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達人に聞く!自転車キャンプツーリングQ&A<1>

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ロードバイクやクロスバイクでもキャンプツーリングできますか?
達人に聞く!自転車キャンプツーリングQ&A<1>

 衣・食・住を積載し、行先は自分が決める─。そんな自由な旅ができる自転車キャンプツーリングが、近年注目を集めています。自転車キャンプというと、荷物満載の旅スタイルを思い浮かべる方も少なくないと思いますが、プランの組み方や何を優先するかなどによって自分流のスタイルを構築することができます。新連載「達人に聞く!自転車キャンプツーリングQ&A」では、トラベルライターの山下晃和さんがそんな自転車キャンプのノウハウを伝授。ビギナーの疑問に実践を交えながら回答していきます。第1回は、クロスバイクやロードバイクなど“手持ち”の自転車でキャンプツーリングする方法について─。

Q 旅仕様ではない、ロードバイクやクロスバイクでもキャンプツーリングできますか?

山下さん:キャンプツーリングはどんな自転車でもできます。それほど距離を走らないのであれば、カゴ付きのシティサイクルでも可能です。キャンプをする際に必要最低限の道具「テント、寝袋、マット」の3つ、それ以外の物はキャンプの楽しみ方によって変わります。

 もちろんロードバイクやクロスバイクでもキャンプツーリングはできますが、ただし、それぞれ注意点があります。

この記事のポイント

ロードバイクの場合

 ロードバイクのキャンプツーリングは最もテクニックを要します。昨今、色々な種類のものがあり、レース向けであったり、ロングライド向けであったり、多様化しているものの、どれも舗装路を速く走るためのバイクなので、車体が非常に軽量です。

 特にレース向けのロードバイクであれば「レースで勝つため」に作られたバイクのため、人間の体重+αくらいの荷重しか考慮して設計されていません。重たいキャンプ道具を積載することは想定されていないのです。よって、重さによっては車体にも、それをコントロールする乗り手にも負荷がかかります。

 また、ディスクブレーキでないキャリパーブレーキだと、そこそこ危険です。かつて雨の降りしきる日に、ロードバイクでキャンプ道具を満載してツーリングをした際、下り坂でなかなか止まらず、ガードレールにぶつかりそうになったことがありました。

 さらに、28cや25cという細めのタイヤだと、レース向けに薄く軽量に作られているものが多く、空気を高圧に入れないとパンクしてしまうリスクが高まります。一方、MTB、グラベルバイク、ランドナーなどに使われるタイヤは太めで分厚く作られているので低圧でもパンクしにくくなっています。

 「パスカルの原理」(※)という言葉を聞いたことがあれば、お分かりになると思いますが、細くてパンパンに空気が充填されたタイヤは、石や枝のような突起物に弱いのです。例えば、空気を入れた風船と頑丈な革に覆われたバスケットボールだとどちらが割れやすいか、想像に難くないでしょう。細いタイヤを履いたロードバイクで、重いキャンプ道具を満載してキャンプ場のような不整地を走る場合は、細心の注意を払いましょう。もしくは押し歩きした方が良いかもしれません。

(※容器中で静止している流体のある点に圧力を加えると、流体を介して流体内部のあらゆる部分と、容器内壁に対して垂直方向に同じ圧力が伝わる原理)

キャンプ道具を限りなく軽量に

 では、どうしてもロードバイクでキャンプをしたい時はどうすればいいのでしょうか。

答えは、キャンプ道具を限りなく軽量にすることです。「UL」(ウルトラライト)という特徴をうたった山岳テントであれば、ここ最近は重量1kgを切るものが増えています。夏であれば寝袋もそれほど厚手で大きい物は要りません。敷布団と同じ役目を持つスリーピングマットも、インフレータブル(空気で膨らませる)タイプであれば300gから500gの物もあります。

 この3つだけをフロントバッグかフレームバッグに入れて、余計な調理器具類などは持たず、行った先のレストランやお弁当で食事をすれば、安全にキャンプツーリングができると思います。大型のサドルバッグやバックパックでキャンプ道具を運ぶこともできますが、リアタイヤに荷重がかかってしまうため、あまりオススメしません。

 また、軽量化されたキャンプ道具類は軽量な自転車と同じように少々価格が高いので、そこは頑張ってお金を貯めましょう。

クロスバイクの場合

 クロスバイクは比較的キャンプツーリングに向いていると思います。リアキャリアのダボ穴(キャリアを取り付けるためのネジ穴)があればキャリアや泥除けを付けることもできます。リアキャリアがあれば、パニアバッグやサイドバッグといった積載性の高いバッグ類を付けられるので、キャンプ道具の重さや大きさを気にせずに入れられます。通勤通学用やお買い物用のカゴが付いているなら、それらにキャンプ道具を載せるのも手です。

 価格帯にもよりますが、Vブレーキが付いているタイプの物が多いので、キャリパーブレーキよりは安心でしょう。

 装着タイヤもモデルによって様々だと思いますが、700cのロードバイクと同じホイールでも、また26インチや27.5インチのMTBと同じホイールでも、耐久性を考えて太めのタイヤが付いているはずですので、問題ないでしょう。ただし、クロスバイクはロードバイクやツーリングバイクに比べると、長い距離を走行するのには向いていないものが多いです。

 というのは、強度を出すためアルミ製、もしくはスチール製の重いフレームで、ロードのドロップハンドルのように持つ場所を変えられるハンドルではなく、フラットバーハンドルの場合がほとんど。前傾しにくいアップライトなポジションになるので、キャンプ場まで遠い場合は走るだけで疲れてしまうこともあり得ます。なので、比較的短い距離(30kmから40kmくらい)でルートを設定すると良いでしょう。

旅にふさわしい自転車

 ツーリング向けに作られているグラベルバイクやランドナーは、積載性、重さに耐えられる強度、長い距離に向いているジオメトリ(設計)になっているため、何日間もキャンプし続けるようなロングツーリングでは軍配が上がります。

 このように、キャンプツーリング自体は車種を問わずに「できる」といえますが、それぞれの強み・弱みがありますので、ご自身がどのようなキャンプツーリングをしたいか・できるかを踏まえて、その上で自身のツーリングスタイルを考えてみると良いでしょう。

回答者: 山下晃和(やました・あきかず)

タイクーンモデルエージェンシー所属のモデル。自転車、バイク、クルマ、登山で旅をして記事を書くトラベルライターとしても活動。主にサイクルマップ、自治体の冊子、WEB、雑誌などに寄稿。海外30カ国以上を自転車で旅した経験を活かし、自転車とキャンプをテーマにした旅フェス「BIKE&CAMP」の実行委員長となる。自転車キャンプツーリズム協会(BACA)理事。JACC(日本アドベンチャーサイクリストクラブ)評議員。

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