2025.2.21
自転車は自力で移動できる行動範囲が一気に広がり、徒歩よりも広範に、それでいてクルマよりもゆっくりと世界を堪能することができるようになります。そのモビリティとしてのバランスはまさに観光にうってつけ! 公共交通機関+徒歩での移動だとそれぞれが分断してしまう街も、自転車で走れば“地続き”でそれぞれの街がもつ表情の変化を感じ取ることができます。そんな機動力を生かして走るのは東京都心3区を中心としたコース。歴史ある観光名所が集まった東京駅界隈と、再開発の進む湾岸エリアを巡る観光サイクリングのルートをご紹介します。
オススメポイント | 東京駅界隈の名所と再開発が進む湾岸エリアを結ぶ15kmのコース。東京の名建築を横目に、新旧の「東京の台所」である築地市場~豊洲市場を自転車でつなぎます。サイクリングに欠かせないランチは、グルメも充実している豊洲界隈の新スポットで! 東京五輪の選手村を抜けて増上寺、東京タワー、国会議事堂といった“テッパン”スポットを巡り、最後は自転車ならぜひ体験してほしい「パレスサイクリング」でフィニッシュです。 |
---|---|
レベル | ★(初級者向け) |
距離 | 15.7km |
獲得標高 | 189m |
発着地 | JR東京駅 |
立ち寄りスポット | 銀座四丁目交差点、歌舞伎座、築地市場、豊洲市場、千客万来、増上寺、東京タワー、国会議事堂、皇居周辺、行幸通り |
東京観光と一言で言っても、その範囲はわりと広く、しかもエリアが分散しています。今回走るコースはいうなれば皇居を中心とする南側のエリア。東京都心の中でも新旧名所のメジャーどころが集まる代表的なエリアです。
日本を代表する名建築として、国の重要文化財にも指定されている東京駅の丸の内駅舎を出発し、湾岸エリアへ貫く晴海通りへと向かいます。有楽町の数寄屋橋から入り、銀座、築地を経て豊洲へと続く幹線道路で、それだけに交通量も多く、車道は常に混雑しています。バスとタクシーも頻繁に往来しているので、特に銀座界隈ではバス停に止まるバスや、路肩に寄ってくるタクシー等に注意が必要です。
不慣れだと多少走行にストレスを感じる道路ですが、最近は自転車等を含む多くの小型モビリティが車道を走行していることもあり、クルマ側もわりと“Share the road”(自転車とクルマが互いに思いやりを持って車道を共有する)の意識が浸透しつつある印象です。自転車側もルールとマナーを守り、無理な追い越しやすり抜けはしないなど、周囲の動きを意識しながら安全運転を心がけましょう。
ちなみにスタートから築地市場までの距離は2.4kmほど。地下鉄だと東京、銀座、築地と各駅で存在しているエリアが、自転車で走ると実は狭いエリアに連なっているのがよくわかります。
築地を超えてさらに晴海通りを南下し、国内最大級の跳開橋として知られる「勝鬨橋」、そして晴海運河に架かる橋長580mの「晴海大橋」を渡ると、豊洲市場が見えてきます。
2019年に築地から移転した、「世界一の魚市場」東京都中央卸売市場です。豊洲市場へは「ゆりかもめ」や都営バス等の公共交通機関でもアクセス可能ですが、電車の乗り換えが煩わしかったり、バスも観光客で満車になったり…。その点で自転車だと制約に縛られることなく、最短・最適なルートを選ぶことができます。
築地に歴史と伝統を感じさせる場外市場が色濃く残るのに対し、豊洲市場は最新設備を備えた清潔な施設です。築地のように食べ歩きなどを楽しむことはできませんが、一方で豊洲市場PRコーナーや見学者通路等の施設が充実しています。
豊洲市場の飲食エリアは、食べ歩きなどが楽しめる築地のようなフランクな雰囲気はありませんが、築地から移転してきた名店が軒を連ねており、ここでしか味わえない定番グルメもあります。
豊洲市場に併設された商業施設「豊洲 千客万来」も2024年にオープン。江戸の古い街並みを再現した施設がインバウンドからも人気の観光名所となっています。飲食店の他、8階には豊洲の景観を⼀望できる⾜湯がー般無料開放されているので、グルメを堪能したあと休憩がてら立ち寄ってみても良いかもしれません。
千客万来の先にある「豊洲大橋」を渡り、北上します。次に目指すのは豊洲から5km先にある東京タワー。その途中には、「選手村」エリアや「オリンピック道路」の要として建設された「築地大橋」など、数々の東京五輪のレガシーを見ることができます。
ちなみに築地大橋は自転車の車道走行は禁止されているので、自転車はスロープもしくはエレベーターで上り、歩道を走ります。
ウォーターフロントの最新名所から、“テッパン”の観光名所である増上寺と東京タワーへ。近代的な建築、室町時代から続くお寺を経て、昭和を象徴する東京のシンボルへ。表情が変わる景色は、まるで自転車を走らせながら時代を行き来するような感覚です。
そして最後に巡る観光スポットは国会議事堂。修学旅行や社会科見学等で訪れたことがある人も多いかと思いますが、自転車で訪れるとどこからアプローチしても坂を上ることになるので、高台にある立地がよくわかります。完成した1936年当時は日本一の高さを誇っていたとのこと。
この永田町界隈には首相官邸や議員会館、国会図書館、最高裁判所等が隣接し、日比谷公園側に坂を下った先には中央官庁が集まる霞が関が広がっています。このエリアをぐるっと巡る手段としても自転車は便利です。
国会議事堂の銀杏並木の坂を下り、皇居沿いに内堀通りを東京駅へと向かいます。内堀通りでは毎週日曜10時~16時、祝田橋から平川門間の往復約3kmにわたって自動車の通行を規制する「パレスサイクリング」を実施しています。この期間中はすべてのレーンを自転車で独占できるとあって、都内から多くのサイクリストが集まってサイクリングを楽しんでいます。なお、雨天の場合等は中止することもあるため、事前に開催の可否を確認することをおすすめします。
最後は、皇居前内堀通りから東京駅丸の内中央口を結ぶ「行幸(ぎょうこう)通り」を通過し、東京駅でフィニッシュです。長さ190mのこの通りは普段通行止めになっており、皇室行事と外国大使の信任状捧呈式の馬車が東京駅から皇居へ向かうときのみ道路として利用されます。普段は公園のような空間として利用されているので、自転車で走行する場合は徐行するようにしましょう。
◇
約16kmの間に観光地がぎゅっと凝縮された東京ポタリング都心3区編、いかがでしたでしょうか? 好きなところで立ち止まり、見て、味わえる“オーダーメイド”な自転車旅は、広いようで狭い東京にぴったり。ご自身の自転車で走るのはもちろん、ポートが充実しているシェアサイクルを利用するのもおすすめです。東京在住の方は、ぜひ知人に東京を案内する際のヒントにしてみてください。
アウトドアメーカーの広報担当を経て、2015年に産経デジタルに入社。5年間にわたって自転車専門webメディア『Cyclist』編集部の記者として活動。主に自転車旅やスポーツ・アクティビティとして自転車の魅力を発信する取材・企画提案に従事。私生活でもロードバイクを趣味とし、社会における自転車活用の推進拡大をライフワークとしている。
この人の記事一覧へ稲城から高尾まで 都内サイクリングの定番コース“尾根幹”と+αのルート
2018/10/30
2017/08/29
ヒルクライムで好成績を出すのに、どんなトレーニングをしたらいいですか?
2018/02/23