プロのロードレーサーはシーズン中は基本的に自転車に乗るための身体に自分自身をカスタマイズしていきます。それはさながら自転車を速く走らせるために生まれたサイボーグのようでもあります。当然、歩行のための筋肉などは重たいだけで不必要なわけですから、シーズン中は歩くことも控えるように指示され、実際に電車などに乗って10分くらい立っているだけでとても疲れてきます。6時間に及ぶ人間離れした運動を続けられるのに、たった10分間立っているだけで腰が痛くなるのはある意味でかわいらしくもありますね。
　但し、ここでいう極端なカスタマイズは、地上を足で歩くように最適化された現代人の進化レベルの身体にとっては、様々なリスクを生み出すことにも繋がっていきます。人間の身体というのは、各部位が絶妙なバランスの上に成り立っているため、意図的に何か特化したものへと順応させた場合、必ずどこかに歪みが生じはじめます。ですので、プロのロードレーサーでも、シーズンオフは自分の足でしっかりと歩いたり走ったり、他のスポーツに取り組んでみたり、また、シーズン中に極端に削ってしまった筋肉を再生するために、敢えてベーシックなウェイトトレーニングを行ったりもします。体重は増えてしまいますが、身体全体のバランスを取り戻し、バルクアップして基本的なパワーを身につけてから、再度シーズンのピークに向けて、身体を自転車に乗るためだけのサイボーグへとカスタマイズしていくのです。最近ではシーズン中に一度のこのサイクルを入れる選手も多いと聞きます。

　ご質問に対する回答ですが、選手によって内容が変わってくるので一概には言えませんが、オフシーズンであればかなりガッツリとウェイトトレーニング（本来は専門のメニューをこなすべきですが、ここではとても紹介しきれないので、まずはベーシックなウェイトトレーニングで良いと思います）を行い、ランニング（膝や腰が弱い選手は控えたほうが良い）や、スイミングなどを取り入れるのも良いでしょう。
　その他のスポーツを行う際に注意していただきたいのは、ずっと自転車に乗っていると横の動きや捻る動作に弱くなているので、捻挫の可能性が高い球技などを行う際は、怪我に十分気をつけてください。また自転車競技はシンメトリー（左右対称であること）が重要なスポーツですので、左右偏った動きをするスポーツ（ゴルフや野球）も控えた方が良いと思います。
　シーズン中に関しては選手によってまちまちですが、バランスを取り戻すために敢えて歩いたり、また、負荷は下げつつもウェイトトレーニングを継続する選手も近年は多いようです。