2021.12.7
11月17日に、栃木県宇都宮市のろまんちっく村で開催された「SBAAオフロードバイクディーラーサミット 2021-22」では、専門分野に長けた講師陣による座学講習も行われた。 ここでは、シマノセールスの秋丸湧哉氏が講義した「ディスクブレーキ整備技術講習」を紹介する。(Photo & Text by Shusaku Matsuo)
ここ数年、ブレーキシューの付いたブレーキキャリパーでリムを制動するリムブレーキから、円盤状のディスクをブレーキパッドの付いたキャリパーで挟んで制動するディスクブレーキへ移行しつつある。
ディスクブレーキはさらに、ワイヤータイプと油圧タイプに分類されるが、特にユーザーにメリットが大きいのが油圧機構を活用した油圧ディスクブレーキだ。より軽い力で高い制動力を発揮でき、ビギナーや女性から高い支持を受けている。一方で、ホース内に空気が入ることでブレーキタッチが悪くなったり、キャリパー内のピストンが戻らなくなるなどの、旧来のリムブレーキとは異なった不具合も発生する。
これらの解消を一手に受け持つのが販売店だが、トレンドが油圧ディスクブレーキに移行する過渡期にまだあり、販売店スタッフにとっても不安要素はある。この不安を解消し、販売店が正しい知識と整備方法をもってユーザーへと製品を届けるべく実施されたのが今回の講習だ。
講師を務めたのはシマノセールスの秋丸湧哉氏。秋丸氏は最初にディスクブレーキの構造を解説した。同氏はリムブレーキのキャリパーと異なり、構造が目視でわかりづらいのが油圧ディスクブレーキの特徴であると話す。 そのうえで、 ブレーキをかけたディスクブレーキのキャリパー内で何が起こっているのか、どのようにして内部構造が作動しているかを解説。複雑な構造を噛み砕いて紹介する秋丸氏の話に、販売店関係者たちは時折質問を挟みながら熱心に耳を傾けていた。
また、「ピストンが戻らない際は汚れが原因の可能性が高いのでブラシで掃除する必要がある。ただし、セラミックなので割れないよう注意が必要」などと、油圧ディスクブレーキだからこそ生じるトラブル例と対処法なども併せて解説した。
講習内で最も関心が高かった内容がブリーディングに関する実演講習だ。近年、空気抵抗を削減するため、ロードバイクのエアロ化が進むとともに、ワイヤーケーブル類の内装化が一般的になってきたが、油圧ディスクブレーキの場合、狭い空間の中にホースを通すことで気泡が溜まりやすくなる問題も起こっている。
そうしたケースにおいて、秋丸氏は「とにかく色々な角度でブリーディングを行ってください」と説明。車体を傾けることで、ホース内の気泡を排出しやすくなるという。「『走っているうちにエアが噛んだ(ホース内に満たされたオイルに気泡が入り、期待された性能が発揮できない現象)』という声もあると思いますが、走行中の振動で気泡が昇ってきたことが原因です。なので、ブリーディング時にはプラスチックハンマーなどでコツコツと叩いて振動を与えてください。レース現場では電動歯ブラシを使ったりもしています。バイブレーションが効果的です」と実践的な解決方法も示された。
質疑応答では「輪行時にエアが噛むケースが多いが、どのように対処したらいいか」という質問があがった。これに対して、秋丸氏は「どこかしらにあった気泡が、輪行時に車体を逆さまにしたことで昇ってくることが原因です。なので、あらかじめ輪行に出かける前に1日中逆さまに置いてからブリーディングしてみてもいいかもしれません」と回答した。
参加者の満足は高かったようだ。講習に参加したヨシハラ商会の高橋真志さんは次のように感想を述べた。「油圧ディスクブレーキは女性の方でもしっかりと制動できます。そうしたメリットが受けて販売が拡大しています。一方で構造上エアが噛む心配が店とユーザーどちらにも存在しています。そこで、油圧ディスクブレーキの講義があれば必ず参加して、素早く確実にエア抜きする方法のヒントを探していました。結局基本に忠実に実施することが良い、ということが分かり納得もしました。公式のディーラーマニュアルはもちろん読んでいますが、今日のようにシマノさんが実演してくれる場を設けてくれることでさらに深く理解することができました」。
最後に秋丸氏は「技術が求められるが故に、ユーザーが簡単には触れない製品です。販売店の皆様だからこそできる整備を実施していただければと思います」と話し、講習を締めくくった。
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