅から少し離れた土堂から乗る「兼吉渡し」を利用します。運賃は自転車込みで110円。出発したら3分ほどで対岸に到着です。
まずは商店街を抜ける場所にある「住田製パン所」であんパンを頂きます。大正5年創業という老舗で、シンプルなこしあんパンが、これからの道のりへのパワーを与えてくれます。
さらにもう少し進むと、レトロな店構えの「後藤飲料水工業所」で、手作りサイダーを味わいます。お店の中にサイクルラックがあるので、そのままバイクを押して入っちゃいましょう。
早くもお尻に根が生えてしまいそうですが、旅は始まったばかり。向島はまだ信号も多く、市街地といった趣です。ルートはブルーラインを見ながら走れば、まず間違うことはないでしょう。ルート上を示すブルーラインには、どちらに向かっているかと、尾道〜今治のメインルートでは1kmずつの残り距離、そして曲がり角では手前と50m前に、それぞれ案内が表示されています。看板なども充実しているので、スマホの地図等はほぼ見なくても、メインルートであれば走りきることができるはずです。
因島大橋を渡ると因島です。ここは八朔(はっさく)発祥の地。ということで大橋そばでまず、定番の「はっさく大福」をいただきます。大福の甘みと八朔の微妙な苦みとがベストマッチで、毎回味わいたい逸品です。因島は変わり種お好み焼きの「いんおこ」も知られますが、ルート上にお店が無いようなので今回は諦めます。「カフェオレ大福」のお店はお休みで今回は残念。
道は向島より信号が減り、ずいぶん走りやすくなります。次の生口島に渡る生口橋が見えてきたところで、橋の下にサイクリストが集まっているお店が。4年前にオープンしたという「はっさく工房 まつうら」です。はっさく大福は売り切れでしたが、みかんが丸ごと入ったみかん大福を頂きました。爽やかパワーを注入して、いざ次の島へ!
生口島は景色が少し南国の趣となり、マリンスポーツに興じる人たちの姿も多く見るようになります。海沿いの快速ルートの途中にあるのは、ジェラート専門店の「ドルチェ」です。サイクリストに限らず定番中の定番なので、ぜひにと立ち寄ります。尾道のイチヂクを使ったジェラートをいただきました。
さらにしばらく走ると、瀬戸田の市街地へ。生口島はレモンの産地ということで、レモンケーキも名物になっています。各店が個性豊かなレモンケーキを作っていますが、今回は耕三寺前にある梅月堂の「すっぱいレモンケーキ」を頂きました。甘い生地と酸味のきいたピューレのコントラストが素敵です。
そのまま進んで「しおまち商店街」では「岡哲商店」のビーフコロッケも定番。外はカリッとしてて中身はトロッと濃厚。「昨日まで90円だったけど、今日から100円になったの」とのことですが、100円でも大満足のボリュームです。
さらに進み、瀬戸田港前の「しまなみロマン」にて、「レモンポーク丼」を頂きます。柑橘の絞りかすをエサに育った豚のお肉とのこと。スッキリ爽やか、ではなく、濃厚ジューシーなポークを生かしたガッツリご飯です。まだ道のりは半分ですが、だいぶお腹いっぱい。瀬戸田港からは尾道港への船も出ているので、ここで瀬戸内クルーズで尾道へUターン、というプランも頭をよぎりましたが、気を取り直して進みます。
生口島と大三島を結ぶ多々羅大橋を渡ると、県境を越えて愛媛県に入ります。しまなみ縦走ルートは島をほぼかすめるだけですが、ここでは例外的に寄り道ルートを走ります。峠を一つ越えて下った先にあるのは大山祇神社。全国にある山祇神社の総本社という由緒ある神社で、サイクリストが身に付けられる「ヘルメット守」もあります。ぜひお詣りしましょう。
そして大山祇神社の門前すぐにあるのが「猪骨(ししこつ)ラーメン」。大三島では農業被害をもたらす猪の捕獲後活用が進められており、豚骨ならぬ猪骨を使った風変わりなラーメンが新しい名物になっています。濃厚だけどこってりしすぎない、不思議な味わいでした。
大三島橋を渡り伯方島へ。橋から下って下道に出たところで、本来のルートではなく右側に面白そうな横道を発見。進んでいくと道沿いの造船所で巨大な船が建造中でした。伯方島は造船の島として知られているので、ぜひ間近で迫力を味わいましょう。また伯方といえば…塩! ルートに戻って少し行った先にある「マリンオアシスはかた」は「塩ソフト」が名物です。
そして愛媛といえば多彩な柑橘類も忘れてはならない名物。伯方島の…には限りませんが、ドライブインにはさまざまな柑橘ジュースや柑橘スイーツが売られています。追加デザートには柑橘ジュレをチョイス。もうかなり食べ過ぎているので、数種類ある中から一番スッキリ系の河内晩柑を選びました。
伯方・大島大橋を渡ると、いよいよラストの島、大島にタイヤを踏み入れます。ここは中世にその名が知られた村上水軍の本拠地。また大島石の産地として知られ、走行ルートは全体に山がちな景色。一方で時折近くに見える海は、複雑な海流が見て取れます。
ここまで尾道から距離は70kmほどと、とてつもない長距離を走ったわけでもないのですが、あちこちに立ち寄っていたら時刻は午後3時近く。そろそろカフェタイムですよね!ということで宮窪港を曲がってすぐのルート沿いにある「石のカフェ」でパンケーキとコーヒーを頂きました。最初は何も付けず、続けてシロップやソフトクリームを合わせて。濃厚なソフトクリームはミントの葉と一緒に食べるのもおすすめですよ。
たっぷり食べ過ぎてだいぶお腹も苦しいのですが、四国本土に渡る来島海峡大橋が眼前に迫ると、ちょっと名残惜しくなってきました。橋のたもとにある「道の駅 よしうみいきいき館」で、シメに「鯛塩ラーメン」を頂きます。身の締まった鯛と、魚介のきいた塩スープで、予想以上の一品。大満足でした!
最後にしまなみ海道のシンボル的な3連吊橋、全長4km超の来島海峡大橋を渡り、四国本土に入ります。橋から降りてすぐのところにある「サンライズ糸山」は、レンタサイクルターミナルになっているだけでなく、橋を望むビュースポットに写真映えする「SHIMANAMI」モニュメントがあるので、往路でも復路でも、ぜひ立ち寄っておきたいスポットです。
橋から7kmほどで、終点の今治駅。サイクリングステーションや広場があり、こちらも輪行作業や荷物整理に便利です。駅そばに温泉施設もあるので、時間があればゆったり汗を流してから帰るのも良いでしょう。
駆け足で紹介してきましたが、しまなみ海道の魅力は年々増大していることを実感しました。グルメスポットもまだ紹介しきれないほどあり、毎回違うお店を巡るプランを立てるのも面白そうです。宿泊や船舶も組み合わせれば、巡り方も千差万別。メインルートは橋の前後が坂になるものの、他は平地やなだらかなアップダウンが中心で、小学生が家族でチャレンジしている姿も見られました。健脚派から初心者まで幅広く楽しめる屈指のルート、ぜひ一度“味わって”みてくださいね。
(2021年9月取材)
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